体の声に耳を傾けよう~健診でわかることを臨床検査技師がお話しします〜

検査科

こんにちは。みどり病院検査科の臨床検査技師です。
朝晩の気温が下がり、秋が深まる季節となりました。みなさんも急な気温の変化に風邪など引いておりませんか?

今回の記事では、当院で行っている健診診断検査についてお話ししたいと思います。
みなさんは定期的に健診を受けられていますでしょうか?

当院では、職員健診だけでなく、外部からの企業健診、人間ドックなどを行っております。健診を受けることで、生活習慣病をはじめ、様々な病気の早期発見・治療に繋げることができます。健康に不安がない状態で受ける健診はおっくうに感じるかもしれませんが、現在の自分自身の健康状態を知っておくためにも大切ですので、健診を受けてみて下さい。

当院では主な健診項目として、まず以下のような項目を実施しております。

  1. 医師による問診
  2. 身長、体重、腹囲の測定
  3. 胸部X線検査
  4. 心電図検査
  5. 血圧測定
  6. 貧血関連検査(白血球、ヘモグロビン等)
  7. 肝機能検査(AST、ALT、γ-GTP)
  8. 血中脂質検査(コレステロール値、中性脂肪)
  9. 空腹時血糖検査
  10. 尿検査・便ヘモグロビン検査 など

人間ドックコースでは、上記の項目に加え、腫瘍マーカー、心臓や腹部の超音波検査、動脈硬化検査(ABI)、頭部CT検査、骨密度検査などを行っています。

健診でひっかかってしまうと、再度、医療機関を受診し、精密検査を受ける流れとなります。しかし、精密検査といってもどのような検査を受けるのか分からず、それにより不安が生じることもあるかもしれません。そんなみなさんの不安を少しでも解消できればと思い、検査結果からどのような疾患が疑われ、どのような精密検査を受けることになるのかを簡単にお話ししたいと思います。

1.身長、体重、腹囲の測定

身長・体重から肥満や痩せの程度をみます。また腹囲が男性では85cm以上、女性は90cm以上であれば内臓脂肪型肥満が疑われます。
メタボリックシンドロームは、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となる動脈硬化のリスクを高めることが分かっています。そのようなリスクがある方には、適度な運動や食生活の改善・睡眠時間の確保など、生活習慣の改善を呼びかけています。

◎メタボリックシンドローム判定基準◎

腹囲 男性:85cm以上/女性:90cm以上を超えてかつ、

  1. 収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上または服薬中
  2. 中性脂肪150mg/dLまたはHDLコレステロール40mg/dL未満または服薬中
  3. 食後10時間以上の場合 血糖値110mg/dL以上または服薬中
    食後10時間未満の場合 HbA1c 6.0%以上または服薬中

上記、3つのうち 2個該当:基準該当 1個該当:予備群 0個該当:非該当

2.血圧測定

高血圧は一般的に最高血圧130mmHg以上又は最低血圧80mmHg以上のことを言います。
高血圧は、心筋梗塞・脳卒中などを引き起こす、動脈硬化発症の原因となります。
高血圧の方には適度な運動、食生活の改善、睡眠時間の確保などを呼びかけています。
ご自身の日々の血圧を把握することは大切ですので、定期的に御家庭でも計測してみて下さい。

3.胸部X線検査(レントゲン)

胸部全体にX線をあて写真をとる検査です。肺・気管支・心臓などの病気を調べることができます。医師は、肺に影がないか、気管に異物がないか、心臓が大きくなっていないか、などをチェックしています。

◎レントゲン異常所見、疑われる疾患

心臓肥大 血管や弁の石灰化 肺炎
肺結核 肺癌 気管支炎 気胸 胸膜炎など

◎もし異常が見つかったら…(精密検査)

胸部CT、MRI検査、心エコー図検査など

4.心電図検査

心臓が発している電気信号を、皮膚に張り付けた電極シールで捉え、紙上で波形として記録しています。心臓に何か異常があると、心電図上の波形の変化として現れることがあります。不整脈や虚血性心疾患、その他心臓病を見つけることができます。

◎心電図検査でわかる疾患

心肥大、心房細動、狭心症、その他種々の不整脈や心筋症

◎もし異常が見つかったら…

心臓のCT検査、心エコー図検査、24時間心電図、運動負荷心電図検査など

5.貧血関連検査

白血球やヘモグロビン、血小板などの数を測定します。

◎考えられる疾患
  • 白血球…感染に対し、体を守る働きをしてくれます。
    高値…膠原病 感染症 白血病
    低値…膠原病        など
  • ヘモグロビン…酸素を全身に運ぶ働きをします。
    また貧血の指標となります。
    高値…多血症 脱水
    低値…貧血   など
  • 血小板…止血に必要な血球成分です。
    高値…本態性高血小板症 慢性骨髄性白血病
    低値…特発性血小板減少性紫斑病
    急性白血病 などの血液疾患
◎もし異常が見つかったら…

再度採血を行い、膠原病、感染症、血液疾患などの有無を調べます。健診とは異なり、より詳しく血液を調べます。その他、必要に応じて、CT検査や内視鏡検査を行う場合があります。

6.肝機能検査

AST、ALT、γ-GTPの値を測定します。

◎考えられる疾患
  • AST/ALT…肝細胞中に含まれている酵素。肝障害により血中に出現し、高値となります。
    高値…アルコール性肝炎 ウイルス性肝炎 慢性肝炎 など
  • γ‐GTP…肝臓の解毒作用に関係する酵素。アルコールの影響を受けやすく、飲酒による肝障害の指標となります。
    高値…アルコール性肝障害 薬物性肝障害 など
◎もし異常が見つかったら…

これらの肝臓の数値が高くなると、脂肪肝、肝炎などの肝臓の障害が疑われます。追加検査として、肝炎ウイルスの検査、CT検査、腹部超音波検査を受けていただき、より詳しく確認していきます。

7.血中脂質検査

総コレステロール、HDL・LDLコレステロール、中性脂肪の値を測定します。

◎考えられる疾患

脂質異常症 甲状腺疾患など

◎もし異常が見つかったら…

悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値が高くなると、動脈硬化を早める原因となります。第一に生活習慣の改善(食事・運動療法・禁煙等)が望まれますが、追加検査として、
脂肪肝の有無などを調べる腹部超音波検査やCT検査などがあります。

8.空腹時血糖検査

一般的に血糖としてグルコース(ブドウ糖)を測定します。

◎考えられる疾患

空腹時で126mg/dL以上は糖尿病を疑います。また糖質の過剰摂取・膵臓の疾患でも高値となります。

◎もし異常が見つかったら…

人は、血糖を主なエネルギー源として活動していますが、空腹時に血糖値がある一定の値を超えていれば、糖尿病の可能性が出てきます。追加採血でヘモグロビンA1c、血糖値の変動を調べるための、ブドウ糖負荷試験を行い、糖尿病の有無判定を行います。必要に応じて、腹部超音波検査等の画像検査を行います。

9.尿検査

尿検査は、尿中に糖、蛋白、潜血等が含まれていないかどうかを調べます。

◎考えられる疾患
  • 尿糖…基準値を超えて排出されると糖尿病や腎障害が疑われます。
  • 蛋白…基準値を超えて排出されると腎疾患が疑われますが、生理的条件下でも蛋白尿が認められる場合があります。(過激な運動、ストレス、月経前など)
  • 潜血…陽性となると、尿路系の炎症、結石、腫瘍などが疑われます。
◎もし異常が見つかったら…

生理的で一過性の蛋白尿の可能性もあるため、再度、尿検査を行います。また、採血を行い、腎機能の指標である、クレアチニンや尿素窒素の値を調べます。その他、必要に応じて、CT検査および腹部超音波検査等を行います。

10.便ヘモグロビン検査

便ヘモグロビン検査は、下部消化管出血の有無を知る為に行われ、便中に混入した血液を検出します。

◎考えられる疾患

潜血陽性となると、大腸のポリープ、悪性腫瘍、痔血の混入等が疑われます。

◎もし異常が見つかったら…

大腸内視鏡検査が一般的です。

最後に…
健康診断が終わった後、皆さんの手元には、健康診断の結果通知が返ってきますね。私は結果を見るときに少し緊張してしまうのですが、自分自身の健康状態と向き合うために、みなさんもぜひ健診を受けてみて下さい。