2015年の厚労省の発表によりますと、日本人の死亡原因の1位は『悪性新生物(がん)』、第2位は『心疾患』、第3位は『肺炎』、第4位は『脳血管疾患』、第5位は『老衰』となっており、昭和55年くらいから『悪性新生物(がん)』は増加し続けています。
データを詳しく見てみると、昔は『がん』で若くして死亡していたのに、最近は年を取ってから『がん』で死亡している事がわかります。
『がんは老化現象』とも言われています。
年を取ってから『がん』で死亡しているというのはこのせいでしょう。
では、若い世代の『がん死』が減っているのはなぜでしょう?
これは、良い治療法・治療薬が出てきて寿命が延びている事が関係しているのではないでしょうか。
実際のところ、ひと昔に比べがんのお薬(抗がん剤)の種類は増えています。
そんな抗がん剤を患者さんに安全に使用してもらうために薬剤師は頑張っています。
というわけで、今回は『がん化学療法』を担当している薬剤師さんに話しを聞いてみました。
『がん化学療法』って何ですか?
抗がん剤を用いてがんを治療することです。
単独で行われる場合もありますが、手術の前になるべく腫瘍を小さくしておく術前化学療法や、手術で取りきれなかった目に見えないがん細胞による再発を防ぐ術後補助化学療法といったものもあります。
また、1種類だけでなく、2種類、3種類と、内服と注射等を組み合わせて用いることも多いです。
『抗がん剤』って聞くと怖いイメージがありますが、本当に怖いのですか?
怖いというイメージがあるのはやっぱり副作用ですね。
強いがん細胞と戦うためには強い薬が必要となります。
従来の抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞まで攻撃してしまいます。
手術などと違い、血液と一緒に全身をめぐるため、脱毛や吐き気、骨髄抑制などの副作用が出ることが多いです。
そのため、抗がん剤はがん患者さん全員に用いることはできません。
検査データや患者さんの状態を見ながら栄養状態の良い方や、薬に耐えられる体力のある方に用います。
さらに現在では、がん細胞だけを狙い打ちできる分子標的薬なども用いられます。
これらにも副作用はありますが、従来の抗がん剤により高確率で現れていた副作用は起こりにくいとされています。
化学療法を行う場合は、患者さんの状態に合った薬剤ならびに投与量を選択し、主治医や薬剤師からしっかりと説明させて頂きます。
そして投与後もフォローを行い、副作用が出ればすぐに対応できるようにしていますので、怖いイメージだけ抱かず、治療に臨んでほしいと思います。
薬剤師としてどのように『がん化学療法』に関わっているのですか?
まず、主治医と相談しながら薬剤の選択、投与量の検討を行い、化学療法の計画書を作成します。
当院では症例数が多いわけではないので、それぞれ決まったものはなく、その患者さんに合ったオーダーメイドの計画書となります。
そして、できるだけ薬剤師も主治医から患者さんへの説明の場に同席させて頂いたうえで、治療に同意を得た後に、薬剤師からパンフレットを用いて説明を行います。
必要な場合は病棟カンファレンスにて医療スタッフに、薬剤についての特徴や注意点などについてお話しすることもあります。
治療開始後は定期的に効果や副作用についてモニタリングを行います。
『がん化学療法』に関わるにあたって注意している事は何かありますか?
治療にあたり一番不安な思いをするのは患者さん本人ですので、少しでも不安な気持ちを取り除くことができたらと思い、まずよく話を聞くように心がけています。
先ほども申しました通り症例数が少ない為、1つ1つの治療について事前に細かい所まで情報収集を行い、気になることや不安なことについてすぐお答えできるように努めています。
そして用いる薬剤について他職種と必要な情報を共有し、担当スタッフ全体でサポートができるように心がけています。
これまでの経験で、記憶に残っている症例はありますか?あれば教えて下さい。
毎回貴重な経験をさせて頂きどの症例も記憶に残っているのですが、最近の症例では、外来受診にも呼んで頂くこともあり、入院中だけでなくそれ以降もフォローすることができ、患者さんの安心したお顔を見られたのがとても印象的です。
薬剤師外来というシステムは当院では導入されていませんが、今後も退院後でも治療に参加できるようにしたいと思っています。
ありがとうございました。
今後もしっかりと勉強して、患者さんのサポートを続けて下さい。