薬が多すぎて毎日の管理が大変!〜透析患者さんの『出来ない』を『出来る』に変える服薬支援サポート〜

みどり病院の透析室はとってもアットホームな雰囲気です。家族のように寄り添い、心配し、透析治療における様々な苦痛を少しでも和らげられるようスタッフは日々努力しています。今回は私が患者様の『出来ない』を『出来る』に変えるサポートをどのような思いを持って取り組んだのかお話しします。

当院の透析患者さんは毎月28日分の定期薬を処方し本人へまとめて渡します。(もちろん1包化し、日付記入しています)
定期薬処方日に聞き取りをすると、決まって「薬まだいっぱいあるから今回いらんわ~」と、定期薬処方日に内服薬は出さずに、足が痛いからシップ、体が痒いから軟膏、白内障の目薬といった対症療法に対しての意識は高いのに、飲み薬に関しての意識は低く毎日残る定期薬を、どうしたら飲むようになってくれるのか段階を追って考え実践してみました。

#1 まず、自分の病気がどのようなもので、それに対して処方されている薬がコレで、その薬がどんな作用をするのかを説明して、大事な薬しか出てないからと毎回話しかけて、薬を飲んでもらうよう促し続けました。

→1か月後定期薬処方日に聞き取りをしたところ、やはり「残っている薬どうしたらいい?」と言われてしまいました。残薬を持参してもらえるよう伝え、確認すると朝夕食直後の1日2回内服指示の分が、朝の分は約2週間分余っていて、夕食後の薬は、約3週間分の残薬がありました。
一包化してあり、日付も入れている事から考えた事は配薬に課題があるのではないか?と考えました。

#2 本人が、お薬カレンダーを2個持っているという情報から、それを活用できるのではないかと考えました。月1回に訪問看護で週2回ヘルパーが入っている中で定期薬をお薬カレンダーにセットするというサービスを入れることができるか、ケアマネジャーに相談し、OKが出たため定期薬処方日に合わせスケジュールを組んで頂きました。3か月後の残薬は朝食後の薬は約10日分、夕食後の薬は約16日分ありました。

どうして薬が余るのか聞いてみたところ「薬カレンダーにいれてもらったら、そこからスポスポ取って、テーブルの上におくねん。ほんで、飲み忘れるねんな~」と反省している言葉が聞けました。このことから「飲み忘れる」を「忘れなくする」には薬の存在感を認識させる事だと思いました。そうするには常に目の届くところに薬があればよいのではないかと考えました。

#3 そこで次に試そうと思ったのは服薬管理です。お薬カレンダーを一旦止めて、透析ごとにお薬を渡そうと考えました。
火木土の午前透析なので火曜日の夕から木曜日の朝までの薬を、A4サイズの紙に薬を1回分ずつテープで貼り付け、同様に木曜日の夕から土曜日の朝までの薬、土曜日の夕から火曜日の朝までの薬をシートに貼りつけ、透析ごとに毎回手渡し本人へ説明し、この貼り付けてある薬を飲んでも、飲むのを忘れてもこの紙を持ってくるよう伝えました。

結果、その効果が如実に現れたのです。透析毎に毎回シートの持参を確認すると、シートから薬をはがしとり、飲んでいました。実践し3か月経過しましたが、朝食後の薬の飲み忘れがなくなりました。夕食後の薬は1か月で5回分くらいまでに減りました。

いまでは、「薬お願いしますね」と、患者様の方から言ってくれるようにまでなりました。「これ、テープを剝がすのが面倒だから、茶色い薬カレンダーに変えてよ~」と言われる為、1度薬カレンダーを使いましたが、飲み残しが多く見られたため、やはり薬を貼り付ける方法で今は管理している状況です。

血が固まりやすいため、朝食後の薬には抗血小板薬が入っており、飲み忘れると、血液が透析の回路内で凝固し透析がうまく回らなかった事も度々ありました。
薬の飲み忘れが少なくなった今ではその事も回避することが出来ています。

数多くある日常業務の中の配薬という業務一つにしても、ただ配薬するのではなく普段の何気ない会話から問題を見出だし解決に繋げることが出来たのも透析室が掲げるアットホームな雰囲気づくりをコンセプトに、先輩スタッフが患者さんに寄り添い、誠実に向き合っている姿勢を見てきたからこその結果だと思います。これからも「あんたで良かった」と、言ってもらえる存在になれるよう日々精進していこうと思います。