皆さん、心肥大とという言葉をお聞きしたことはありますか?
聞いたことあるけど詳しく分からない、という方が多いかと思います。
今日は心肥大について説明していきます。
心肥大って何?透析患者は特に要注意!!
心肥大とは心臓の筋肉の壁が肥厚し、分厚くなっている状態を言い、心肥大が長期にわたって続くと、心臓の収縮力が低下して身体を動かしたときの息切れ、全身の倦怠感、顔や脚の浮腫みなどの心不全の症状が現れます。
心室、心房のどちらかでも大きくなると単純レントゲン写真では大きくみえ、心胸郭比(CTR:Cardio-Thoratic Ratio)が高くなります。CTRとは単純レントゲンで撮影された「心臓の幅」と「胸郭の幅」を表した比で心臓の病気をみつけるための1つの判段材料としてよく使われます。CTRが50%以上だと心肥大といわれます。
透析患者では心臓に水が溜まり心臓自体のうっ血がみられたり、貧血のため血液中に含まれる酸素の量が少ないので、心臓の拍出する回数を増やすことで心肥大になりやすくなります。
当院の透析室でも、透析前には患者さんに体重計に乗ってもらい中1日、中2日でどれだけ体重が増えたかをcheckします。
なぜかというと透析患者さんは、尿がほとんど出ないので前回の透析後から飲食による水分の多くが体内に残り、体重増加として数字に表れています。体の中に水分がたくさん溜まると心臓に負担がかかって心不全となり、「昨日は苦しくて寝れへんかった。」「息苦しくてしゃーないんやけどこれは昨日お鍋食べたせいやな。」と透析前にお話される患者さんもいます。
みどり病院の透析室でよく患者さんから聞く体重増加の原因は「鍋」「ラーメン」「味噌汁」が多いです。
本記事を読まれている透析患者さんやその家族さんの方々は鍋、ラーメン、味噌汁など気を付けてください。全く食べてはいけないわけではなく、中2日(土日)に外食をきっかけについ食べてしまうことが多くみられるので、冬のおいしい鍋も皆さんほどほど、心臓と腎臓をいたわって下さいね。
心臓が大きくなったら、何がこわいの?
心房が大きくなっているのと、心室が大きくなっているのとでは原因が変わってきます。このこと明確に知るためには、心臓超音波検査を行う必要があります。心臓超音波検査とは超音波を使って心臓を画像にして心臓の動きや大きさ、弁の状態、血液の流れを観察する検査です。
心房は心室に血液を送らなければならないが、そのためには左心室が効率よく広がり、左心房の血液を吸い込む力が必要になります。
心房が大きくなっている場合は高血圧や心筋症、僧房弁閉鎖不全により心室の血液を引き込む力が弱くなって心房に負担が大きくなっている時、心房細動の時間が長い時、僧房弁閉鎖不全や三尖弁閉鎖不全により心臓の弁が悪くなり心室から心房へ血液の逆流がある時に大きくなります。
大動脈弁閉鎖不全、僧房弁閉鎖不全により逆流によって心室を通る血液量が増える場合、拡張型心筋症、冠動脈閉塞による心筋梗塞により心室の筋肉そのものに障害が起きた場合は心室も大きくなってしまいます。心室が大きくなると心室の動き、駆出率が変わります。正常人では駆出率は約55%以上であることが多いです。駆出率が低下している場合は、将来は心不全や不整脈となる恐れがあると言われています。
心肥大に対する治療は心肥大を起こす原因疾患の治療が中心となり、肥大そのものに対する直接の治療はないとされ、一度肥大した筋肉をもとに戻すことも難しいと考えられており、これ以上肥大しないように治療することが重要となってきます。
腎機能に問題のある透析患者さんでの心肥大の原因には、飲水量が多くて水分が多く溜まっている場合や心不全による心拍出量の低下が考えられます。
透析患者さんの体重管理
当院では透析後の目標体重と言われるドライウェイト(DW:Dry Weight)の再設定を行うときに判断材料としてCTR、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP:Brain Natriuretic Peptide)がよく使われます。
DWとは透析患者での余分な体液が貯留していない状態であり、これ以上水分を除去すると、急激に血圧が低下する限界体重をいいます。
BNPとは心臓の中で生成されるホルモンの1つで、心不全の状態で見られるうっ血を解消するために血管拡張させる作用と強い利尿作用を持ちます。
透析患者さんの死因の多くが心・血管系の合併症であり心不全は死因の第1位となります。
心肥大になると心不全につながるので、心肥大にならないよう透析患者さんの体液量・血圧のコントロールが重要になっていきこれからも患者さんの観察が今後も大事になってきます。