「最近ちょっと歩いただけで足が痛くなって、少し休むとまた歩けるようになるの」とか「足が冷たくてしびれるんです」といった患者様の訴えを耳にすることがあります。
透析患者様の中にも糖尿病を併せて持っている方や全身性疾患などで血管閉塞を起こす可能性が高い患者さんが多くいらっしゃいます。
心臓から一番遠くにある足が最初にダメージを受ける事が多く、足の血管が詰まって足の先まで血液が流れなくなり、皮膚の潰瘍、壊疽へと進み、最終的に切断に至る、これが閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)です。
そうならないために当院透析室では毎月足の観察をおこない、定期的に動脈硬化の検査を実施しております。
更に精密検査が必要な方には検査を実施し、閉塞性動脈硬化症の予防対策を行っております。
それでは、当院で実施している検査について簡単に説明いたします。
Ankle Brachial pressure Index:ABI検査
四肢の血圧を同時に測定し、(足関節収縮期血圧)÷(上腕収縮期血圧)より求めます。
これにより、下肢動脈の狭窄・閉塞が評価できます。
ABI評価基準 | |
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ABI<0.9 | 狭窄または閉塞の疑い |
ABI<0.8 | 高率で狭窄または閉塞の疑い |
0.5<ABI<0.8 | 閉塞が一箇所ある可能性 |
0.5<ABI | 閉塞が複数個所ある可能性あり |
ABI>1.3 | 動脈が石灰化している可能性あり |
Toe Brachial pressure Index:TBI検査
動脈狭窄や閉塞を疑うとき第1選択としてABIを行いますが、罹患期間の長い糖尿病や透析患者様では足関節より中枢(心臓に近い血管)の動脈は石灰化が著しいため、ABIが本来より高値となり、実際には狭窄や動脈閉塞があるにもかかわらずABIが基準値の範囲内となり、病変を見逃す可能性があります。
そこで、TBIでは足趾血管石灰化の進行している患者様でも、閉塞性病変の存在を測定することが可能です。
TBI評価基準 | |
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0.7<TBI<1.0 | 正常 |
TBI<0.6 | 狭窄等の血管障害を疑います |
ABI・TBI検査は、ベッドの上で仰向けになり、両側の腕と足首(TBIでは足の指)に血圧計の帯(カフ)、心電図の電極、心音マイクを装着します。
その結果をコンピュータによって数値化します。所要時間は10分程度です。
下肢動脈エコー検査
下肢の脈の触れる部分の血流波形を超音波で観察する事で、動脈血流障害の有無を評価する事が出来ます。
この検査の最大の利点は、侵襲性も放射線被爆もなく、簡便に下肢動脈の血行動態を評価できることです。
血管造影検査
造影剤を使って、血管の状態や血液の流れを調べます。
太ももの付け根または、腕の動脈から細い管(カテーテル)を通し、造影剤を目的の血管に流しながらX線撮影します。
血管が細くなったり詰まったりしてないかがわかります。
また、その狭くなった血管を広げる治療を行うことも可能です。
閉塞性動脈硬化症は、透析歴が長くなると発症のリスクが高まります。
適度な運動、リン・カルシウムのコントロールを心がけることで予防につながります。
また、自分の今の状態を知り、変化をスタッフに伝えていただくことで、早期発見、病状の進行を防ぐことが出来ますので、いつでもご相談下さい。