新型コロナウイルス感染症の蔓延は、みなさんの感染対策が功を奏して、落ち着いていましたが、徐々に第2波の徴候が見え隠れしています。日々感染対策をして生活していく必要がありますが、夏には他にも流行するウイルス感染症があります。
夏に流行する感染症、いわゆる「夏風邪」は、乳幼児に罹りやすい感染症ではありますが、大人が感染するリスクも少なくありません。猛暑の中、お仕事や、運動、食欲が低下したり、寝不足など不規則な生活が続いたりすると、免疫力が低下し、様々な感染症を引き起こす原因となり、重症化する恐れもあります。
夏の3大感染症と言われるのは、プール熱(咽頭結膜炎)、ヘルパンギーナ、手足口病です。
プール熱は、プールの水を介して流行することが多く、「プール熱」と言われていますが、39~40℃の高熱、のどの痛み、目の充血などの症状を引き起こします。新型コロナウイルスと同様、飛沫感染、接触感染するので、日常の生活の中で感染することがあります。
ヘルパンギーナは、乳幼児がかかりやすい代表的な夏風邪です。高熱、口腔内に口内炎のような赤い発疹や水疱がプツプツと出ます。熱性けいれんや脱水症で重症化することもあります。これも飛沫・接触感染ですが、その中でも、糞口感染があり、ウイルスが便中に排出されるため、おむつ交換した際に手指に付着し、手洗いが不十分なまま、口や目・鼻を触ったり、食べ物を扱ったりして大人が感染してしまいます。大人が感染すると重症化し、脳炎や髄膜炎、心筋症などを誘発することがあります。
手足口病は、口腔内や手のひら、足の裏に水疱性の発疹が出て、発症者の3分の1に発熱がみられます。まれに髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの合併症を生じることがあります。これも、飛沫・接触感染が感染経路です。これも、糞口感染で大人が感染するリスクがあり、大人は症状が重く出やすいと言われています。発疹の痛みは大人の方が強いようで、インフルエンザの前触れのような、全身倦怠感や悪寒、関節痛、筋肉痛などの症状が出ることがあります。また、手足口以外にも、肘や膝、お尻に発疹がみられることがあり、近年はお尻に出る傾向が強くなっているようです。
夏の3大感染症 | プール熱 | ヘルパンギーナ | 手足口病 |
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ウイルス | アデノウイルス | エンテロウイルス | エンテロウイルス コクサッキーウイルス |
潜伏期間 | 5~7日 | 3~6日 | 3~6日 |
感染経路 | 飛沫・接触感染 | 飛沫・接触感染 | 飛沫・接触感染 |
その他 | 塩素が不十分なプールに入ると感染する | 回復後、口から1~2週間、便から2~4週間にわたりウイルスが排泄される | 回復後、口から1~2週間、便から2~4週間にわたりウイルスが排泄される |
これらの3大夏の感染症には、ワクチンや特効薬がありません。発熱や発疹、痛みなどの症状を緩和させる対症療法を行います。
感染予防のためには、おむつ交換を行う時は、マスクを付け、使い捨てのビニール手袋を使い、おむつ交換後は、手洗いを行いましょう。家族間を含め、他人とのハンカチやタオルの共用は行わないようにしましょう。この3大夏の感染症は新型コロナウイルスとは違い、アルコール消毒剤に対する抵抗性が高いため、石けんによる手洗いが重要です。ノロウイルスと同じで、次亜塩素酸を用いた消毒剤の使用が有効です。
長時間の炎天下で過ごし、日焼けをすると免疫力が低下することが分かっています。日焼け対策を忘れないようにしましょう。
寝不足や暴飲暴食も大敵で、どちらも免疫力の低下を招きます。腸は、人の免疫細胞の6~7割を占めており、口から体内に侵入してきた細菌やウイルスの働きを食い止める役割をしています。このため、暴飲暴食で胃腸に負担をかけると、免疫力が落ちてしまいます。適宜エアコンを調節して暑さ対策をし、良質な睡眠を確保するようにしましょう。バランスの取れた適量の食事をとるようにしましょう。
女性は、生理周期やホルモンバランスの乱れにより体調やメンタル面に影響を及ぼすことが分かっており、女性ホルモンのプロゲステロンの分泌が活発な生理前は免疫力が下がると言われています。生理前は無理をせず、体を温かくしてゆっくり休め、生理後に活動的に過ごすようにしましょう。
新型コロナウイルスの危機を経て、日常生活が一変しました。でも、学んだ事はたくさんあると思います。元々、私たち人間はウイルスや細菌などの微生物と共に生きています。これまで、几帳面な感染対策をしていなかったかもしれませんが、今はそれをしていくことで自分や家族、身の回りの人たちの命を守ることができます。少し不自由かもしれませんが、当たり前のことなのかもしれません。密閉・密室・密集の3密を避け、人との距離を置き、マスクの着用と手洗いの徹底は続けていきましょう。猛暑ですので、ソーシャルディスタンスが2m以上取れるようであれば、マスクの着用は必ずしも必要ではありません。熱中症にも気をつけながら体調管理していきましょう。