散歩中や、階段を上るときに息切れを感じることはありませんか?
マスクをしているせい!?年のせい!?
もしかしたらそれは心不全が原因かもしれません。
今回は心不全の1つであるHFpEF (heart failure with preserved ejection fraction)
についてお話ししたいと思います。
そもそもHFpEFという言葉自体、聞いたこともないという方がほとんどだと思います。
(駆出率…心臓が血液を送り出す機能に関する指標のひとつです。)
HFpEFとは簡単に言うと心臓の収縮する動きが保たれている心不全のことです。
なぜ、心臓の動きが保たれているのに心不全になるの!?と思われるかもしれません。
まず『心不全』という状態から簡単に説明させていただきます。
みなさん『心不全』とは病名でないことをご存じでしたか!?
心不全とは、心臓のポンプ機能(全身に酸素の多い血液を届ける機能)の障害により体の代謝に十分な血液を供給できない状態のことを言います。
ポンプ機能が低下すると低血圧や動悸、尿量低下、疲れやすくなるなどの症状が現れます。
また、心臓から血液を送れなくなると血液の流れが悪くなり、全身に血液がたまる「うっ滞」という状態が生じます。
この血液のうっ滞により息苦しさやむくみによる体重増加などの症状も現れます。
動悸や息切れ、むくみなど生活している中で身近に感じる症状が多いですよね。
身近に感じる症状だからこそ、放置してしまうことが多いのも心不全の特徴と言えるかもしれません。
以前は左心室の『収縮機能(全身へ血液を送り出す力)』が低下することが心不全の主たる原因だと思われていましたが、
収縮力が保たれているにも関わらず心不全の症状を示す患者さんが半数以上存在することが分かってきました。
これが、収縮する動きが保たれている心不全=HFpEFなのです。
HFpEFは『拡張機能(血液を取り込む力)』の低下が原因で起こります。
拡張機能が低下するとはいったいどういう状態なのかと言うと、左心室が硬くなり広がりにくくなっている状態を指します。
左心室を風船に例えて考えてみると、硬く伸びにくい風船が膨らませるのは大変ですよね…、力いっぱい息を吹き込まないといけません。
これと同様のことが心臓にも起こっており、左心室に血液を取り込む際に高い圧(力)が必要となり心臓に負担がかかります。
心臓に負担がかかることで、血液を送り出す力は保たたれていても心不全の症状が現れます。
<心エコーで観察された心臓>
拡張末期 収縮末期
正常に収縮されていますが、心臓の壁が分厚くなり負担がかかっているように観察されます。
正常 HFpEF
HFpEFのように拡張能が低下すると左房圧が上昇し左房が拡大しているのがわかります。
HFpEFは高齢者、特に女性に多く、基礎疾患として、心房細動などの不整脈や肥満、高血圧、糖尿病など生活習慣病に基づくものも挙げられます。
・動悸、息切れ
・倦怠感(だるい、しんどい、疲れやすい)
・夜間頻尿
これらの症状はただの「運動不足」でもなければ、ただの「年のせい」でもなく、もしかしたら心不全の兆候なのかもしれません!
そういった症状があれば一度かかりつけ医に診てもらい、是非、心臓のエコー検査を受けてみてください。
(心臓のエコー検査は非侵襲的で害がなく行える検査なので安心して受けてください。)
私たちは皆さんの小さな気づきから、心不全の早期発見につながるよう検査させていただきます。