心エコーとは

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1. 心エコーとは

心臓超音波検査とも言われ、2.5~6MHz程度の人間には聞こえない高周波の音波(超音波)を心臓に向け送信して、返ってくるエコー(反射波)を受信し、それを動画に可視化して診断する画像検査です。
具体的には、心房や心室の壁や弁の動き、さらに心臓内の血流をリアルタイムに動画で観察する検査です。
また、胸部レントゲンやCT検査のように放射線は使用していないので、とても安全な検査と言えます。

2. 心エコーで分かるもの

拍動している心臓をリアルタイムに動画で観察できるので、心室の壁厚や内腔の大きさや弁の開閉状態から心臓の解剖学的異常に加えて、心室の収縮能や拡張能に代表される心機能の評価、さらにはドプラ効果を利用して弁の狭窄や逆流といった弁膜症の評価が可能です。

具体的に分かるものは?

・解剖学的異常(壁厚、内腔の大きさ、構造異常)
・収縮能(全身や肺に血液を駆出するポンプとしての収縮機能)
・拡張能(収縮する前に心室が血液を貯める機能)
・血流の状態(弁の狭窄・逆流、冠動脈血流など)

これらを組み合わせて、診断できる病気は?
・高血圧性心疾患(左心室肥大)
・虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
・心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症など)
・弁膜症(後述)
・心膜炎(急性心膜炎、収縮性心膜炎など)
・先天性心疾患(心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症など)
・心臓腫瘍(心臓粘液腫、乳頭状線維弾性腫など)

3. みどり病院では

みどり病院では、全ての循環器疾患を扱っていますが、当院の大きな特徴として、心臓弁膜症センターを開設していることが挙げられます。
そこでは心臓外科医による弁膜症の手術治療が主な治療手段になります。
以前は弁膜症と言えばリウマチ熱の後遺症としての、僧帽弁や大動脈弁が開放制限を受けて狭くなる狭窄症や、閉鎖不全による弁逆流が多く見受けられましたが、衛生環境が整いリウマチ熱がほぼ淘汰された現在の日本で弁膜症と言えば、加齢に伴い弁が石灰化などで硬くなって開きが悪くなる、大動脈弁(左心室の出口にある弁)狭窄症や、主に僧帽弁(左心房と左心室の間にある弁)に多く見られる、僧帽弁逸脱(弁が左心房側に落ち込むことにより閉鎖不全を生ずる)による僧帽弁逆流症が数多く見受けられます。
また、それらの弁膜症の進行により、二次性に生じてくる三尖弁(右心房と右心室の間の弁)逆流症も多く認められます。
加えて心不全と同時進行する三尖弁逆流症も重要な治療対象で、当院でも元疾患治療に併せて積極的に手術治療しています。

重症三尖弁逆流のカラードプラ画像
図 重症三尖弁逆流のカラードプラ画像

4. それでは弁膜症診療で心エコーはどんな役割を果たすのでしょう。

弁膜症では弁の狭窄や逆流がどの程度あるのかを定量評価します。
具体的には狭窄症に対しては、弁が開くタイミングで開ききれずに狭くなっている、有効弁口面積が何cm²あるかを算出し狭窄の程度を調べます。
一方、弁逆流に対しては、弁が閉じるタイミングで少し開いたまま閉じきれずに弁逆流が生じている、有効逆流弁口面積(cm²)を計算し、逆流量を1心拍あたり何mlあるかを算出して逆流の程度を調べます。
これらは全て血流ドプラ検査を利用しており、断層画像から得られる正確な距離計測と合わせて、目的のパラメーターを算出します。
さらに、それらの弁膜症が患者の心臓にどの程度の影響を与えているかを、左心室から駆出する心拍出量や肺高血圧症の程度から求めます。
こうして、その弁膜症は手術治療が必要なのか、必要な場合にはどのタイミングで手術をすればよいのかを探り、さらには具体的な手術の方法を心臓外科医が決定するための判断材料としています。
そして手術後は、治療した弁が目的通りに機能しているか、手術により一時的に低下した心機能は回復しているかなどを定期的にフォローアップしていくのも心エコーの重要な役割と言えます。
一方、心エコーは他の生理機能検査と同様に、生理的なものや手技による誤差を生じます。
従って心エコー検査を施行し、検査結果の妥当性を判断する時は必ず、胸部レントゲンやCT、心電図などを参照しています。
さらに当院では頸静脈の視診や胸部の触診、聴診を必ず行い、それらの身体所見と心エコー所見に矛盾がある場合には該当項目を再検し、心エコー検査の精度を上げる努力をしています。