人工透析センター

人工透析室センター長挨拶

『人生のたとえ99%が不幸だとしても、最後の1%が幸せならば、その人の人生は幸せなものに変わる』(マザーテレサ)。医師として特に透析治療に心血を注いできた小生が、これまで何度も何度も反芻してきた座右の銘です。
透析治療という終わりなき闘いに日々翻弄される末期腎不全患者さんにとって、我々透析担当医療人の、最善の医療を約束する気概、情熱、は欠くべからざるものと信じます。それなくして、患者さんとの厚い信頼関係を構築することは不可能でしょう。
ラグビーに例えるなら、自陣ゴールライン残り3メートルまで押し込まれた所からの魂のタックルが求められていると思います。フィールドの端から端までワイドに横一杯に展開されるかもしれない、重戦車のように真っ直ぐ縦に粉砕してくるかもしれないといったあらゆる攻撃に、身を粉にして全て対処し続けることは、言うほど、端から見ているほど簡単ではないはずです。
しかしそれでも、それゆえに、我々は走り続け、挑戦し続け、耐え続け、守り続け、そして最後に皆で笑いあいたい、と思います。
1)ウルトラピュアな水の使用、オンライン血液透析濾過(オンラインHDF)の積極採用
2)面でも線でもなく点でとらえるシャープな血管穿刺
3)ドライウェイトなどという画一的なものにとらわれない毎回毎回のフレキシブルかつ最適な除水設定
4)透析患者さんでの体内動態を正確に熟知したうえでの、至適な薬剤投与
5)急性から慢性腎不全、外来透析から入院透析、あらゆる状況に対応可能なハード面整備
6)バスキュラーアクセス(シャント)作成からメンテナンス(PTA:経皮的血管拡張術)まで、全てに迅速対応
などといった技術的な面はほんの基本的部分にすぎないと考えます。
より大切なことは、いつか失う形あるものではなく、我々医療人の心、魂であると思っています。
みどり病院透析室はまだまだ若く発展途上のチームですが、諸先生方、時に患者さんからも御指導御鞭撻いただき、そのことを真摯に受け止め、日々精進して参りたいと思います。
どうぞ末永く宜しくお願い申し上げます。

2025年2月吉日
人工透析センター長  福士 剛彦

概要

 みどり病院透析センターにおいては、24床の透析ベッドで外来および入院透析患者さんへウルトラピュアな水を使用した血液透析治療やオンライン血液透析濾過治療を行っています。ご自分で通院困難な方へは送迎車両もご用意いたしております。
月水金は夜間透析(2025年4月開始)含め変則3クール、火木土は1クールのみの施行です。入院治療が必要な場合でも、循環器内科、消化器内科、消化器外科、呼吸器内科、整形外科など経験豊富な各先生方の手厚いバックアップの下、最適な専門治療を迅速かつハイクオリティで行える体制が整備されており、この点が他の透析施設と大きく異なる所と思われます。
またバスキュラーアクセス(シャント)造設術やメンテナンス(経皮的血管拡張術)、長期留置カテーテル挿入術、急性閉塞への血栓除去術などをわたくしがほとんど全て主治医として施行し、また日頃から穿刺困難症例へはスタッフに任せきりにせず自ら穿刺することで、命の次に大切なシャントのケアを行います。
末期腎不全状態、すなわち腎臓という最重要臓器のひとつが完全に機能喪失し極限状態におかれた生命体では、バスキュラーアクセス不全症、脳血管障害、急性〜慢性心機能不全、虚血性心疾患、不整脈(発作性〜慢性心房細動など)、消化管出血、易感染症(急性肺炎、急性胆管炎、急性腸炎、バスキュラーアクセス感染症)、悪性腫瘍、全身アミロイドーシス(破壊性脊椎関節症、手根管症候群、肘管症候群)、骨ミネラル代謝異常、重症下肢虚血症など、枚挙にいとまがないほど多岐にわたる合併症が生じえます。しかしそれでも、それゆえに、一人ひとりの患者さんのこれら全ての問題をひとつ残らず漏らすことなく正確に掌握し、おかれた状況の中で最善の一手を打ち続けること、少なくとも打ち続けようと努力し続けることは、主治医として最低限の使命と思っています。透析患者さんを診るためには救命救急治療への造詣を深めねばならないとの思いから、これまで多くの病院で身を粉にして当直をこなし研鑽を積んできた経験も活かせるものと自負しています。
日々変化する患者さんの病状に対し後手に回ることなく先手を打ち続けることを常に心がけ(ゆえに中央監視システムでの厳重なフォローに加えて、回診は連日行います)、結果として、患者さんのQOL向上、生存率向上につなげたいと思っています。
決して完全寛解することのない病(末期腎不全)と日々闘い続けねばならない透析患者さんに生涯にわたり寄り添う医療、守り続ける医療に心血を注ぎ続けたいと思います。

2025年3月吉日
人工透析センター長 福士 剛彦

人工透析診察時間

オンライン血液透析濾過(オンラインHDF)

末期的腎不全患者さんへの血液浄化法として、血液透析(HD)、血液濾過(HF)、血液透析濾過(HDF)がありますが、半透膜(この場合ダイアライザ)を通して濃度の違う液体(血液と透析液)を接触させ拡散現象を用いて尿毒素を取り除こうとするのがHD、濾過現象を用いてまるで満杯にお湯を貯められたお風呂の一方へ新しいお湯を注ぎ込み、反対方向へあえて溢れさせて古いお湯を少しずつ綺麗なお湯へ浄化していくみたいなのがHF(この注ぎ込むお湯のような液を置換液と言います)、HDHFの両方を行うのがHDF(血液透析濾過)です。
HDは拡散現象、HFは濾過現象、ゆえにHDは分子量の小さい物質の方がより多く移動(除去)できるのに対し、HFは基本的に分子の大きさにあまり関係せず、濾過する置換液の量のみに依存する方法と言えます。そのためHDではなかなか除去できない比較的分子量の大きい尿毒素までがHFでは治療可能となります。HDとHFのいいとこ取りした方法がHDFですが、ここで問題となるのが置換液の作製でした。置換液量が多ければ多いほどより多くの毒素を除去できる反面、もし仮に1分間に100ミリリットルを使用するとしても1リットルの液が10分でなくなります。通常4時間の治療で最低でも24リットルの置換液は欲しいところですので、1袋に1リットル入りの置換液を使用したとしても24袋の置換液(点滴みたいなもの)を毎回毎回用意せねばならなくなります。実際にひと昔前まではこう言った方法しかなく、どうしてもと言う場合はその方法(サブラッドBと言う薬品)で行っていたのですが、あまりに煩雑かつ高コストでした(このやり方は機械と置換液が別々なので、オンラインではなくオフラインHDFと呼ばれます)。
一方、人類の英知を結集した技術革新により20年ほど前からはこれまでの血液透析で使用していた透析液(これは基本的に置換液ではなく透析液にて、血管内に直接注入されることは当初は想定されず、半透膜を介して血液と接触するためだけに開発された物でした)を、従来の数万倍ものウルトラピュアな水で作製することで、ウルトラピュア透析液=置換液とみなし臨床応用することが可能となりました。そしてもともと透析液は1分間に500ミリリットル、4時間で120リットルほどを作成し使用することが普通で、この一部を置換液として40〜50リットルまでなら訳なく作製し使用できるようになった、というのがこのオンラインHDF治療の肝となる背景です。
みどり病院透析センターでは以前からこのオンラインHDFが可能で今後もより積極的に採用していく方針ですが、多くの患者さんにおいて治療中の血圧の安定や食欲の増進、貧血の改善(エリスロポエチン製剤の使用減)、痒みやいらいら足の軽減、皮膚乾燥や皮膚色、髪の毛の艶の改善など、単なる血液透析ではこれまで解決困難であった様々な問題が改善されるようになってきています。

2025年3月吉日
人工透析センター長 福士 剛彦