「労災」ってなに?~安心して働き続けるために必要な保険~

総務課

一時は猛威をふるっていた新型コロナウィルス感染症も、5月の連休明けから感染症法上の位置付けが「5類」となり、季節性インフルエンザと同じ扱いになりました。街ではマスクを付けていない人も増え、待ってましたとばかりに観光地には観光客が訪れ、海外旅行へ出掛ける人も増えてきました。少しずつ以前のような生活に戻れることは嬉しい限りですが、まだまだ気を緩めず、感染対策はしっかりしていきたいと思います。

さて、タイトルにある「労災」、という言葉を皆さんも聞いたことがあると思います。聞いたことはあるけれどどういうものなのか、どうやって手続きするものなのか、実はよく知らないと言う人も多いのではないでしょうか。

この「労災」の保険は、事業主は加入を義務づけられていて、健康保険料と違い、保険料の全額が事業主負担となっています。その為、個人の給料から天引きされることもないので、あまりなじみがない保険のように感じるかもしれませんし、何事もなく過ごしていれば関わることもなく、気に留めることもないかもしれません。ですが、実は私たちが働き続ける上でとても大事な保険なのです。
今回は、その「労災」について、書いていきたいと思います。

「労災」の正式名称は、「労働者災害補償保険」といい、その名称通り、労働者が災害に遭ったときに補償を受けることができる保険です。労働者が、業務中や通勤途中に起こった出来事が原因で、ケガや病気、障害、死亡したりした場合に、その労災保険から保険給付が行われます。

労災は、大きく分けて、「業務災害」と「通勤災害」があります。

○業務災害

業務上でのケガ、病気、障害、死亡
業務中であっても、業務に関係のない行為に起因するケガや故意によるケガは対象外

○通勤災害

労働者が家と職場との往復の移動中に被ったケガ、病気、障害、死亡
通勤経路を著しく外れていたり、途中で通勤と関係ないことをした場合は対象外

給付には、いくつかの種類があるのですが、主な給付は以下の2種類になります。

○療養補償給付

ケガや病気などで療養する場合に、その費用が給付されます。

○休業補償給付

ケガや病気の療養のため働くことができず、賃金を受けられない場合に、休業4日目から給付されます。

その他、障害が残った場合や死亡した場合などに適用される給付がいくつかあります。

○障害補償給付

ケガや病気が治癒(症状固定)した後に障害が残った場合に給付されます。
「障害補償年金」・・・障害等級第1級から第7級までに該当する場合
「障害補償一時金」・・・障害等級第8級から第14級までに該当する場合

○遺族補償給付

死亡した場合に遺族が受け取れる給付です。
「遺族補償年金」・・・死亡当時、亡くなった人の収入によって生計を維持していた配偶者や18歳までの子や60歳以上の父母などに給付
「遺族補償一時金」・・・当該遺族がいない場合に一定の条件を満たす遺族に給付

○埋葬料

死亡した人の葬祭を行う場合に、葬祭を行う者に対して給付されます。

○傷病補償年金

ケガや病気が、療養開始から1年6ヶ月が経過しても治らず、障害等級に該当する場合に、障害の程度に応じて給付されます。

○介護補償給付

障害補償年金または傷病補償年金の第1級の者すべてと第2級の精神神経、胸腹部臓器の障害を有している者が現に介護を受けている場合に給付されます。

○二次健康診断等給付

直近の職場の健康診断で、血圧、血中脂質、血糖、肥満にかかる測定のすべての検査で異常値と診断されている場合に、脳血管または心臓の状態を把握するために必要な検査(二次健康診断)および特定保健指導の給付が行われます。

このように、ひとくちに労災と言っても、これだけの補償があります。
どのような職場でも、いつ何時、何が起こるか分かりません。私たちのような医療現場でも、あってはならないことですが業務中にケガをしてしまうかもしれません。また、通勤途中で転んでケガをしたり、事故に遭ってしまうかもしれません。そんな時に、治療費や給料の補償、障害補償などがあれば、少しは安心できるのではないかと思います。私たちが働く上で、とても大事な保険と言えるのではないでしょうか。

今回は、労災の種類、補償の種類について、書いてみました。
では実際にケガや災害に遭ってしまった時に、どのような手続きがあるのか、どのような書類があるのかについては、またこのブログでお知らせしたいと思います。
病院職員の皆さん、何か分からないことがありましたら、いつでも自院の総務課を訪ねて下さい。