動脈硬化と下肢動脈超音波

動脈硬化と下肢動脈超音波

下肢動脈超音波検査の対象疾患の中で、もっとも頻度が高いのは、閉塞性動脈硬化症(ASO)と言われています。
閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化の進行により末梢動脈にも狭窄や閉塞をきたして、歩行を続けると足の痛みと疲労感が強くなり、少し休むと再び歩くことができるといった特徴的な症状を示します。
これは足の歩行により、筋肉の血流要求が増大したにもかかわらず、もともと虚血している血管のために、需要に応えることができず、乳酸蓄積・酸素不足などを起こし、その結果疲労感を現すと考えられています。
この症状を間欠跛行と呼びます。
間欠跛行には神経性と血管性の2種類あり、血管性は歩行の中止で痛みが消えるのに対し、神経性では姿勢の変化により歩行困難から回復します。

次は解剖について見ていきます。
体のほぼ真ん中を通る腹部大動脈は、足の先まで次々と分岐し、細かい血管床を展開していきます。
末梢(足先方向)へ行くにつれて、腹部大動脈→総腸骨動脈→外腸骨動脈→総大腿動脈→浅大腿動脈→膝窩動脈→前脛骨動脈・後脛骨動脈・腓骨動脈→毛細血管と名前を変えます。
下肢の動脈超音波検査では、腹部大動脈から足先まですべての場所を観察するには時間的制約があるために、数か所で血流の状態を検査し、病変の範囲を推定することから始まります。
詰りのない健常な動脈の血流波形は、急峻な立ち上がりの陽性波(上向きの波)と陰性波(下向きの波)、その後になだらかな陽性波(上向きの波)が連続します。
この3相波を呈した場合、血流測定を行った場所とそこからさらに中枢側(心臓側)までの間に高度狭窄(50%以上の狭窄)がなかったことを意味しています。
日常検査では、大腿動脈・膝窩動脈・前脛骨動脈・後脛骨動脈の4か所で血流波形をサンプリングします。
4か所とも正常波形であれば、腹部大動脈から足先の動脈までに、高度の狭窄(50%以上の狭窄)がないと判断されます。
では、狭窄があるとどのような波形になるのでしょうか?

①急峻な立ち上がりの陽性波(上向きの波)はあるが、正常と比べると波の幅が間延びした広い波形となる       
②ピーク形成のある陽性波(上向きの波)の中に、正常波にはないノイズが現れる
③陽性波(上向きの波)の山はなだらかとなり、ピークが不明になる
④ピーク形成がない穏やかな山が連続して現れる
                  
狭窄が強くなるほど④の傾向が顕著となってきます。
また、動脈の血流速度は中枢側(心臓側)から末梢へ徐々に低下していくため、特定の箇所に他にはない血流速度の低下が見られたら、その場所よりも中枢側に狭窄病変が疑われますので、血管を丹念に観察することが必要です。
その際、病変の場所・病変部の血管径・閉塞があれば閉塞部の境界の状態・血栓の有無・壁肥厚の有無・可動性プラークの有無を検索していきます。
そして、最後に忘れてはいけないのが、両側の足で測定値や波形を比較することです。
測定値や波形にはっきりとした変化をきたす以前に、狭窄病変の有無に気が付くことがあり、有用と考えられています。