静脈瘤とは

静脈の仕組み

静脈は筋膜からの走行位置によって、深部静脈と表在静脈に分類されている。
筋膜よりも表面側にあるのが表在静脈であり、筋膜よりも骨側にあるのが深部静脈となっている。
表在静脈と深部静脈を連結する穿通枝(交通枝)も筋膜を貫通した場所に存在している。
静脈壁には動脈壁に存在する弾性線維網からなる内弾性板がないため、コンプライアンス(伸びやすさ)が静脈の方が大きい。
立った姿勢であれば、下肢には90mmHgの圧がかかり、下肢の血液貯留量は最大になる。
下肢の血液が心臓に還るためには、重力に逆らって血液を押し返す仕組みが重要になっている。 

この仕組みの主なものが、下腿の筋ポンプ作用である。
このポンプ作用を機能させるために、静脈には2葉の弁がついており、逆流を防止している。
静脈は体の中を縦横無尽に走行しているが、この弁の働きにより、血流の方向は必ず一定方向で規定されている。
血液は、健常ならば、深部静脈では足先から心臓方向へ、表在静脈から深部静脈へ流れている。

理解しやすくするため、静脈を道路に例えてみる。
弁の機能が正常に稼働している時には、車(ここでは車を血流として考える)の動きは1方通行でスムーズである。
しかし、弁が壊れ(対面交通になった場合)では、今まで1方向へ向かう車しか通っていなかった道路が反対方向への車も通るため、交通量が増える。
結果、静脈のコンプライアンス(伸びやすさ)により、道路は太くなり、2葉の弁の糊しろ(弁2つが閉鎖した時の先端接合部)が離れ、静脈弁が閉鎖しなければならない時でも隙間が開き、さらに逆流を生じるようになる。
【弁の破壊】によって【血液が逆流】するようになり【血流が増加】し【血管の拡大】の状態が引き起こした結果が、静脈瘤(表在静脈が拡張し曲がりくねった状態)となる。

静脈瘤の検査

静脈瘤の検査は、血流の状態を観察できる。
超音波検査で行われている。
静脈瘤の検査では、主に表在静脈(大伏在静脈・小伏在静脈)と穿通枝を検査する。
静脈瘤の検査は、壊れた弁(不全弁)を探すことが目的だが、静脈には弁が多数存在しているので、1つ1つの弁を検査することは、現実的ではない。
そのため、弁不全の診断は、拡張した血管を探し、その弁で逆流が起きていないかを確認することにより行われている。
健常な状態では、下腿筋ポンプが作用すると、足先から心臓方向へ血流が生じポンプ作用停止時には弁が閉じ血流も停止する。
しかし、弁不全が存在すると、筋ポンプ作用停止後に、持続時間の長い、心臓方向から足先への逆流血流が見られる。
実際の検査では、この逆流を検索することが重要となっている。                        

検査中に行うこと

① 表在静脈と深部静脈の合流部から検査を行うため、患者さんにはパンツ1枚になってもらう
② 逆流判定に筋ポンプ作用が必要なので、血管の走行に沿って筋肉部を押し筋収縮を起こさせる
③ 弁不全の原因検索のために、血管の押しつぶしを行う