摂食・嚥下(えんげ)とは、食べ物を目で認識するところから始まり、口腔、咽頭、食道を経て胃に至るまでの一連の流れの事を指します。
そして摂食・嚥下障害とは、この一連の動作に障害があることです。
そして、誤嚥(ごえん)とは、食べものの一部、あるいは全部が声門より下にある気道に入ってしまう事をいいます。
また、飲食物や唾液などの分泌物を誤嚥した事により起こる肺炎を、誤嚥性肺炎といいます。
現在の日本の死亡原因の中で、肺炎は上位にあり、その比率は高齢になるほど高くなっているという統計も出されています。
また、高齢者の肺炎には、摂食・嚥下障害があるために誤嚥性肺炎が起こってしまうという事もよく見られています。
「最近、あまり食べないんです」と入院されてきた患者様のご家族様に伺う事がありますが、「食欲が低下した」背景には、「食べたくても食べられなくなった」という嚥下障害が潜んでいる場合も多く見受けられるように思います。
そのような嚥下障害は、加齢がすすむにつれ多くなるのはなぜかを考えてみたいと思います。
① 加齢に伴い歯が抜ける、義歯が合わないなどにより、噛む能力が低下した。
② 口の中の感覚が鈍磨し、味覚の低下などが生じてしまった。
③ 食べるための口周辺やのどの筋力の低下が起こった。
④ 注意力の低下、食べることへの集中力の低下が見られている。
⑤ 内服している薬の副作用のため。
大まかには、このような理由が考えられます。
どれも特別な疾患から起こるものではなく、一般に「老化現象」といわれる一つなのですが、それが嚥下障害に繋がっている場合もあるということです。
これらの加齢に伴う嚥下障害は、個人差がきわめて大きいのです。
「80歳になったら必ず起こってしまう」というものでもありません。
実際、100歳過ぎても嚥下障害を起こさずに過ごしておられる方もいらっしゃいます。
いつまでも、食事をすることが楽しいと思えれば、それはとても幸せな事だと思います。
次は、具体的にどういった症状があれば嚥下障害を疑うかを考えてみましょう。
① お茶などの水分を飲んでいてむせることがある。
② 食事の時に、食べ物がなかなか飲み込めない。
③ 食べ物をしっかりかまずに飲み込むことが多い。
④ 食事が進まず体重が減る、または食べているのに減っている。
このような症状があれば、嚥下障害があるかもしれません。
しかし、嚥下障害があるからといって、何も食べられない・何も飲めないという訳ではありません。
その人にとって食べやすい食形態や、食べやすい姿勢などもあります。
次回はそういった事にも触れてみたいと思いますので、楽しみにお待ちくださいね。
みどり病院のリハビリテーション科には、理学療法士と作業療法士がおりましたが、9月から言語聴覚士も勤務することとなりました。
言語聴覚士は、上記のような飲み込みに問題を抱えることになった方への嚥下訓練や、様々な原因で話すことに問題を抱えることになった方への言語訓練の提供をさせて頂く専門職です。
まだ入職して日は浅いのですが、患者様に寄り添い、全力で皆様の「自分でできる」を応援させて頂きますので、宜しくお願いいたします。
最後に…
寒い季節が続いています。
「味覚の秋」と言いますが、私は冬の方が美味しいものが多いように思います。
牡蠣も蟹もフグも、寒い季節だからこそですよね。
暖かいこたつで、テレビを見ながらのミカンも美味しいです。
「嚥下障害」について書かせていただきましたが、美味しいものをしっかりと食べて、風邪などひかずに元気に日々過ごしたいですね。