
突然ですが、お店などでお客さんが満足する瞬間ってどんな時か分かりますか?
お客さんが一番喜ぶのは、“期待以上だった時”だそうです。
お客さんは『だいたいこれくらいのことをしてくれるだろう』と無意識のうちに予想しているものです。その予想を超える、良い意味で裏切る、サプライズする。そうするとお客さんはとても喜んで、また来てくれる…そうです。
患者さんも同じです。例えば受付で「検査室の場所が分からない」という患者さんがいます。
その患者さんは『口頭(もしくは院内案内図)で教えてくれる』ことを予想しています。それを「ご案内します」と言って、一緒に目的地まで行くと、患者さんは予想を超えた対応にとても喜んでくれます。
実際にいつもいつもお連れするのは難しいですが、そんな時はちょっとしたお声かけをするだけでもサプライズになります。
患者さんの予想通りの対応ではみどり病院のファンを増やすことはできません。患者さんの予想を超える対応でサプライズをして、みどり病院を好きになってくれる人が増えたら素敵だなぁと思います。
そして、これからお話しするのは、実際にあった極上のサプライズです。この季節になると必ず思い出して、今でも心が温かくなるエピソードです。
以前、私は養護施設で働いていました。
クリスマスシーズンにたくさんの行事があり、とてもとても忙しくも楽しい日々を過ごしていました。そんなクリスマスの中で、子どもたちの一番の楽しみと言えば…そうです!
“クリスマスプレゼント”
ただ、職員の悩みの種でもありました。プレゼントはひとり1,500円という予算でした。
担当の職員が買いに行くのですが、いかに子どもたちの喜ぶプレゼントが1,500円の予算内で用意できるか…。
その時一緒に組んでいた先輩の保母さんが、A君の希望する3段ボックスを探していましたが、1,500円ではなかなか見つかりません。あちこちのお店に行きましたが到底予算が足りません。
困り果てた先輩は、また空振りに終わることを覚悟しながら、ある個人経営の家具屋さんへ行きました。
お店のご主人に事情を説明し「売れ残ったものでも、使うのに支障がなければ、少しくらい傷がついていても構いません。予算も少しオーバーしてもよいので…。」とお願いしたそうです。
ご主人はそんなことなら良いもの(商品)があるとお店の奥へ行き、一つ箱を抱えて戻ってきました。それは、傷一つない、とても立派な3段ボックスでした。
1,500円では買えないことは一目でわかる商品でしたが、ご主人は子どもが喜んでくれるならと言って、1,500円で売ってくれたそうです。
そしてお店のご主人は、他に用意できていないプレゼントはないかと先輩に聞きました。釣竿を欲しがっている子どもがいるが、まだ準備できていないと話をすると、また奥へ行き、今度は釣竿を担いで戻ってきました。
これは新品ではなく、自分が使っていたものだが良かったら子どもにあげてほしいと言って手渡してくれたそうです。
先輩はとても嬉しくて、何度も何度もお礼を言い、お店を後にしたそうです。
実際、みどり病院の受付で診療費をオマケ(安く)したり、薬を分けたり…などはできません。
しかし、このお話の感動ポイントは、皆さまお分かりのように、お店のご主人の『子どもたちに喜んでほしい』という気持ちですよね。
会ったこともない子どもに対してですら、事情を鑑みて、自分にできることは何か?という気持ちだけで、見返りを期待しない純粋な思いやりが心に響くわけです。
このエピソードを思い出す度に、みどり病院に来られる患者さんに対して私は、そんなやさしさとプロ意識をもって接しているかと、振り返りの時間にもなります。
時に忙しさにかまけて、対応が疎かになっていないか。
患者さんに安心してもらいたい、できれば笑顔で病院を後にしてもらいたいという純粋な気持ちを持ち続けているか。
その気持ちを言葉や行動で表せているか。
冒頭でお話しした、サプライズです。
ファンを増やすためにサプライズをするのではありません。患者さんを想って行動した結果、みどり病院のファンが増えるのです。上記の家具屋さんのような気持ちを持って日々仕事をしたい。その結果、みどり病院に来てくれる患者さんが、みどり病院を好きになってくれたら嬉しいなぁと思います。
クリスマスのエピソードにはその後があります。
園に帰ってきてから先輩保母さんは、この話をある高校生にしました。とても嬉しかったこと、そして、そんな風に応援してくれる大人がいることを分かってほしかったのです。
先輩保母さんの話をじっと聞いていたその子は、こう言ったそうです。
「…先生、サンタさんって、ほんまにおるんやな…」





