みなさんは、ロコモティブシンドローム(Locomotive syndrome)という言葉を聞いた事があるでしょうか?
ロコモティブ(Locomotive)とは「運動の」という意味で、骨や筋肉、関節など体を動かすために必要な「運動器」を意味します。
「ロコモティブシンドローム」とは、日本整形外科学会が平成19年(2007年)に提唱した「運動器の障害により、近い将来、要介護になる危険性が高い症状を持っている状態や、すでに要介護になってしまっている状態」を表します。
昨年2016年の時点で、総人口に対し65歳以上の高齢者率が27.3%と超高齢社会である日本において、「介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間」とされる健康寿命の延伸が重要視されています。
ロコモティブシンドロームは、メタボリックシンドローム、認知症と並ぶ「健康寿命短縮」の3大要因とされています。
メタボリックシンドローム(通称メタボ)が内臓脂肪症候群と呼ばれ心臓や脳血管などの内臓の病気で健康寿命が短縮し要介護状態になるのに対して、ロコモティブシンドローム(通称ロコモ)は運動器症候群と呼ばれ運動器の障害が原因で起こります。
ロコモの原因には、変形性関節症や骨粗鬆症、脊柱管狭窄症などの「運動器自体の疾患」と、筋力低下や反応速度の低下、バランス能力の低下などの「加齢による運動器機能不全」があります。
具体的に、どのような状態が「ロコモ:運動器症候群」と言われるかというと、
・骨折、変形、麻痺などの運動器自体の機能不全
・階段を上るのに手すりが必要である
・支えなしに椅子から立ち上がれない
・15分くらい続けて歩けない
・転倒への不安が大きい
・この一年で転んだことがある
・片足立ちで靴下がはけない
・横断歩道を青信号で渡り切れない
・家の中でつまずいたり滑ったりする
などが提唱されています。
その中でも、特に、日常生活の自立度・運動器の健康度が低下した状態であると医師が診断した場合には、「運動器不安定症」という診断が下され、運動器の病気としてリハビリでの運動療法などの治療が処方されることがあります。
そのような状態にならないために、普段の生活の中に運動習慣を取り入れる必要があります。
運動器の障害については高齢者にばかりに目が向きがちなのが現状です。
それは、目に見える障害として表れているのが高齢者に多いから、ということが背景にあると思われますが、実は40代50代の若い世代からの対策が重要です。
骨や筋肉量のピークは20代から30代と言われ、その後徐々に低下していきます。
しかし、適度な運動や生活活動で刺激を与え、適切な栄養を取ることで、強く丈夫な状態を維持することができます。
また、骨や筋肉と同様に軟骨や椎間板にも運動や生活活動によって適正な負荷がかかることが必要です。
ただし、過度なスポーツや過体重によって「負荷が強すぎる」と、軟骨や椎間板は逆に傷んでしまうことになります。
また、やせすぎると筋肉や骨は弱くなってしまいます。
肥満もやせすぎもどちらも問題です。適正な範囲の体重を保つことが大切です。
最近は様々なところでロコモティブシンドロームに対してホームエクササイズや食事での栄養摂取などに関しての情報が多く発信されています。
まずは、興味をもち、意識することが大切です。
当院でも、リハビリを実施している入院患者様が、退院され、在宅へ戻られる際には退院前にホームエクササイズの指導を実施したり、外来の患者様にも自主訓練等の指導も実施しており、皆さんの「自分でできる」を応援しています。
いつまでも、自分の足で歩き、自立した生活を送り、健康寿命を延ばしましょう。