『腎臓疾患の超音波像あれこれ』 腹部超音波検査Vol.8 ~腎臓編part2
さて、前回に引き続き腎臓編をお送りします。前回は美味しそうなものが載っていましたね。
今回は腎臓の代表的な疾患について紹介したいと思います。当院でエコー検査を受ける人の中には腎疾患を疑う症状を訴え来院される方もいます。わたしたち検査技師は背中が痛い?尿に血が混じる?などのお話を聞くと、腎臓に疾患があるかもしれないと考え検査に臨みます。では、腎の基本的な解剖から紹介します。
腎の解剖
腎は左右両側の腰の辺りに位置するソラマメ型の臓器です。大きさは左の方が大きいです。腎は腎実質と腎洞からなり、実質は皮質と髄質に分けられます。腎洞には腎盂・腎杯・腎動静脈・脂肪織からなり、超音波では白っぽい領域として認識されます。これを中心部エコー域と呼びます。
続いて、腎で見られる疾患を紹介します。
腎嚢胞・・・もっとも頻度が高い所見です。
内部に出血や石灰化を伴わず、壁が薄い嚢状構造物です。
内部は原尿と呼ばれる、非常に濃度の薄い尿となっています。
加齢とともに数が増える傾向にあります。通常は無症状ですが
大きくなると腎組織が圧排されて血尿の原因となる場合があります。
腎結石
尿路(腎~膀胱までの全排泄経路)結石は、非常に多い疾患です。
30~50歳代に好発し、男性に多いです。
結石の成因は、尿流停滞や尿量低下、尿路感染、薬剤など多岐に渡りこれらを背景として尿成分の一部が結晶化し沈着・増大すると結石が生成されます。
結石が腎盂に存在するうちは血尿や疼痛などの臨床症状は比較的乏しいです。尿管に落下した場合には激しい疼痛を引き起こします。
水腎症
尿の排泄経路が妨げられる、もしくは尿管内の尿の逆流を生じることで腎盂に拡張を来した状態を指します。
放置すれば腎機能低下にいたる病態です。
急性の発症では、腎・尿管に強い圧がかかり、激しい痛みを伴うことも稀ではありません。
尿路(尿の通り道)の閉塞の原因には、結石や腫瘍などのほか尿管外病変に由来するものがあります。
水腎症があれば尿路のどこかに閉塞起点があるのではと原因を検索することが大切です。
慢性腎不全
一般的に末期腎不全に進むにつれ、腎臓は萎縮し、辺縁の不整や腎実質の菲薄化と輝度上昇を認めます。やがて透析が始まると、経時的に多数の嚢胞が発生したACDKと呼ばれる形態を呈するようになります。
また、ACDKは腎癌の発生母地となることがあります。
腎血管筋脂肪腫
腎の代表的な良性腫瘍で、血管・平滑筋・脂肪組織の3成分で構成される腫瘍です。女性に多く、比較的よくみられる腫瘍です。
通常無症状ですが、4cmをこえる場合や血管成分に富む場合には自然出血を起こすことがあり治療の対象となります。
腎細胞癌
腎細胞癌は腎腫瘍の約8割を占め、頻度の高い疾患です。好発年齢は50~60歳代で、男性にやや多い傾向があります。組織型では、淡明細胞型腎細胞癌が最も多く、次に乳頭状腎細胞癌が10~15%程度と続きます。
淡明細胞型腎細胞癌は近位尿細管上皮由来で膨張性発育が特徴的です。
腫瘍の内部に出血壊死を生じやすく嚢胞変性を来たし、無エコー域を伴います。血流は豊富で、バスケットパターンと呼ばれる周囲から内部へ流入する血流が観察されます。
超音波で見つかる腎疾患について紹介しました。
次回は腸管(大腸・小腸など)編です。お楽しみに。