人工透析に絶対不可欠な「RO水」!?

今年は大きな地震や台風などの災害が多かったですね。
被災した時に我々病院が一番恐れることは水の供給が無くなることです。
今年も全国で水道管の破裂や亀裂により病院に水が供給されなくなった事例がありました。
病院の中でも透析が一番被害に遭います。
透析は水が命と言われており、多量のきれいな水が透析に必要とされます。
そういった訳で今回は透析に使われる「水」についてお話したいと思います。

質問です!
1回の透析で1人当たり平均何Lの水を使用するのでしょうか?
答えは約120L (治療時のみ)です。
つまり皆さんが飲んでいる500mLペットボトル240本と同じ量です!多いですよね!
透析では透析液という液が必要になります。
透析液は1分間に500mL使用します。
再使用はできないので4時間透析の患者さんの場合では、

500mL/1分 ⇒ 4時間施行 ⇒ 120000mL/240分= 120L/4時間

となります。
これが1回の透析で使用される1人当たりの水の量です。
当院はベッド数24床ありますので、3000L程の水を毎日使用しています。

当院の透析液の組成は以下の通りです。

電解質 (mEq/L)(mg/dL)
NaKCaMgCl酢酸重炭酸ブドウ糖
140.02.03.01.0110.08.030.0100.0

これらの決められた濃度で濃縮された原液を特殊な水で35倍希釈して透析液が完成します。
今回は希釈する特殊な水、RO水に注目して説明していきます。

飲み水とRO水の違いって?

ミネラルウォーターって皆さん聞いたことがありますよね?
ミネラルウォーターは体に良いとかきれいなどのイメージがありテレビでも多く取り上げられていますが、実際何が入っているのかご存知でしょうか?
ミネラルウォーターというものは4つのミネラル「カリウム」「ナトリウム」「マグネシウム」「カルシウム」があります。
この4つのミネラルのバランス調整が骨や筋肉を作ったりして健康に良いと言われています。
また水の中の細菌やウイルスを殺菌する塩素も含まれており美味しく飲める飲料水となります。
しかし美味しいミネラルウォーターは透析液には使用できません。
理由は不純物が多いからです。
ミネラルウォーターは美味しく飲めるためにミネラル成分等が含まれていますが、透析液に使用するRO水は水以外の物質を極限に減らすために水処理されています。

RO水とは?

透析液にはRO水という純水の一種を多い割合で使用します。
純水は水道水と違って不純物やイオン成分を一切除去した水のことです。
RO水(Reverse Osmosis)とは、浸透圧とは逆の大きな圧力をかけることで逆浸透を起こさせてROフィルタにより濾過する技術で、逆浸透させることで水に含まれる放射性物質・ダイオキシン・トリハロメタンといった有害物質をフィルタで取り除いて安心で安全な水になります。

水処理装置の仕組み

皆さんがいつも使われる水道水をいくつもの水処理装置と組み合わせることで純度の高い処理水を得ることができます。
これからどのように処理しているか仕組みを紹介します。

1.1次フィルタ
水道中にある錆やゴミなどの有形物質を濾過するフィルタで膜の目の大きさは30μmほどです

2.軟水化装置
水道水にある硬水成分(Ca2+やMg2+などの2価陽イオン)を高濃度NaCl溶液で流すことでイオン交換が行われて軟水にします

3.活性炭濾過装置
水道水中にある遊離塩素やクロラミンなどの吸着除去を行います

4.2次フィルタ
1次フィルタより膜の目が小さい10μmのフィルタを使用して軟水装置や活性炭濾過装置から出る微粒子を除去して次の逆浸透装置の負担を減らします

5.逆浸透装置(RO装置)
ROフィルタを介して高圧の原水を加えて水中の不純物が濾過されて透析用の純水に適した水質の水が得られます

6.紫外線殺菌装置
紫外線殺菌灯で微生物の生育抑制・汚染防止を目的に設置されています

まとめ

透析液に使用するRO水は様々な処理を経て作られています。
RO水は透析にとって一番重要であり、水処理装置が故障したら透析が出来なくなります。
私達臨床工学技士は水処理装置が正常に作動しているか毎日点検を行い、異常の早期発見に努めています。
また定期的に機械のメンテナンスを行い、フィルタや部品を取り換えています。
縁の下の力持ちとして患者さんが安心安全に透析を行えるようにするのが機械の専門家である臨床工学技士の仕事になります。
今回は今までより専門的なお話になりましたが、透析に使われる「水」に興味があればスタッフに聞いてみてくださいね!