シリーズ腹部超音波Vol.7 腎臓編

腹部超音波検査Vol.7 ~腎臓編パート1~
腎臓編を始めますが、今回は、腎の超音波所見を学ぶ前の“肩慣らし”ということで尿路結石についてのお話に絞って実際の結石が超音波でどんな風にみえるのか、実験してみた結果とともにお届けしたいと思います。
若手技師や医師、看護師のみなさんに超音波の楽しさが伝わると幸いです。

尿路結石は、その名のとおり尿の通り道、「尿路」にできる石のことです。尿路とは、腎臓から尿管、膀胱、尿道すべてを指しています。尿路結石はそのほとんどが上部尿路結石で、男性:女性=2.5:1と女性より男性に多く発症します。

症状

疝痛発作(突然に生じる激しい痛み)と血尿が典型的な症状です。
腎結石は無症状のうちに経過することが多いですが、これが尿の流れに沿って尿管内に落下し、結石による尿路閉塞が起こることによって腰背部から側腹部にかけて激痛や下腹部への放散痛が生じます。発作は夜間や早朝に起きることが多いです。また、結石の排泄時には、通常、排尿痛や違和感を伴いますが、無自覚に排石されることもあります。
腎結石は無症状で経過することが多いため、健診や人間ドックなどで偶然発見されることもあります。

結石の形成過程

腎臓内の遠位尿細管から集合管において、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸などが尿中で飽和状態となって結晶が析出します。結晶核が形成されると表面に晶質(シュウ酸、リン酸、カルシウム)が付着し、結晶はさらに成長、凝集し、凝集塊をもとに結石が形成されます。
微小な結晶や結石は無症状のうちに絶えず尿中に排泄されますが、これらにさらに晶質や有機物が付着し、腎杯内である程度まで成長することがあり、このような結石が排出されるとき、血尿や疼痛などを伴います。

結石形成の成因

尿路結石の発症には食生活や年齢、男女差、職業、ストレス、気候、尿路の奇形など様々な要因が絡み合って作られます。とくに食生活とのかかわりが深く、食生活の欧米化によって動物性脂肪や動物性たんぱく質、塩分、糖質などの摂取量が増えたことが尿路結石増加の主な原因だと指摘されています。また、夏は汗をかいて尿が濃くなる分、冬よりも尿路結石が増えると報告されています。

結石ってどんなもの?超音波でみてみよう!

結石の成分で一番多いのは、シュウ酸カルシウム結石がもっとも多く、約90%を占めるといわれています。

これは実際に、尿と一緒に排石されてきた結石です。サイズは6mm程度あります。しかもとげとげ!これはかなり痛いことが想像されます。。。
これ、超音波でみたらどうなのか?って思いますよね~(趣味の世界)
からだの中にはさすがに戻ってもらえないので、プリンとゼリーにつめつめしてみました。

まずはプリンのみでどう見えるのか撮ってみました。

意外と黒い・・・ちなみにこれは焼きプリン。成分は卵と牛乳と砂糖など。
もうちょっと生体に近い感じなのかと思ってた。濁った感じは、例えるならデブリスに近い(個人の感想です (笑))

いざ!結石をプリンにin!

結石の上の白いのは空気が入ったので。
音響陰影はなく、多重反射が目立ちます。

こちらはリニア型プローブにチェンジしたもの。
音響陰影がすこ~し。

THI(Tissue Harmonic imaging)をきって、fundamental画像に。
音響陰影が濃くなりました。
やっぱり、結石の診断時にはfundamental画像でも確認するといいかも。

つぎはゼリーにもin!

ちなみに実質は上から、桃、パイナップルです。
線維が多いからか、プリンより実質感がでました。

押し込んでみました。ちょっとギザギザ感が際立って見える感じ。

最後にコンベックス型でも。音響陰影、なくなりましたね。
周波数帯域が違うから、減衰が小さくなるからかしら?

今回は“肩慣らし”ということで、少し遊びを入れてお話してみました。
超音波検査を始めたばかりの方は、日常のいろんなものをエコーでみてみると、エコーの原理を楽しく理解でき、もっとエコーが楽しくなりますよ!

実際の腎臓の位置はもっと深い場所にあるので、周囲の組織や消化管ガスが邪魔してみえにくかったりすることもありますが、エコーでも結石を指摘することが可能です。
被爆の心配もありませんので、気になる方は一度腹部超音波検査を受けてみることをお勧めします。