もしもドラえもんがいたら…

医事課

暑い夏が突然終わり、あっという間に冬の気配を感じる今日この頃です。季節はきちんと巡っているようですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

さて、突然ですが私はドラえもんが大好きです。
あの丸い何とも言えないフォルムに加え、人間臭さを持ち合わせた(おっちょこちょいで、涙もろく情に厚い!)国民的キャラクター!その人間臭さで、ドラえもんはロボットだということを忘れている方も少なくないと思います(ネコだということも)。そして、あの秘密道具の数々…。
一度は皆さん「ドラえもんの道具の中で何が一番欲しいか?」という議論をしたことがあるのではないでしょうか。

そんな魅力溢れる道具ですが、医療系の道具があるのか気になって調べてみたところ…
ありました!

「お医者さんカバン」
「どんな病気にもきくくすり」
「30分できく毛はえぐすり」
「かぜうつし機」

「お医者さんカバン」は手提げかばん型の総合医療キットで、このかばんに付いている聴診器を身体に当てると、診断が行われて症状に合わせた特効薬が出てくる、と書かれています。
すごいですね~!これさえあれば病院は要りません!と思いきや、薬が出てくるのは7回まで?!なかなか絶妙な回数です。

「どんな病気にもきくくすり」は、その名のとおりどんな病気にも効能効果がある内服薬です。これを内服すると、およそ半日であらゆる病気が完治するそうです。しかし、外用薬ではないので外傷には効果効能がないとか…。それでも、これさえあれば今度こそ病院は不要なのでは?と思いきや…やっぱり4錠しかないそうで、これも絶妙。自分と大切な人に使うことのできる程よき量と言えるでしょう。
(あとの2つは恐らくそのままの用途だと思われるため割愛します。)

たくさんの道具の中で、医療系と言えるのは、たったの4つ。
子ども向きの漫画なので仕方がないにしても、その数の少なさに私は「意外だな。」と思いました。
作者の藤子不二雄さんは立派な大人なので、もしかしたら持病があったかもしれませんし、周りの家族や友人の中にも病院に通院している人などたくさんいたのではと推測されます。そうなると自然に、作品にも願望が投影されても良さそうなものです。

そして、老若男女、全ての人が病気やケガの経験を一度はしているはずです。
例えば、患部に当てただけで手術ができる(しかも無痛)道具とか、待ち時間を解消する道具とか、自分が病院に行かなくても代わりに受診してくれるクローンみたいな分身とか、くすりの飲み忘れを教えてくれる道具などなど。
ちょっと考えただけでも、いろいろと出てきますが、実際の作品には4つだけ。
これだけ人間の暮らしの中では欠かすことのできない医療なのに、少ないとは思いませんか?

しかし私が考えたものは、どれも物語にするのが難しそうな道具ばかりですね。且つ、医療は身近であると同時に、とてもデリケートな題材でもあると言えるでしょう。
流石のドラえもんをもってしても、この世から全ての病気をなくすことは不可能です。そして、日ごろ真摯に医療に取り組む医療人に対しての敬意も忘れてはならないのです。ドラえもんを作ることができる未来の人にも、医療は、凌駕できない未知の領域なのかもしれません。

そして現代、我々医療人は、その難題に日々向き合っています。
一日でも長く健康な生活を送れるように、また、病気になった時も、自分の望む医療を受けられるように、自分らしくいられるように…。そんな万人の望みが、医療には込められています。どんなに健康に気を遣っていても病気になる人はたくさんいます。健康に気を遣うということと、健康であることは比例しません。

となると、病気になった時、体調のすぐれない時は、やっぱり人は病院に行かざるを得ません。その時は、自分の症状に合った、尚且つ自分の望む治療ができる病院に行きたいと思うでしょう。

そして、できるだけ医師が熱心に治療にあたってくれて、看護師や受付の職員はいつでも優しく笑顔で迎えてほしい…。患者も人、迎える側も人、その人と人の繋がりがあってこその医療なのではないかと感じます。

みどり病院でも、日々真摯に医療に取り組んでおります。
我々、医事課職員も自分たちにできることは何か?を考えながら、病院で一番に患者さんをお迎えする部署として、患者さんの声に耳を傾け続けています。
決まった言葉を言うだけの紋切り型の受付ではなく、患者さん一人ひとりに合った声掛けができるように、『人』にしかできない接遇を目指していきたいと思います。

『ドラえもん』は、「あったらいいな」の夢のお話しであると同時に、人間臭いネコ型ロボットのドラえもんが、秘密道具を駆使しながら最後は言葉や行動で周りの人たちを励まし元気にするというお話です。
だからこそ、見る人読む人の心を掴み、国民的キャラクターと言われる所以になるのでしょう。

便利な道具をポケットから出して患者さんを救うことはできませんが、ドラえもんの様な愛嬌と、相手を思う気持ちを見習いたいなぁと思います。
『ドラえもん』には、作者、藤子不二雄さんの様々な思いやメッセージが込められています。大人になってから読むと、また違ったメッセージを受け取れるかもしれませんね。