今回は、『病院薬剤師のお仕事はどんなものなのか』というテーマで進めていきたいと思います。
これまで色々な方のお話しを聞いてきましたが、今回は当薬剤科の薬局長さんに登場してもらいましょう。
薬局長さんには、調剤薬局で働く薬剤師と病院で働く薬剤師では何が違うのか?
当院の薬剤師はどのような仕事をしているのか?
という内容でお話ししていただきます。
それでは薬局長さんどうぞよろしくお願いいたします。
まず、薬局薬剤師と病院薬剤師の違いについてお話しします。
薬局薬剤師は、処方箋を持って来店された患者さんに対してお薬を調剤し、服薬指導をします。
病気は処方箋から推測し患者さんから直接お伺いして確認します。
一方、病院薬剤師は、病棟へ服薬指導に行く時にカルテで病状、検査等の情報収集し、お薬処方の根拠が不明な時は主治医に直接聞く事が出来るので、総合的に患者さんの事を考えることができます。
病室にはいつでも訪問できるので、患者さんとの会話から体調の変化やお薬の副作用に気づき、主治医にフィードバックも即座にできます。
患者さんが薬物療法でお元気になられ、退院できるまで見守る事ができるのは病院薬剤師の魅力の一つです。
入院した場合は内服薬だけでなく、注射薬も加わって薬物治療の幅も広がりますしね。
次に、当院の薬剤科の紹介と臨床薬剤師についてもお話ししていきましょう。
「薬に関しては医師と対等に議論でき、患者を診て臨床に強い薬剤師になれ!・・・」
当院に入職してまだ2年目の頃に当院のある医師から言われた一言に、私の“臨床薬剤師”としての原点があります。
医師と対等に!? さて、どうして行こうか・・・。
薬物治療に責任を持って医師に提案していくためには、薬だけを見ていては限界があります。
患者さんを診て病態を把握しないと・・・。“患者さんから学ぶ“ことから始めよう、と決めたことを思い出します(約25年前)。
当時はまだ病院でも調剤業務がメインで部署内での仕事がほとんどで、病棟業務という概念も全く根付いていませんでした。
病棟に服薬指導に行った時には、看護師に状態を聞き、厚かましく医師を捕まえて患者さんの問題点を説明してもらっていました。
また部署内では疑問に思ったことはディスカッションして情報を共有し、一緒に調べて解決していました。
病棟に上がっていると、医師・看護師から薬の相談や質問が多かったので、当時から病棟業務の必要性を痛切に感じていましたね(笑)。
あれから約25年経った現在では、薬剤師が病棟に常駐するようになりました。
その結果、病棟業務の環境が整い、処方チェックや処方提案、薬物治療モニター(効果・副作用などの確認)、持参薬の管理などが行えるようになりました。
また医師・看護師の業務軽減のため、中止薬の中止処理、定期処方など、薬剤師が行うことにより、処方ミスの防止ができているので医療安全上でも寄与できていると考えています。
更に医師、看護師、栄養士、理学療法士等の他の職種と協働で行う「チーム医療」にも参加しています。
チーム医療とは回診やカンファレンスに参加して情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携しながら患者さんに対応していくことです。
医師は診断や治療方針を立て、看護師は患者さんのケアや支援を、栄養士は個々の必要栄養カロリーを算出、薬剤師の立場からは、お薬の効果的な提案をしていく役割を担っています。
チーム医療の利点は患者さんの状態や手術の様子などの情報をリアルタイムで知ることができ、全身状態を洞察しつつきめ細やかに服薬説明ができることです。
このように患者さんを中心に考えてチーム医療を実践できます。
カンファレンスでは画像などを使って医師から患者さんの問題点を説明してもらえるので、病態を的確に把握できるようにもなります。
画像を確認する習慣がつくと、治療効果の判定にも役立つので、薬物治療を考える時には大きなメリットだと思います。
医師に「抗菌薬の指示が切れるんですが」と単に指示切れを伝えるのと、患者さんを診て「検査値も良くなってきて症状も改善しているので、抗菌薬を中止してみてはどうでしょうか?」と伝えるのでは、全く違います。
最後に、私から一つだけ質問をさせてください。
今後、当院薬剤科のスタッフにどんなことを期待しますか?
他職種協働体制の中でチーム医療を円滑に行うためには、薬剤師は他のスタッフから信頼を得なければならず、個々の能力向上が不可欠です。
具体的にはカンファレンスや部署内でのミニレクチャー等を定期的に開催し、部署内でも質問し、考えて解決していく環境が大切です。
少しずつですが臨床薬剤師の育成に注力していきたいと思います。
薬剤師スタッフには「適切な病態把握ができ多面的に患者さんを看ることができること」、「個々の状態に応じた投与計画を立てモニターできる」ようになってほしいと思います。
患者さんのためのチーム医療を実践するために、患者さんから学び、薬物治療に関しては責任を持って医師と対等に議論できる臨床薬剤師を目指して下さい。
どうもありがとうございました。