透析と心臓病

「透析って腎臓が悪い人が受ける治療じゃないの?」
といった声をよく聞きますが、その通りです。
透析とは腎臓の働きが悪くなり、体の中の老廃物や体の中の余分な水分を尿として体外に排出出来なくなる病態、すなわち腎不全の方が受けている治療の事です。

では、透析と心臓病とはどんな関係があるのでしょう。
透析を受けている患者さんにとって心臓の病気とは、重大な合併症の一つで、心筋梗塞や狭心症といったものがあります。
透析を受けている方は透析を受けていない人より、心筋梗塞や狭心症の発症のリスクが高くなります。
その理由として、大きく二つに分けられます。
一つは、腎臓の機能が低下し動かなくなることで、体の中を循環する血液の量が増えてしまい心臓に負担をかけてしまう、いわゆる溢水状態になる事、もう一つは、動脈硬化のために心臓自身に酸素や栄養を送っている冠動脈という血管が詰まってしまう虚血性心疾患という状態になる事が挙げられます。
両者ともに心不全と呼ばれる病気で透析患者さんの死亡原因の第1位になり、全体の約3割をこの様な心臓病が占めていると報告されています。
しかも、これらの状態は急に起こるものではなく徐々に進行していくので、患者さんはほとんど自覚がなく、ある日突然胸が苦しいと感じた時は命に関わる一歩手前だったりする事もあります。
実際にみどり病院でも症状が全くなく定期検査で発見される事例もありました。
合併症である心臓病にならない様にするために、日々の水分制限・食事指導といった事を指導しています。
が、しかし、合併症を完全に防ぐことは難しいのです。
なぜなら、透析の患者さんは透析を受ける前から高血圧であり、動脈硬化が進行しています。
また、糖尿病からの腎不全患者さんが多く、自覚症状なく病気が進行している場合が多いのです。
なので、みどり病院では、症状が無くても定期的に心臓の検査を受けて頂く事を大切にしているのです。

みどり病院では、透析患者さんには定期的に心電図、心臓のエコー(超音波)検査、胸のレントゲン写真を撮り、心臓の大きさや状態や機能を調べています。
これらの検査で異常または、異常とまではいかないが心配だなと思われる所見が見つかった場合は、さらに詳しく調べるために心臓のCT、もしくはカテーテル検査を行っています。
心臓カテーテル検査とはカテーテルと呼ばれる細い管を手首や足の付け根の動脈から挿入し心臓まで運び、造影剤を流すことにより心臓の血管(冠動脈)の状態を写し出す検査です。
この検査では、冠動脈が狭くなっている場所はないか、詰まってしまっている場所はないかを調べ、その様な箇所があればカテーテルでの治療が可能か、または血管のバイパス手術が必要か治療方法を検討していきます。
当院に於いても、胸の症状を訴え心電図で異常が見つかり心臓カテーテル検査を行った結果、冠動脈が狭くなっておりカテーテル治療をされた方やカテーテル治療では治療が難しくバイパス手術を受けた方もいます。
透析患者さんの心臓系の合併症に関しては、重症化する事が多々あります。
私たちスタッフは定期的な検査と、日々の患者さんの状態観察により早期発見を目指しています。
「朝方になると胸がドキドキする」「坂道を上がると息がしんどいんよ」といった普段の会話から体調の変化を見逃さないように、また、透析中の体調や血圧の変動をよく観察し、心臓の状態が悪いのではないか?といったサインを見逃さないように、家族のように大切に思う患者さんだから、透析時の体調が悪くなる原因が何なのか、しっかりと原因究明を行っていかなければなりません。
いつもは昨日見たテレビの話、今日の天気の話など何気ない会話ばかりですが、ちょっとした体調の変化を伝えてくれたり、会話から気づくことができたりするだけで、患者さんの体調の異常を知る事ができます。
しかし、まだまだ勉強不足なのが現状。患者さんに世間話だけでなく、そういった会話から異変を聞き出せるように、一日でも長くご家族との時間を楽しんでもらえるよう、知識と経験を積んで頑張っていかなくてはと思います。