10年に1度咲く花

医事課

私がみどり病院に働き始めて3ヶ月が経とうとした頃、受付に一人のおばあちゃんが来ていつものように受付をしていると、「マンションのお庭に10年に1度しか咲かない花が咲いたの、そのお花を見ると幸せになれるそうよ。」と嬉しそうに話してくれました。

「どんなお花なんですか?」と何気なく聞くと、「今度来たときあなたにも見せてあげるわ」と言ってくれました。「楽しみにしてますね」と返事をしながら凄く純粋でかわいらしいおばあちゃんだなとほっこりしていました。

数ヶ月が経ち受付にその時のおばあちゃんがいらしたのですが、恥ずかしながら私は日々の業務を覚えるのに必死で患者さんの顔まではまだ覚えられておらず、その時のおばあちゃんだとは気づきませんでした。「今日はあなたに見せようと思っていたのにお花の写真を持って来るのを忘れたのよ・・・。」と声を掛けられて、はっ!とあの時のおばあちゃんだと思い出しました。

お花の写真よりも私の事を覚えていて下さった事がすごく嬉しかったのです。私は今度こそ忘れまいと顔と名前をしっかり目に焼き付けました。「次は必ず持ってくるわね。」と言って下さり私はそんなやりとりが凄く嬉しくて、その患者さんの次の来院日が待ち遠しくなりました。

それから数ヶ月が経ち年も明けた頃・・・
午前の受付が終わりお昼休憩から戻ると「お花の写真を見せに来た患者さんが探していたけど何か知ってる?」と別の職員に言われ、あっ!あの時の○○さん!!と嬉しくなりました。

「今日はちゃんと持ってきたのよ」と見せてくれたのは“ソテツの花”の写真でした。10年に一度しか咲かない花・・それを見ると幸せになれるとの事で医事課職員みんなでその写真を見せてもらいました。

「このお花もこんなにたくさんの人に見てもらえて幸せね。」と言って帰られました。最後まで凄く純粋でかわいらしい○○さんでした。

何気ない会話からはじめったやりとりですが、10年に一度しか咲かない花を見ることができた幸せと、その幸せを分けてくれた患者さんの気持ちで、私にとってはすごく嬉しくほっこりする出来事となりました。

受付には日々沢山の患者さんが来られます。忙しくなると流れ作業になりがちですが、患者さんの何気ない一言に耳を傾け、患者さん1人1人に寄り添った対応が出来るよう心掛けていきたいと思います。