突然ですが、皆さんは自身の事を「まだ若い」と思いますか?それとも「もう歳だ」と思いますか?
先日、ある患者さんの口から「歳取ったらなぁ、中々治らんのや」という言葉を聞きました。
『歳を取ったら〇〇』、よく聞く言葉です。
歳を取ったら治りにくい、歳を取ったら忘れやすい、歳を取ったら疲れやすい。などなど…
その患者さんからは「あんたはまだ若いからわからんやろ」とは言われたものの、31歳を迎えた私も歳を実感する機会は増えてきました。
実際、以前のようなパフォーマンスができない、風邪を引いたら中々治らない、睡眠を取っても疲れがとれない等、これが「老化」なのか?と考えさせられる事が増えてきました。
そんなことを言われ続けているうちにひとつ疑問に思ったことがあったので今回記事にさせていただきました。(正確には「老化」を否定したくてたどり着いた結果です)
それは、「成長」と「老化」の違いについてです。私たち人間の身体の変化は、誰しもある時点までは「成長」と呼ばれていたはずです。一般に生まれてから20歳くらいまでの変化は成長と呼ばれ、いつしかそれが「老化」と呼ばれるように変わっていってしまいます。
ではその分岐点はいつなのか?何を基準に成長から老化へ変化するのか?
言葉の意味を調べてみました。
調べているうちに「加齢」という言葉との違いにも興味を持ったので合わせてご紹介させていただきます。
「加齢」とは、人間が生まれてから死ぬまでの「時間経過」のことを指します。「年齢」と同じ概念のものだと思えばいいでしょう。
「加齢」は時間の流れとともに、誰もが同じ速さで進行していきます。なので、同じ日に生まれた人同士の「加齢」のスピードに差が生まれることはありません。
一方、「老化」とは成熟期以降に起こる「生理機能の低下」のことを指します。
「加齢」と違って「老化」のスピードは、個人よって差があります。なぜなら、「生理機能の低下」はその人の遺伝的な要因や外界からのストレスに対し、適応力が低下することで起こる変化と考えられているからです。
「老化」と「加齢」はとてもよく似た言葉のように思えますが、同じように「加齢」している人でも、「老化」の速さには違いが生まれるというわけです。
では次に「成長」と「老化」の違いについて見てみましょう。
結論から言うと成長と老化の分岐点は細胞によって決定されます。
「成長」と「老化」は、別々に起こっている現象ではありません。私たち人間が生まれた瞬間に、実は「老化」はもう始まっていると言えます。
ヒトの胎児から採取した細胞に対する研究で、胎児から採取した細胞はおよそ50回の分裂が限界であることが分かりました。そして限界まで分裂した細胞では、増殖を促す処理を施しても、再度増殖が始まることはありませんでした。この限界まで分裂した細胞は取り除かれ、新しい細胞が補充されることで、組織としての機能を保ち、若い頃は「成長」することが可能になっています。
しかし、「加齢」とともに細胞は増殖するスピードが遅くなり、新しい細胞を補充すること自体もできなくなっていきます。すると組織としての機能を保てなくなり、徐々に「老化」へとシフトしていきます。
人間の身体が「成長」をやめ、「老化」へとシフトするのは、だいたい20~30歳以降だといわれています。人生100年と言われている今の世の中からすると、ちょっと老化の割合が大きすぎる気もしますが「老化」はすべての生物にとって避けることができない生理現象のひとつ。
しかし、その事を受け入れて少しでも老化を遅らせる、健康を保てる努力をしたいなと思います。
また身体の成長は止まっても、せめて心の成長だけは止めないように生きていきたいものです。
ちなみに例の患者さんにこの事を伝えたところ、「残り少ないけど少しでも老化を遅らせる努力をせなあかんな」と笑いながら話されていました。1日分でも老化を遅らせていただき、この方の元気な笑顔を1秒でも長く見ていられたらなと思います。