
慢性腎不全になると、老廃物や余分な水分を尿として排出することができず、体内に溜まってしまうため、これらを体から除去する必要があります。血液透析では患者さんと透析装置の間で、血液を循環させながら、濾過してそれら老廃物や余分な水分などを取り除く治療を行っています。バスキュラーアクセスとは、血液透析の際に血液を脱血したり、返血したりするための出入り口を指す言葉です。
透析患者さんにとっては、なくてはならない、とても大切なものなので、今回バスキュラーアクセスを種類ごとにご紹介させて頂きます。
☆自己血管内シャント(シャントといえばこれを指します)
自己の動脈と静脈を外科的につないだものです。動脈血が直接流れ込んだ静脈は拡張して、透析時の穿刺や脱血・返血がスムーズに行えるようになります。初回の作成では、通常利き手と反対の手首近くで作りますが、2回目以降の作成では、肘近くで作成したり、反対側の腕で作成します。
他のバスキュラーアクセスと比較して、シャント血管が発達しやすい、長期に開存する、感染に強いなどの長所があり、ほとんどの透析患者さんの第1選択が、こちらになります。
内シャント造設術は、通常30~60分程度の手術時間で、局所麻酔下に行います。
☆人工血管
自分自身の血管が細い、詰まっているなど、内シャントに適さない場合、血管に見立てた人工チューブで動静脈をバイパスしたものです。人工血管は合成素材でできた直径4mm~6mmのチューブです。自己の静脈が乏しい場合でも十分な血流を有するシャントを作成する事が出来ます。
しかし、人工血管が感染を起こすと、敗血症に至る事が多く、命に関わるリスクを伴いますので、清潔保持等の注意が必要です。
人工血管の手術は、通常60~120分程度の手術で、局所麻酔化に行います
☆動脈表在化
皮膚から深い位置を走行している動脈を、外科的に皮膚の直下に移動させて、透析の時に直接動脈を刺して、血液をとり出すことが出来るように作製されます。血液を戻すのは、表在化した動脈ではなく、別の血管(静脈化内シャント)になります。
内シャントが作製困難な方や、心不全で内シャント作製する事が出来ない方、また、内シャントが不全になった時の脱血のバックアップとして作製されます。
☆透析用血管カテーテル
*非カフ型カテーテル(短期型カテーテル)
血液透析が緊急に必要となった方や、シャントが使用困難となった方に、透析用血管カテーテルを大腿or頸静脈から挿入し、一時的に血管内留置して血液透析を行う事があります。
*カフ型カテーテル(長期留置型カテーテル)
透析が必要な内シャント作成が困難な方や重症心不全の方、小児透析の方などに使用される透析用血管カテーテルです。カテーテルが皮下で移動しないようにカフと呼ばれる繊維が縫い付けてあり、比較的に長期の留置を可能にしています。
当院では上記のような数種類のバスキュラーアクセスを患者さんの状態に応じて選択し、どの腎不全患者さんにも安全で適切な血液透析治療を実施できるよう努めています。
バスキュラーアクセスは、その種類によって、注意点や管理方法が異なりますが、血管に負担を掛けない、清潔に保つという点は、すべての患者さんに共通です。
透析治療の命綱である内シャントを少しでも長持ちさせるために、透析時にスタッフに診てもらうことはもちろんの事、日頃からご自身でも内シャントをよく見て、触れて、聴いておくことが、シャントトラブルを未然に防ぐ重要なポイントです。





