内シャントの管理って?〜みどり病院透析室から〜

透析をしていると、「シャントって何?」「シャント音って?」と聞かれる事があります。
今回は透析をするための“内シャント”についてお話したいと思います。
内シャントは、透析を行うために最初に必要となります。
シャントとは、静脈を動脈に縫い合わせてつなぐことにより、動脈血を静脈に流すことを指します。
透析を行うためには、体外に十分な血液を循環させる必要があります。
しかし、看護師が針を刺すことのできる静脈は、透析を行えるだけの血液量を体外に循環させることができません。
シャントをつくることにより、静脈と動脈をつなげ、静脈に動脈血を流すことにより、十分な血液量を確保することが出来るようになります。
静脈の血管は細いですが、シャントの血液が十分流れている血管は徐々に太く発達していきます。
シャント血流はシャントを作った部位に近いと、動脈の流れが強く勢いよく流れていますが、シャントから離れると、段々静脈と同じような流れになっていきます。
透析は血管に毎回2本針を刺し、体外循環を行います。
週3回、一生続ける必要があります。
そのため、トラブルなく良好な状態を保てるよう管理が必要になります。
シャントの管理方法についてご紹介します。

シャントの観察

<スリルの確認>
シャント血が良好に流れていると、血管ではザーザーという振動を感じます。
その振動を“スリル”と言います。
“スリルがある”ということは、シャント血流が良好であるということになります。
この方法は指で血管に触れ、指で血液の振動を感じることでスリルを確認することができます。

<シャント音の確認>
シャント音は、シャント血管に聴診器を当てて聞く方法です。
シャント血が良好に流れていると、“ザーザー”や“ゴーゴー”という音が聞こえます。
シャント音が聞こえないと、血管が詰まっている可能性が高く、緊急な処置が必要となります。
また、血管が細くなっていると、“ヒューヒュー”や“キューキュー”という狭窄音が聞こえます。
細い路地を強い風が通り抜けているような音です。
シャント音を確認するためには聴診器が必要です。
医療者が使用しているような高価なものでなく、1000~2000円位のもので構いません。
朝夕2回はシャント音の確認をしましょう。

<傷の有無、熱感、痛みの確認>
シャント血管は動脈に近く、感染すると、全身に広がる危険があります。
シャント血管に傷がないか確認します。
また、熱感や痛み、赤くなっていたり、腫れているようなときは感染の可能性があります。
目で見て確認しましょう。

シャントのトラブルにならないために

<狭窄、閉塞予防>
シャント血管を圧迫すると、血液の流れが一時的に止まったり、ゆっくりになります。
血液は流れが遅くなると、固まる習性があり、一旦、血液が固まり始めると、その習性は加速されます。
そのため、短時間であっても、血管を圧迫するような動作は避ける必要があります。
以下の動作はしないようにしましょう。

・手提げかばんをシャント肢にかけない。
・重いものをシャント肢で持たない。
・時計をシャント肢につけない。
・腕枕をしない。シャント肢を体の下にして寝ない。
・シャント血管を圧迫するような衣服は避ける。
・長時間、肘を曲げたりしない。
・血圧測定や点滴、採血はシャント肢で行わない。

*血圧が低すぎると、血流が遅くなり閉塞の原因になりうるので、シャント音の確認をするようにしましょう。

<感染防止>
透析をしているだけで感染しやすい状態です。
また、シャント肢は動脈に近く、ばい菌が入ると、感染が広がりやすいです。
以下は感染防止の注意ポイントです。

・シャント肢に傷をつくらない。
・透析後は穿刺後からの感染を防ぐために、浴槽に入ることは避け、シャワー浴にとどめましょう。
・シャント肢の清潔を保つ。

<出血が止まらない時>
シャントの血管には動脈血が流れ込んでいます。
その為、血が止まりにくい傾向にあります。
透析後の穿刺あとからの出血が止まらずダラダラと流出している時やシャント肢を傷つけてしまい出血が止まらない時は、まず、布かハンカチで軽く指をあてて押さえます。
普通は10分位で血は止まりますが、30分位、押さえても止まらない時は、病院に連絡し、対応を相談しましょう。
多量に出血している場合はすぐに連絡するようにしましょう。
止血する為にきつく血管を押さえすぎると、閉塞の原因になるので注意しましょう。

透析患者様にとってシャントは命綱とも言えます。
透析日は私達医療者がシャントの観察を含め、トラブルのないように細心の注意を払っています。
透析日以外は、患者様本人がシャントを大切にし、日々、管理してほしいと思います。
より良い透析ライフを送る為にシャント管理を参考にして頂ければと思います。