病院では様々な書類の取り扱いをしています。
患者さんからお預かりするものもたくさんあります。
保険会社に提出する診断書、身体障害や特定疾病(難病)などの受給を得るために申請する書類、各種証明書、訪問看護などの指示書・報告書…本当にたくさんです!
それらの書類は、一旦受付でお預かりをして、担当医師や秘書さん、看護師さんに依頼をします。
書類が出来上がると、4Fの医局(ドクターや地域連携の皆さんの机がある、病院の“職員室”のようなところです)にある箱に入れてくれます。
それを医事課に持って降り、患者さんに連絡をするという流れで、患者さんの元へと返っていきます。
受給者証の期限日など、一律で決まっているものもあり(もちろん例外はありますが)期限の切れる前には、更新のための書類を何十通もお預かりすることもあります。
ある患者さんから治療のための受給者証診断書をお預かりしたときのことです。
その治療には何種類かの型があり、それぞれ別の診断書が必要なものでした。
患者さん本人もいったいどの型が自分の病気に当てはまるのか分からず、全種類お持ちになられました。
預かった私も、どの書類が必要なのか分からず、ドクター(B先生)に直接聞こうと思いました。
その時は、メモを貼って先生の机に置いておくとか、持っている院内用携帯電話(「PHS」)にコールをして尋ねるなどという選択肢は私にはなく、大切な書類なので『直接聞かなければならない(渡さなければならない)』と思い込んでおりました。
渡すタイミングを伺っていたところ、B先生が医事課の部屋にやって来て、その患者さんの書類を預かっていないか?と聞かれました。
患者さんが診察時に口頭で直接B先生に依頼をしていたので、すぐに書類が回ってくると待っていたとのことでした。
私は直接渡せたことにホッとして“良かった”と思っていたところ、先生は少し強めの口調で「なんのためにPHSがあるんだ?電話をすれば済むことでしょう?」と言いました。
先生が、患者さんと真摯に向き合い治療のためにベストを尽くそうと思っていることに改めて気づき、気の遣いどころを間違っていたのだな、と思いました。
メモでも、電話でも、できるだけ早く先生の手元に届けることが大切だったのです。
診察室で患者さんと向き合っている時だけが治療ではありません。
そうやって書類を書くこともドクターにとっては大切な治療なのです。
まずは患者さん、そのためにドクターやスタッフが円滑に仕事できるように、自分がするべきことを考える…そんな当たり前のことができていなかったと、自分の情けなさにションボリしてしまいました。
医局でドクターの色々な姿を見かけます。
熱心に専門書を読んでいたり、患者さんのカルテを開いて予習していたり、先生同士で患者さんの病状について話し合っていたり、もちろん書類を書いている姿も(楽しく談笑したり、お茶を飲んだりも見かけますが)。
患者さんの見えないところでも、毎日、一生懸命医療に取り組んでいます。
そんなドクター方の、少しでもお役に立てるよう“患者さんファースト”で頑張りたいと思います。
B先生ですが…まだお話の続きがあります。
書類を渡した後、20分程して、医事課の部屋に戻って来られました。
まだションボリしていた私に、「はい」と笑って書き上げた書類を手渡してくれたのです。
少しでも早く患者さんに渡したいという気持ちと、しょげていた私を気遣ってくれたのだと思います。
本当の気遣いというものは、きちんと相手に伝わるものなんですね。