大切な人を大切に

2月のある寒い日、私の昔からの友人Aからメールが届きました。
『今、入院中!
軽い脳梗塞やって!命にかかわるものじゃないらしい!』
「今、旅行中!」くらい軽い感じの、文の調子と内容のギャップに三度ほど読み直して、やっと「大変やん!」と事態を呑み込みました。
入院は約3週間、投薬とリハビリで、今では呂律障害と左手足のマヒも完全になくなり仕事にも復帰したそうです。
友人にはいつでも元気でいてほしいものです。
頻繁に連絡を取り合うわけではないけれど、久しぶりに来るメールは良い知らせであってほしい!
不幸中の幸いでしたが、Aにもこれを機会に生活習慣や食事などをしっかり見直して、もう病気にならないようにしてくれればと思いました。

そうして、友人Aの快復の知らせに胸をなで下ろした矢先、みどり病院で私と一緒に働いているBさんが、3月末にAと同じ脳梗塞で倒れたのです。
Bさんはみどり病院を常にきれいに保ってくれる、清掃のお仕事をされています。
いつも元気で明るく、寒い日も汗びっしょりになりながら院内を綺麗にしてくれる働き者です。
Bさんは色々な部署に毎日行くので、そこかしこに知り合いが多いのと、元来の気さくな人柄で、誰とでも楽しそうにお話をされている姿をよく見かけます。
私も3年前にみどり病院で働き始めた頃から、「頑張っているか?」「辞めたらアカンよ!」と、よく声をかけてもらい、いつも元気をもらっていました。
人は歳をとるにつれ、そうやって気にかけて声をかけてもらう機会は少なくなるので、Bさんの言葉は本当に嬉しいものでした。
私にとってBさんはみどり病院での“お母さん”的存在です。

そのBさんが仕事中、病院内で突然倒れたのです。
Bさんも不幸中の幸い、病院内で倒れたので、ドクターがすぐに診察、検査をし、近隣の脳神経外科にすぐに搬送されました。
後日、みどり病院にBさんのご家族が報告に来られ、早期治療によりずいぶん回復して喋れるようになったと知らせてくれました。
本当にホッとしました。
私はBさんが倒れた日、お休みだったので、後から同僚に話を聞き、とてもびっくりしました。
ここに来れば会える…というより、そんなことすら考えず、毎日当たり前のように挨拶して話をしていたのですから。
話を聞いたときには、状態が分かっていたにも関わらず、その日一日ぐるぐると頭からBさんのことが離れませんでした。
その日出勤していたら、仕事どころではなかったのではないかと思います。

自分が当たり前のように会っていた人が突然倒れるなんて日頃から考えて生活していません。
いつも元気なBさんが突然倒れた時も皆が本当にびっくりして心配しました。
しかし“突然”と言いながらも、Bさんの身体や様子に何か病気の予兆はあったかもしれません。
いつもより顔色が良くないとか、元気がないとか…
たとえそれが気のせいでも、その時に気がついて声をかけておけば良かったんじゃないかと思っても遅いのです。

毎日、病を抱える患者さんと接している私たち。
白衣を着ていても着ていなくても、しっかり患者さんたちに寄り添えているのか、小さな声に耳を傾けられているのか、そして家族や友人、仕事仲間、大切な人たちのちょっとした変化に気付けるように、そんな気持ちをどこか心の片隅でも、いつも留めておきたいと思いました。

皆さんも自分が倒れたときに心配して悲しむ人が絶対にいます。
ご自身だけでなく、その人たちのためにも、少しでも不調を感じたら、早い受診を躊躇わないでくださいね。

この記事を書いているのは4月です。
ホームページに掲載される5月下旬頃には、また元気なBさんと一緒にみどり病院で働けていることを願いつつ、Bさんが戻って来たときに、「頑張ってましたよ!」と言えるよう、私も元気に明るく仕事に励みたいと思います。

そして、友人A、“その後どう?”と前よりも頻繁にメールのやりとりをしております。
大切な人を大切に…