みどり寄席

まだまだ暑い日が続いております。
本日もいっぱいのお運び(ご覧頂き)、まことにありがたく御礼申し上げます。

今年の夏も暑かったですね。
今ではクーラーなんてものがありますので、暑い夏でもスイッチひとつで快適に過ごすことができます。
一昔前は、扇風機にベランダで夕涼み、そのまた一昔は、団扇に打ち水なんぞで暑さをしのいでいたようです。
いやぁ昔の人は大変だったでしょうね。
だからか、昔の人は身体も心も強い人が多い気がしますね。
転倒して腰椎圧迫骨折!なんていう90歳を超えたおばあちゃんが、1ヶ月もせずに自分の足で歩いて退院されたこともあります。
暑くなると「早く冬になれ~」、寒くなると「早く夏になれ~」とぼやいている私は、本当に頭が下がります。

みどり病院にも、見習うべき大先輩の患者さんがたくさんいらっしゃいます。
その中で今日は、私が心の中で「みどり おおし(多し)・ふかし(深し)師匠」と呼ばせて頂いている患者さんのお話をお聞きください。

恐らくお二人は初対面だったと思います。
同じ曜日・時間帯のリハビリに通われているのが出会いのきっかけでした。
大体同じ時間に終わって会計に来るので、待っている間お二人で話をし始めました。
多弁な“ふかし師匠”、絶妙なタイミングで相づちを打ち話を聞いている“おおし師匠”。
はじめは、「あ、先ほどはリハビリでどうも…」といった様子で話をされていたのでしょうが、度々顔を合わせていると、昔からの顔なじみのようになってくるんですね。
ましてや、ここは病院です。
病気、リハビリという共通項は連帯感をさらに大きくします。
今では、二人の息もピッタリで、往年の漫才師も真っ青な掛け合いを見せてくれます。
「みどり おおし・ふかし」の誕生です。

おや、今日も二人で仲良くリハビリを終えて会計を待たれているようです。
会計の準備ができたので、お呼びしてみましょうかね。
私:「○○さん(おおし師匠)お待たせしました」
おおし師匠:「お嬢さんが呼んでるで」
さすが、おおし師匠!人の心を上手に掴みます。
そして二人で会計に来て、
おおし師匠:「あんたの方が年上やから先にやってもらい」
ふかし師匠:「え!?ボクの方が上か?」
おおし師匠:「(自分は)まだ30歳やからな」(と言って舌を出す)
ふかし師匠:「それならボクは未成年!」
おおし師匠・私:「?」
ふかし師匠:「たばこ吸ったことないから未成年や!」(と言いながら先にお金を出す)
私:「(大爆笑)」
私は笑いすぎて痛くなったお腹をさすりながら、楽しい気分で、仲良く帰る二人の姿を見送りました。
まだまだ二人の話をきいていたいなぁなんて思いながら…

こんなに楽しい師匠たち、リハビリもきっと和気あいあいとされていると思いきや、ちょっと気になったのでリハビリ担当スタッフに聞いてみたんですね。
驚いたことに、リハビリでは二人で話しをすることもなく、それぞれで取り組んでいるらしいんですね。
二人とも80代で、クーラーのない時代を経験された大先輩。
夏でも冬でも、自分で歩いて病院に来ています。
やるときはやる!そして頑張ったら、楽しむときは楽しむ…
やっぱり心持ちが違いますね。
見習いたいものです。

おっと、次の方を会計にお呼びしなければ。
私:「△△さん、お待たせ致しました」
ずっと、師匠たちの会計でのやりとりを聞いていた方が、立ち上がりました。
この方が△△さんですね。
そして、カウンターに近寄ってきて言いました。
△△さん:「あんなふうにならなアカンな…」

お後がよろしいようで