寄り添う看護、初心の大切さ~認知症対応力向上研修を受けて学んだこと~

6月上旬に兵庫県看護協会が開催した認知症対応力向上研修に参加させていただきました。
講義では認知症の定義や症状など基本的なことを学び、グループワークでは事例をもとに認知症患者の対応を考えました。

2020年時点で認知症有病者数は602万人とされており、高齢化社会が進み現在も増加しているといわれています。

認知症とは一度正常なレベルまで達した精神機能が何らかの脳障害により回復不可能な形で損なわれた状態であると定義されています。病名ではなく症候群ですので、認知症になる原因は様々な疾患が関連するといわれています。

その中でも4大認知症といって認知症の原因となる代表的な疾患があります。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症です。このなかでもアルツハイマー型認知症が認知症の半分を占めるといわれています。疾患によって特徴的な症状がありますが、重なる部分もあるため症状だけで疾患を判断することは難しいです。

認知症の症状として基本となる症状の中核症状、中核症状によって引き起こされる行動・心理症状(BPSD)があります。中核症状によって時間や場所が分からなかったり、自分の思いを上手く表現できなかったりします。

そのため環境の変化に適応できずBPSDが出現してしまいます。BPSDは徘徊や暴言暴力など本人の危険もありますが、自宅であれば同居者、病院や施設であればスタッフへの大きな負担となります。

今までに認知症患者様の対応に困ることが多々ありました。一人で歩くのは危険なのに看護師の言葉が理解できず一人で歩いてしまう、暴言暴力がでる、処置に非協力的であるなど、認知症であることを分かってはいるのですが、なぜ理解してくれないのか、なぜ暴言暴力を振るわれなければいけないのかとストレスに感じてしまっていました。

しかし、この研修を受けて、認知症患者様が現状を把握出来ない、思いを上手く表現できないという特徴があることを学んだことで、苦しいのは患者様本人なのだと気づくことができました。時間や場所など現状が理解できず、不安や恐怖を感じているのではないか、何か痛みや痒みなどの不快感があるのではないかと患者様の気持ちを一番に考えるようになりました。

そうすることで、今までにストレスに感じていたことが、認知症患者様の特徴であり、その行動が患者様にとっての何らかのメッセージではないかと思えるようになりました。その行動に隠された思いがあるのだと考えながら看護をすることで患者様に寄り添い、自分のストレス軽減にも繋げることができました。

「患者様に寄り添う」ということは看護学生の頃に看護倫理で学びます。看護実習でも最も重視されていることです。しかし、実際に働き始め、経験年数が経ち、その基本を置き去りにしてしまっていたことを実感しました。いつまでも初心を忘れることなく、患者様を中心とした寄り添う看護を提供し続けられる看護師でいたいと思います。