腹部超音波検査Vol.5~胆嚢編~
腹部超音波検査のシリーズも今回で5回目となりました。
肝臓のびまん性疾患、腫瘤編につづいて今回は胆嚢についてお話したいと思います。
胆嚢は肝下面に接した胆嚢窩(右の脇腹、肋骨の下あたり)に位置する臓器で、西洋梨型をしています。大きさは長径6~8cm、短径2~3cmで、壁の厚さは3mm以下です。肝臓で生成された胆汁を貯留、濃縮し、収縮によって十二指腸へ排出します。
ですので、食事を摂る前と後では胆嚢の大きさや壁の厚さは変化します。(下図)
上記のように、食事をすることで胆嚢から胆汁が排泄されるため、食事の前と後では胆嚢の大きさが変化します。
それでは、胆嚢の疾患についていくつか超音波画像をご紹介したいと思います。
胆嚢結石(Colecystolithiasis)
胆嚢結石はその構成成分によりコレステロール胆石、色素胆石(ビリルビンカルシウム石、黒色石)などに分類されます。コレステロール胆石はコレステロール成分を70%以上含有する結石をいい、胆嚢結石の60~70%を占めています。中年女性で経産婦、肥満者に好発し、肝におけるコレステロール過飽和胆汁の生成が病因となります。
無症状胆石の状態で診断されることが多いですが、経過観察中に上部不快感や、疝痛などの症状が出現してくる例は、5年間で5~16%と報告されています。
実際のエコー像です。
上の黒く抜けているところが胆嚢で、その中に白く光っているのが胆嚢結石です。
急性胆嚢炎(Acute cholecystitis)
胆嚢に生じた急性炎症で、約90%の例で胆嚢結石を合併しています。結石合併例では、結石が胆嚢頸部や胆嚢管に嵌頓することにより発症することが多いです。
起因菌としては大腸菌やクレブシエラなどの腸内細菌によることが多く、ガス産生菌(Clostridium welchiiなど)により気腫性胆嚢炎を生じると、胆嚢内腔や胆嚢壁にガスが認められることがあります。
臨床所見としては、発熱、右季肋部痛が認められることが多いです。
また、触診により腫大した胆嚢を触れると、被験者は疼痛のため吸気運動が一時中断する「Murphy sign」が見られることが多いです。
重症になると、胆嚢周囲膿瘍、胆嚢穿孔、胆汁性腹膜炎を合併することがあります。
実際のエコー像です。
急性胆嚢炎で認められる胆嚢壁内の低エコー帯をsonolucent layerとよび、漿膜下の浮腫に相当しています。
胆嚢腺筋腫症(Adenomyomatosis)
胆嚢壁内のRokitansky-Aschoff sinus(RAS)の増殖と胆嚢粘膜上皮および筋組織の過形成をきたす疾患です。
臨床症状としては無症状の例が多いですが、時に右季肋部の鈍痛や不快感、悪心などが認められることがあります。また、胆嚢結石を合併することがあります。
実際のエコー像です。
胆嚢コレステロルポリープ(Cholesterol polyp of the gallbladder)
胆嚢粘膜面に認められる限局性の隆起性病変を胆嚢ポリープといい、コレステロールポリープが大部分を占めます。
通常は無症状で、検診の超音波検査などで指摘されることが多いです。
コレステロールポリープであれば、治療の必要はないですが、サイズが10mmを超える場合や広茎性の病変では癌を含む可能性が上がる為、胆嚢摘出が推奨されます。
実際のエコー像です。
胆嚢癌(Carcinoma of the gallbladder)
胆嚢ないし胆嚢管より発生した悪性腫瘍で、病理組織学的には腺癌が90%以上を占めます。男女比は1:2と女性に多く、胆嚢結石を合併することが多いです。
近年、肝外胆管の非拡張型の膵胆管合流以上が胆嚢癌の病因の1つとして重要視されています。その他に胆嚢腺腫も前癌病変と考えられています。
臨床症状としては右季肋部痛、黄疸、体重減少、食欲不振、腫瘤触知などが認められます。
実際のエコー像です。
いかがでしたでしょうか?今回は超音波画像を中心に胆嚢についてお話させていただきました。腹部の超音波検査でも診断に役立つ様々な情報が得られます。しかし、呼吸や体位変換など、患者さんのご協力が不可欠な検査です。CTなどに比べて患者さんには少し大変な検査ではありますが、被爆の心配がなく、繰り返し行える検査ですので、年に1度の定期健診など、受けてみようかな?と思っていただければ幸いです。
次回は膵臓編です。どうぞお楽しみに!