3階病棟では消化器癌を患い、化学療法を目的に入院をされる患者さんがいらっしゃいます。化学療法は、疾患の治癒を目的とする以外にも生存期間の延長を目指すもの、苦痛症状の緩和やQOL(生命の質)の維持を目指すものなどがあります。化学療法では、主に副作用に対する管理が重要であり、日常生活への影響が大きいため、予防や症状出現時の看護が必要になります。
その中で、進行胃癌であり多発リンパ節転移のため化学療法を受けていた患者さんとの関わりをお伝えしたいと思います。化学療法を行うと、骨髄での赤血球の産生能力が低下し貧血が起こります。倦怠感が出現し、呼吸困難感を感じることがあります。このためトイレに行くことや、お風呂に入ることなどの日常生活を今までのように行えないことが出てきます。この患者さんは、周囲の人々にとても気を遣い、遠慮をされる方でした。また、とてもきれい好きで身の回りの物や身につけているものを常に清潔にされていました。患者さんが化学療法を受けた時期は、わたしがみどり病院に新卒で入職して数か月が経った頃で、適切に投薬を行えるように中心静脈ポートの穿刺手順や抗がん剤暴露予防のための薬剤の扱い、血管トラブルがないか、副作用の感染兆候がないかなど、必死で先輩の指導のもと観察を行っていました。
患者さんは、化学療法により生存期間は延びましたが、残念ながら亡くなられました。亡くなられた日に家族の方から「あなたに髪の毛を洗ってもらった日にわざわざ本人が連絡をしてきて嬉しそうだった。本当にいろいろありがとう」という言葉を頂きました。髪を洗うことは、私にとっては看護のごく一部であり、当たり前のことでした。でも患者さんにとっては、当たり前でないということに気付かされました。患者さんは、不快な状態を自身で解決することができません。患者さんの症状や病態に気をとられがちですが、看護の気付きの大切さを実感する経験でした。先輩に患者さんが辛いと訴えているときは、自分ならどうして欲しいか考えてみてと指導を受けたことがあります。看護師にとっての清拭やトイレ介助などは日常ですが、患者さんにとっては非日常です。痛みや苦しみ、不安を抱えている時の支えは大きな意味があると感じます。患者さんが、私を少しずつですが看護師として育ててくれているのだと思います。看護師になり2年が経ち、3年目を迎えようとしていますが、看護の気づきを大切にし、日々患者さんと関わっていきたいと思います。
看護に必要なことは全て患者さんが教えてくれる〜気付きの大切さ~
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