前回の検査科記事にて心筋梗塞の大まかな病態や症状などをご紹介させていただきました。
今回は少し、専門的な話にはなりますが検査を中心としたお話をさせて頂こうと思います。
心電図検査
心臓の電気的な活動の様子を波形で記録することで、診断や治療に役立てる検査です。
簡便であり短時間で行える利点があります。
狭心症
・冠動脈の硬化や血栓、塞栓などで冠動脈の内腔が狭くなる
・攣縮(れんしゅく)
冠動脈が痙攣することで血液の供給が不足し心筋に酸素が行き渡らなくなる
上記のようなことが原因で心筋の機能が障害される疾患です。
この心電図は労作性狭心症といい、労作時(身体的、精神的ストレス)が誘因となり胸が締め付けられるような胸痛を生じます。
安静時の心電図と運動により心臓に負荷をかけた状態の心電図を比較します。
赤い丸で示した部分に注目してみてください。
安静時の心電図
運動負荷時の心電図
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安静時の心電図
運動負荷時の心電図
安静時の心電図と比べ、運動負荷を行い記録した心電図では赤い丸で示した部分(ST)が低下しています。これはST低下といい、心筋の心内膜下の心筋虚血を表しています。
続いて、下記の心電図は安静時狭心症といい、冠動脈の攣縮によって生じる狭心症です。冠動脈が部分的な痙攣を起こして血管の内部が狭くなり、一時的に血の流れが悪くなることで発生します。
労作性狭心症のように動いた時などとは無関係に安静時に起こり、夜間や明け方など睡眠中やアルコール、寒冷刺激(ヒートショック)などで誘発されることもあります。
また、動脈硬化を背景とした通常の労作性狭心症(ST低下)とは違い、安静時狭心症(冠動攣縮性狭心症)では広範な心筋虚血によりST部分の上昇が起こります(異型狭心症)。
安静時の心電図
症状時の心電図
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安静時の心電図
症状時の心電図
赤い丸で示した部分(ST)が上昇しており、これをST上昇といい心内膜から心外膜までの全層虚血を示しています。
薬の投与後
STの上昇は落ち着き、患者さんの症状も改善されました。
狭心症発作は、労作性狭心症も、安静時狭心症(冠動攣縮性狭心症)も、薬で改善することがありますが、症状が楽になったからと言って、完全に安心してはいけません。
症状が頻繁に起こったり、症状の強さが悪化したりする場合は、不安定狭心症といって、狭心症発作から、より怖い「急性心筋梗塞(後述)」に移行する危険が高いからです。
狭心症の持病があるかたは、発作の程度、頻度を、かかりつけ医とよく共有し、悪化する傾向があれば早めに受診しましょう。
心筋梗塞
冠動脈が閉塞することで、閉塞した先の心筋に血液が行き届かなくなり、心筋の壊死が起こります。
心筋梗塞は発作直後から急性期(発症~72時間)、亜急性期(72時間以降~30日以内)、慢性期(30日以降)と心電図が変化していくため、以前に心筋梗塞を起こしていたことも心電図検査より分かる場合があります。
【心筋梗塞前の心電図】
【急性期】ST上昇…広範な心筋虚血層を反映
【亜急性期】
異常Q波…心筋の壊死層を反映
冠性T波…心筋虚血を反映
【慢性期】
心電図はこのように沢山の情報を得られる検査ですが、もちろん、完璧な検査ではないので、心臓の超音波検査や心臓CT、心臓カテーテル検査など様々な検査を行い総合的に判断、適切な治療を進めていきます。