Kさんは61歳。
45歳の時に脳出血で倒れ寝たきりとなりました。
四肢麻痺に加えて嚥下障害もあり、誤嚥性肺炎を繰り返すため胃ろうが造られ、食事は経管栄養となりました。
50歳の時には気管切開が行われ、人工呼吸器は使用していないものの気管カニューレが留置となっています。
介護保険を申請し訪問看護と訪問入浴サービスを利用されていますが(以前は訪問リハビリも利用されていました)、今も昔もKさんの栄養剤注入、痰吸引、オムツ交換、体位変換、排便の援助等の身の回りの介護は奥様がされています。
家事と育児をしながらの介護は大変だったと思いますが、奥様はいつも笑顔です。
苦労はたくさんあると思いますが、私たちの前では最新のニュースや芸能人の話題などをいち早く教えて下さったりと楽しそう。
Kさんの人柄か奥様の人柄か、家庭にはいつも温かいものを感じます。
14年前初めてKさんの訪問をさせていただいた時は、2人の子どもさんはまだ学生でした。
その子たちが成長し社会人となり結婚。
孫が生まれ、Kさんのベッドで寝ていた赤ちゃんがすくすく育ちもう小学生です。
私もたじたじとなるほど活弁な可愛らしい女の子。
いやはや…私も年をとったものです。
Kさんは四肢の拘縮が強く、介護者一人では着替えにとても労力を要します。
Kさん自身と奥様の負担を考えて、着替えは週2回の訪問入浴と週1回の訪問看護で行っています。
訪問看護では介護保険の複数名加算をいただいて二人体制で介助をしています。
通所サービスは利用されていませんので日頃は外出することはありませんが、居室はこの家一番の日当たりの良い部屋で、ベッドからはいつも外の天気が眺められるようになっています。
そんなKさんですが半年に一度外出する日があります。
4月と10月に近くの病院で行われる胃ろうチューブの交換です。
いつもは介護がしやすいようにパジャマズボンは履かずにゆるめの靴下にレッグウォーマーという姿ですが、この日だけはパジャマズボンを履いてていただきます。
上下がそろったところで奥様と私たちは“スーツ姿”と呼んでいます。
ただ上のパジャマと同じものなのにズボンだけ新品同様!
いつものことですが奥様は苦笑いです。
受診当日、いつもの介護タクシーの方が迎えに来てくださいます。
Kさんの自宅は外出のための住宅改修はしていません。
玄関には30㎝以上の段差があり、門を出るまでにも段差があります。
介護タクシーの運転手さんだけではリクライニング車椅子に乗ったKさんを安全に運び出すことはできませんので、この日は訪問看護師がお手伝いをします。
久しぶりに外出するKさんは毎回のことながらまぶしそうに空を見ています。
始めの頃は交換の期日が1月と7月、“寒い”と“暑い”の時期だったのですが、在宅医の配慮で少しずつ期日をずらしてくれました。
おかげで今回も晴天の穏やかな日に外出ができました。
車に乗るとKさんはきょろきょろ車の中を見回している様子。
少し不安そうですが隣に奥様に座っていただくと、安心したのかいつものポーッとしたやさしい表情になります。
Kさんと奥様のつかの間のドライブ…と言いたいところですが、ここに訪問看護師がお邪魔しています<笑>
今回も問題なく胃ろうチューブの交換は終了。
Kさんの半年に一度のお出かけは1時間ほどで帰宅となりました。
次は4月。
満開の桜が見られるといいですね。