10月になり、活動しやすい時期になりましたが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。
さて、今回のリハビリテーション科の記事では、転倒を予防するのに重要な、“足の指”についてのお話をさせて頂こうと思います。
転倒やそれによる怪我や骨折は、高齢者が寝たきりや要介護状態になる大きな要因の一つであり、転倒を予防することは、健康寿命を延ばすことにつながります。
ちなみに、10月10日は、転(テン)倒(トウ)ということで、『転倒予防の日』に制定されているそうです。
転倒の要因は様々であり、大きく、身体的要因(内的要因)と環境因子(外的要因)に分けられます。
身体的要因とは、高齢、筋力低下、バランス能力低下、視力障害、中枢神経疾患や関節疾患、高血圧、認知障害、睡眠薬や抗うつ剤などの薬物の使用、転倒の既往(以前に転倒したことがあるか)などです。
環境因子(外的要因)とは、敷居などの段差、床の状況(カーペットの端・めくれ、滑りやすい床、床面の凸凹)、照明、転びやすい履物(スリッパ、サンダル)、障害物(電源コード、通り道の置物)、ベッドが高(低)過ぎるなどです。
4足歩行から2足歩行へ進化したヒトは、両手が自由になったり、長距離移動が可能になり活動範囲が広がったりと良い面もある一方、地面に接する部分が足底のみとなり、頭部や体幹、上半身の重さを下半身で支え、バランスをとる必要があり、転倒の危険性は高まりました。
転倒を防ぐため、無意識のうちに全身の筋肉を使ってバランスをとっているのですが、“転倒予防に筋トレを!”と言われると、どうしても、腹筋や背筋、足上げや膝伸ばしなどをイメージしがちですが、今回は地味で忘れがちだけど、とても重要な、“足の指”に注目したいと思います。
みなさんもご自身の足の指を確認してみてください。
・指がカチコチになっていませんか?グー・チョキ・パーの運動ができますか?
・しっかりと地面に接地していますか?浮いてしまってはいませんか?
・外反母趾などの変形、タコやウオノメはありませんか?
まっすぐに立った状態から、前方の物を取ろうと手を伸ばして重心を前方へ移動してみてください。
足の指がグッと床をつかむように働いているのが分かると思います。
立位や歩行時によろけたり、つまずいたりした時、足の指の力をうまく働かせ、グッと踏ん張ることで転倒を予防することができるのです。
しかし、上に挙げたような、足の指がうまく使えない状態になっていると、踏ん張ることができずに転倒の危険性が高まってしまいます。
また、足の指がうまく使えないまま、悪い姿勢で立位や歩行を行うことで、膝や腰などに過度な負担がかかり、膝痛や腰痛にもつながってしまいます。
特に、高齢で腰が曲がった方は、普段から重心が後方、かかとの方にかかるようになり、前方にある、足の指を使う機会が減り、筋力低下が進んでしまいます。
転倒予防の一つとして、足の指が、曲げ伸ばしでき、よろめいたら踏ん張り、歩く時はしっかり地面を蹴る、など、うまく使える状態にしておくことが重要なのです。
当院のリハビリ患者さんにも、自宅や外出先で転倒し、足や腰を骨折された方が多くおられますが、その方々の足の指をチェックしてみると、足の指がカチコチになり動かなかったり、地面につかず浮いてしまっていたり、変形していたり、ということがしばしばあります。
そこで最後に、自宅でも簡単に自分でできる、足の指を鍛える運動を2つ紹介して、今回のリハビリテーション科の記事を終わりたいと思います。
日々のちょっとした時間を使って、足指トレーニングを継続し、転倒を予防しましょう!
<足指じゃんけん>…足の指でグー・チョキ・パーをする。
グー:指全体を下に曲げる
チョキ:親指だけを上に、ほかの指は下に曲げる
パー:全ての指を開く
<タオルギャザー>…椅子に座り、床に敷いたタオルを足の指でたぐり寄せる。
※かかとで引かないようにしましょう。
タオルを動かすことが目的ではなく、足の指を大きく動かすことを意識しましょう。
※タオルの先に重り(水を入れた500mlのペットボトルなど)を置くと難易度が上がります。
※難しい方はビー玉や太いボールペンなどを足の指でつかむ練習から始めてみましょう。