下肢静脈瘤、聞いたことはあるけれど具体的にどのような病気なのかはご存知でしょうか?
下肢静脈瘤とは足の血管の病気で、静脈がコブのようにふくらんでしまった状態のことをいいます。
基本的には良性の疾患ですので命にかかわるようなことはありませんが、足がだるい、むくむ、つるなどの症状が慢性的に起こることによりQOL(Quality Of Life:生活の質)の低下を招いてしまいます。
では、なぜ下肢静脈瘤はできてしまうのでしょうか?
下肢の静脈は体の隅々で不要になった老廃物を含んだ血液を、重力に逆らって心臓まで戻さなくてはなりません。
このためにいくつかの働きが体には備わっていますが、最も重要な働きが「ふくらはぎの筋肉によるポンプ作用」と「静脈弁」です。
ポンプ作用とは、ふくらはぎの筋肉が伸び縮みすることにより深部の静脈を圧迫してポンプのように血液を押し上げる働きのことです。
また静脈弁は血液が重力に負けて逆流してしまわないように食い止める働きをしています。
ですからこの静脈弁が何らかの理由で壊れてしまうと、血液が逆流し血管内にたまってしまいます。
血液がたまった状態が長期間続くと血管は徐々に太くなり、やがてヘビのようにグネグネと曲がりくねった状態になってしまいます。
この状態が「下肢静脈瘤」です。
下肢静脈瘤になると・・・
見た目が悪くなってしまうだけではなく、汚れた血液が足にたまったり静脈の圧力が高くなることによる炎症などによって様々な症状が起こります。
足がだるい、重い、疲れる、ほてる、つる、むくむ、かゆみ・・・ひどくなると皮膚炎や潰瘍などができてしまうことも!
最初の症状は軽度でも、放置して自然に改善することはなく、時間の経過とともに徐々に悪化していきます。
どんな人がなりやすい?
立ち仕事→長時間の逆流負荷がかかることにより弁が壊れやすくなる。
加齢→年をとって血管が弱くなると弁が壊れやすくなる。
遺伝→原因は解明されていませんが、親族に下肢静脈瘤の方がいらっしゃると本人もそうなることが多いようです。周りに下肢静脈瘤の方が多くいらっしゃって「老化で誰でもなるものだからしょうがないと思っていた」とおっしゃられた方もおられました。
女性→男性よりも筋力が弱く血液の環流力が弱いことの他に妊娠出産が発生要因に。
病院を受診しましょう!
下肢静脈瘤の検査方法としては、私たち臨床検査技師が行っている超音波検査があります。
この検査では血液の逆流の有無を調べています。
逆流しているかがわかるように、検査は立ったりベッドに腰掛けた状態で行い、足を押したりもんだりします。
また足の深いところを走る静脈に詰まりや逆流などの異常がないかも同時に検査します。
下肢静脈エコーはほとんど侵襲性のない検査ですので、手術前・手術中・手術後と繰り返し検査を行うことができます。
手術中は臨床検査技師もエコーの機械操作の介助をしています。
下肢静脈瘤の状態や患者さんの年齢・生活習慣によっては早めに治療を開始することが必要な場合もありますが、下肢静脈瘤のタイプ・患者さんの状態によって治療法は異なります。
医師は患者さんに診断結果を説明し、いろいろな治療方法の中で最適な方法を患者さんと相談をしながら決めていくことになります。
少しでも気になることがあれば、まずは早めに専門医を受診して、現在のご自分の足の状態を正確に把握し、健やかで快適な暮らしを送れるようにしましょう。