心不全の検査として、BNP測定

心不全の診断にBNPの測定が用いられます。

心不全とは・・・?

心不全とは体が必要とするだけの循環量を心臓が十分に拍出できない病態の事で病名ではなく症候名です。
正常の心臓は、全身に酸素や栄養を含んだ血液を送り出す役割(ポンプ機能)と、全身から戻った血液を肺との間で酸素のやり取りをして再び酸素が豊富な動脈となって心臓に戻す役目(ガス交換)を担っています。
つまり心不全とは正常な心臓の働きが弱くなることで起こる症状の事です。
心臓の働きが弱くなり血液の流れに障害をきたし滞りが生じる。
このように血液が滞った状態をうっ血といい、この心不全は、うっ血性心不全CHF(congestive heart failure)とも呼ばれます。

様々な症状がでますが、おもな症状として、
・少し動いただけでも疲れる
・階段や坂道を上ると息切れする
・体がむくみやすい
などです。
原因となる疾患もさまざまで、心筋梗塞、心臓弁膜症、高血圧にともなう心肥大、心筋症や肺高血圧、また、糖尿病や睡眠時無呼吸症候群も心不全を引き起こすと言われます。
さらに危険因子として、乱れた生活習慣や肥満、加齢、多量飲酒、喫煙、過労、ストレスなどもあげられます。

では、BNPとはいったい何でしょう?

BNPとは「脳性ナトリウム利尿ペプチド=Brain Natriuretic Peptide」の略称で、心臓(心室)で生成され分泌されるホルモンの名前です。
心臓に対しての負荷が増加したり、心臓の筋肉が厚くなると、このBNP量が増加するので、血液中BNP濃度を測ることで心臓の状態を知ることができます。
つまり、BNPは、心不全の指標として病気の状態を把握するために使われています。

●BNP役割
心不全の原因となる”うっ血”が起こった際に、血管を拡張させたり、利尿作用によりうっ血を解消させます。
また交感神経やレニン・アルドステロン系の抑制や、心肥大の抑制など心臓の筋肉を守り心臓を保護する働きも担っています。→心不全で分泌されます!

●BNP正常値
BNPの基準値は18.4pg/mL未満とされています。

人間ドックなどで基準値を超える場合の記載・・・
▼40pg/mL以上~100pg/mL未満であれば<要観察>、症状がない事が多いですが、専門医による診察や治療が場合によって必要となります。
▼100pg/mL以上~200pg/mL未満の時は<要精査・要治療>、何らかの心疾患を伴うことが多く、無症状の心不全かもしれず、一度は専門医に診てもらうべきで治療を要する事もあります。
▼200pg/mL以上~500pg/mL未満は<専門医による治療要>、心不全の可能性があるため、専門医による治療が必要です。
▼500pg/mL以上<厳重な治療要>は、心疾患を伴い、重症な心不全の可能性がきわめて高く、入院加療の必要性が示唆されます。

この数値は心房の圧を反映するため、心臓のポンプ機能が低下することで、うっ血が生じたり、体に水分が貯留したりすると心房の圧が高くなりBNPが高値となります。
ですが、心房の圧は心不全がなくても高血圧や不整脈があると高くなる事もあり、その場合はBNPも高値を示します。

高齢者の方は腎臓の機能が低下したり、水分貯留(むくみ)の影響もあります。
不整脈のある方・腎臓の病気がある方・高血圧の方、高齢者等は、ある程度数値に影響がありますが、100pg/mLを超えるようであれば、心不全の疑いがきわめて強くなります。

基準値を超えた方は、心エコー等でcheckすると安心です。
当院でも最近院内でBNPを15分で測定できる検査機器が導入され、心不全の診断・治療に力を発揮しています。(以前は病院の外の検査会社に依頼して結果は後日届く形でした)