一般に65歳以上の方を高齢者と呼びますが、今の時代、“高齢者”とは呼び難いほど元気な方もいらっしゃいます。
ただ、年齢を重ねると、身長・体重の減少、骨粗しょう症、内臓機能の低下、血管の弾力性の低下、適応力の低下、瞬発力・反射性の低下、五感の低下、認知機能の低下などが次第に起こってきます。
そのため、転倒やつまずきなどで骨折、抵抗力の低下から感染症にかかり易くなったり、活動性の低下から廃用性を起こしてしまったりすることもあります。
衰えていく話ばかりでは、腹立たしく、辛くなってしまいますが、では、どうすれば良いのでしょうか。
何もせずにいても日常生活は送れますが、衰えの速度をゆっくりとし、転倒やつまずきなどの予防を積極的に行うことが大切になります。
運動はあらためて時間を作らずとも、まずは日常生活動作の中で“ながら運動”を取り入れてみましょう。
立ったままテレビを観る、階段を一段飛ばしで昇る、背伸びをしながら歯磨きをする、洗濯物を干すときは少し高めに干す、少し遠くても歩いて買い物に行く、など。
また、何か自分で目標を立てることで運動のモチベーションを高めることも大切です。
1日5000歩は歩く、来年はお伊勢参りに行く、神戸マラソンに参加する、など。
先日、腰椎圧迫骨折で入院された、70代の女性患者さんのリハビリを担当しました。
本人に聞くと、自宅の玄関で立ったまま靴を履こうとして転倒し、尻もちをついたとのこと。
「ふらっとしてね、そのまま倒れてもうて。今までなんともなかったのに、歳とったってことやろねえ。」主治医より、コルセットを装着してリハビリ開始の指示あり。
開始当初は痛みも強く、「動いたら痛いのに、リハビリなんかまだでけへんよぉ。もう少しマシになるまで寝とくわぁ。」と。
高齢であることもあり、痛みが引くのを寝たきりで待っていては、日に日に筋力は低下し、活動性は下がり、廃用性を起こしてしまいます。
早期からのリハビリの必要性を説明、鎮痛薬も使い、痛みと相談しながら、ベッドからの起き上がり、座る、立つという基本的な動作から始め、歩行へとつなげました。
徐々に痛みも軽減し、終盤には退院後の家庭環境も考慮したリハビリを行いました。
また、趣味の話やニュース、オリンピックの話などで盛り上がり、日々、患者さんも私も笑顔の絶えないリハビリが行えたと思います。
入院から一ヵ月程度で身の回りのことはほぼすべて自分でできるようになられ、自宅退院となりました。
「あんたのおかげやね。寝たきりなるとこやったわぁ。」、「歳は取りとうないけど、気つけないかんねぇ。」ちなみに、転倒した自宅の玄関には、靴を履くためのイスを設置したそうです。
全ての患者様に言える事ですが、特に高齢の患者様では、その方の現状での問題点、残存能力、ニーズ、生活環境などを考慮して、“作られた寝たきり”、“作られた歩行不能”とならないよう、その方に合ったプランを立て、リハビリを行います。
病気やけがで失われた動作能力を改善し、なるべく早期に、元の住み慣れた自宅、環境へ戻っていただけるよう、スタッフ一同、あなたの自分でできるを応援します。