最近、知り合いの田んぼのお手伝いをする機会がありました。
全くの素人で、日ごろあまり運動もしていない私が役に立つのか、
最初は半信半疑でしたが…
案の定、なかなか大変な作業で、
かろうじて足手まといにはならなかった(はず)ですが、
慣れない作業に四苦八苦しました。
よく目にする、田植え後の綺麗に並んだまだ小さい苗の田んぼや、
刈り入れ前のふさふさとした稲の様子など、
何気なく目にする光景も、
毎日食卓にのぼるご飯も、
こんなにたくさんの過程を経て我々の口に入るのだと知りました。
機械でできる仕事や、人の手でしかできない仕事もあり、
本当に様々で大変です!
まず、苗箱というケースに、蒔いた種が発芽し10㎝くらい苗が伸びたものを
田んぼにビニールシートを敷いて、その上に並べる作業のお手伝いをしました。
苗箱を赤ちゃんだと思って優しく扱うべし!しかし、迅速に真っすぐに並べるべし!
生産者にとってその苗は我が子も同然ですが、作業効率も大切です。
正確な作業が、後々の作業にも大きく影響するということも教えてもらいました。
全ての作業は繋がっているのです。
なんと多くの気も体力も使うお仕事なのか、緊張しながらも一所懸命お手伝いしました。
もちろんこれで完了ではありません。
本格的な田植えは、そのケースをそのまま3週間ほど置き、
苗が20㎝くらいに育ってからとのこと。
苗箱は30×60㎝くらいの大きさで
なんと1ケースで30㎏分のお米が採取できるとか!!
びっくりです!!
その他にも、コンクリートで作った1.3m×15mくらいのレーンに、
種をまいた発芽前の苗箱を並べ、直射日光が当たらないように遮光シートを被せたり、
(使う前にレーンをブラシでゴシゴシとこすって綺麗にします。またこれが学校のプール掃除みたいで大変でした!)
過程と作業の多さに目が回る忙しさでした。
その日の夜から体中あちこちが痛くなり、腕や足も内出血だらけで、
「何をしたらこうなるの⁉」というボロボロ状態に…
しかし、作業中たくさんのカエルに遭遇し、自然を感じて感動したり
綺麗に並んだ苗を見て嬉しくなったり
お風呂上がりのビールが美味しかったり
大変でしたが、楽しい良い経験ができました。
本当に農家の皆さんには感謝です。
今、病院も大きな施設になると、自動受付や自動会計など
患者さん自身に機械に向かって行ってもらうことが増えましたが、
みどり病院はまだ人と人の対面で行っています。
診察も田んぼと同じで、実は受付から会計まで本当にたくさんの人が関わり、
色々な過程を経て、一人の診療が完結しているのです。
診察をするドクター、
問診や診療科の振り分け、採血や注射・点滴などの医療を担う看護師、
色々な準備をして診察がスムーズに進むように支えているクラーク、
細かく且つ正確・迅速な作業が求められる検査技師、
単に撮影するだけではなく、様々な検査機器を駆使して診断の大きな役割を担う放射線技師、
腎臓透析、カテーテル治療、外科手術など、医工学の専門家として活躍する臨床工学技士、
外来・入院患者さんの暮らしをリハビリから支える理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、
患者さんだけでなく病院のスタッフも頼れる看護助手、
入院患者さんに食事を提供するスタッフや、
院内を綺麗に保ってくれる清掃スタッフ…
本当に様々な過程があり、様々な職種のスタッフが力を合わせ
患者さんの治療を支えています。
機械が代わってできる仕事もあれば、人にしか行えない行為もあります。
私たち医事課の職員もその一端を担っています。
しかし、病院のお仕事の中で我々医事課のお仕事が将来、人に変わって
AIが行うようになると言われています。
「人でなくても出来る」ということです。
まだまだ先のお話と思いきや、受付や会計の自動化・機械化もその一部です。
機械による代行が、もう始まっているのですね。
今は、来院される患者さんと
「今日は調子がよさそうですね」
「雨が降って大変でしたね」
などとお話をさせて頂くこともありますが
全てAIが人に変わって業務をこなすと、そんなやり取りもできなくなります。
寂しいと感じるのは私だけではないはずです。
患者さんも、体調が悪くてベッドで休みたい時、
なかなか診察の順番が来なくてどうなっているのか不安な時など
誰に聞けば良いのか分からずに、余計に困ることもあるのではと思います。
人的ミスが減るなどAIの良さもあると思いますが、人の温かさは何にも代え難いものです。
「お大事に」という言葉の力を、果たしてAIに出すことができるのでしょうか。
先ほどの会話や、不安そうな患者さんのお話を傾聴しホッとした顔をされた時など
様々な場面で患者さんと直接やり取りをしながらお仕事に取り組んでいると
人が対応する意味や大切さをしみじみと感じます。
最近はスーパーなどでも『生産者の顔』とう写真が貼ってあるのを時々見かけるようになりました。
実際に作った方のお顔を見ると、買ったお米も野菜も増々美味しく感じますよね。
顔が見えるということが、安心に繋がっているのだと思います。
みどり病院での対応も、できる限り顔と顔を合わせて、安心して頂けるように
その日その時の患者さんの様子を汲み取り、心ある医療を心掛けたいと改めて感じました。
慣れない田んぼの作業にアタフタしながら
普段は目に見えない作業や、携わる人の思いや誇りに触れ
人が生きるための田んぼの作業も
人を生かすための医療行為も
全く違うようで同じなんだなぁと感じることができました。
まさか、田んぼのお手伝いで、自分の仕事についても
振り返りや学びができるなんて、これも経験の賜物です。
何が、どこで、何に繋がるのか
これからも、いろいろなことにチャレンジしていきたいと思います。
皆さんも一度、田んぼのお手伝いはいかがでしょうか?
新たな気づきや発見があるかもしれませんよ。