みどり病院の透析室の透析時間について (理想の透析時間って?)

透析導入と共に最初私たちスタッフは患者さんに「これから透析という治療を行います。治療には4時間かかります。」と説明します。
決まって患者さんは「え!?そんなにかかるの???」と言われます。
導入期だけでなく、長く透析を続けておられる患者さんや他院より紹介された患者さんの中にも、「時間まからんの?」「体重の増えが少ないから、3時間でええんとちゃうんか?」などなど、出来るだけ短時間で終わりたい願望があります。
それだけ透析時間というものは患者さんにとって苦痛を伴う、拘束されるという思いを持つ。
重大事項の一つになっているのです。それは、私たちスタッフにとっても例外ではありません。

透析治療の効果は、ダイアライザーの性能や体重あたりの血液流量を増やすことが最も効果的ですが、血液流量が限界を超えるときには透析時間数を増やす事で効果を出していきます。
体の小さい方は3時間で体の中をすっかりきれいにする事も出来ますが、体の大きな方は、高性能膜を使用しても一般的には4時間前後が必要で、時には5時間程度の時間が必要な事もあります。
分かりやすい例で例えるならば、白干し梅(すっぱい梅)の減塩方法をご存知でしょうか?
減塩方法は、梅干し500gを大きめのボウルなどの容器に入れ、水2~3Lを入れて待ちます。
塩抜きの時間と減塩の目安

塩抜き前12時間24時間
塩分の目安約20%約12~15%約7~10%

容器をゆすっても早くなる事はありません。
このように透析も急がず、落ち着いて透析する気持ちが大切です。
また、透析治療において、飲んだ水は取り除かなければなりませんが、1回の透析で除去できる量には限界があります。
無理な除水を行うと血圧が低下する為に十分な透析が出来なくなり、水や老廃物が体に残ってしまって、血圧低下や、足や、全身のつり等体調を悪化させるおそれが出てきます。
その為、透析時間の延長が余儀なくされてしまいます。
飲水は体に負担をかけずに除去出来る範囲におさえて良好な体調を維持できるようにしましょう。
自分の体重増加の目安を知って、自己管理することが最も重要です。(1日空き→ドライウエイトから+3% 2日空き→5% 例DW=50kgですと、50×0.03=1.5なので、51.5kg迄)塩辛いものや味の濃いものを食べると、のどが渇いて水をたくさん飲みたくなります。

透析時間と生命予後

昭和40年代の血液透析は8時間程度行われた時期もありましたダイアライザーの性能の向上や、透析技術の発達によって、昭和50年代には5時間透析が普通になりました。
透析技術はその後も進歩を続け、昭和60年頃からは健康保険による支払額が、透析時間4時間と5時間で同じになった事をきっかけに4時間透析が普通になりました。
しかし、医学的にみてどのくらいの透析時間で十分かというデータは、これからの課題です。
<長時間透析のメリット>
 ・緩やかに除水できるので体調の変化が少ない
 ・急激な血圧低下を防ぐ事ができる。
 ・貧血が改善して造血ホルモンの使用量が減ったり、リンやカリウムの吸着薬が減量、不要となる。
 ・長時間透析のほうが生命予後が良い。
透析時間を4時間から4.5時間の透析と比較するも、3.5時間未満では死亡率が3倍に増加、4時間未満では死亡率が1.3倍に増加、4.5時間以上では死亡率が0.8倍に減少します。
理想の透析時間としたら長ければ長い程体によいのですが、治療による束縛や苦痛面を考えて当院では4~5時間透析としています。