准看護師から看護師への道のり ~様々な役割を担いながら~

約5年前、准看護師としてみどり病院に入職をしました。
入職前、色々な方から、「学校に行ったら視野が広がるよ。考え方が変わるよ。」と幾度か声を掛けられましたが、現状に満足をしていたため進学は考えませんでした。

みどり病院では、プリセプター指導を取り入れている他、クリニカルラダー制が用いられ、さらに勉強会などで自己研鑽しやすい環境が整えられています。
しかし、保助看法にもあるように准看護師は看護師の指示を受けて業務にあたると義務付けられており、スキルアップをするには限界がありました。
准看護師であっても、疾患の知識を深めることは参考書から容易にできます。
しかし、それだけではない学びとは何か、看護師と准看護師との違いは何かという思いが強くなり、進学することを決めました。
進学先は、通信制の短期大学か専門学校の選択がありました。
特徴として、通信制は、自宅での机上学習が主であり、専門学校は通学で、学生同士、また患者など人と触れ合えることが多いという情報を得ていました。
そこで、人と多く触れ合え、分からないことがあればすぐに講師に聞くことができる環境であること、必要費用が前者と比べて1/10で家計の助けになることから専門学校の進学を決めました。

学べることへの期待や楽しみが強くはなっていたものの、入学時は、准看護師として働き始めて15年が経過しており、小、中学生の頃のような木製の机に座り学ぶことに違和感がありました。
同時に、家庭内のことと学業の両立をしていけるのかという不安も感じました。
クラスメートは20~40代と様々で、経験を経て進学し、母親役割を担っている同じ環境の方が半数以上でした。
これは、仕事をしながら学べる特徴をもつ定時制の進学を選択したからとも考えられ、クラスメートと励ましあいながら学業に取り組むことができるようになるまで、そう時間はかかりませんでした。
授業では基礎知識の習得以外に、グループワークで、相手を尊重しながらも、自己主張を率直・対等に行うコミュニケーションのスキルを身に付けることを求められました。
これは、患者とよりよい関係を築くためや、現場でチームの一員として意見を出し、看護の質を高めるためのものであったと考えられます。
実習前には各科のアセスメントに追われましたが、多角的に個人を見ることや個別的な看護など、新しく吸収できることが増えていきました。
そして、学んだことを職場で繋げることができ、さらに学ぶことや仕事が楽しくなったことを覚えています。
このように、新たな気付きへの楽しさが勝り、違和感や不安は徐々に軽減していきました。

臨地実習では、疾患による影響のみならず、各発達段階や発言の意味、その人にとってのQOLの向上を考え、看護計画をたて、じっくりと向き合うことができましたが、帰宅後にもアセスメントの記録があるため、最初は常に時間に追われていました。
そこで、週末に食事を何食かつくり帰宅後は食事をするだけにすること、すぐに使用できるように様々な文献等をまとめて調べる時間を減らすこと、洗濯物は夫に協力を得ることなど、アセスメントに費やす時間を確保しました。
このように、限られた時間を有効に使えるように工夫をすることや家族の協力を得ることで、実習を終えることができました。
子どもたちが眠る前は、極力向き合う時間を設る努力をしましたが、その後、自分は再び記録に取り掛かかる日々だったため、十分な時間がとれず母親役割を遂行できていないのではないかと自責の念に駆られたこともありました。
しかし、家事が一通り終わり記録にとりかかったときは、私に話しかけず自分たちで考えて過ごしてくれていました。
「まだ寝へんの?」と体調を気遣い声を掛けてくれることもありました。
また、疲れて帰宅するとスープをつくってくれていたことがありました。
国家試験前には、ラッピングされた袋を手渡され、中から手作りのお守りがでてきたときはとても驚きました。
このような子どもたちのちょっとした気遣いが、温かく身に沁み、更に学業に向き合う力になりました。
と共に、子どもなりに私の立場を理解してくれていることを感じ取ることができました。

3年間の様々な学びを基に、患者を多角的にとらえ定義をもとにアセスメントを行い自分の中に落とし込めたとき、患者が変化していったとき、また半年の臨地実習で自然に看護観が導き出せたとき、心から進学して良かったと感じました。
そして、准看護師と看護師との視点が違うことを知り、以前よりさらに看護に興味をもてるようになりました。
その人にとってより良い生活とは何か、その為には何が必要か、自分の尺度で判断せず認知バイアスをもたないよう柔軟さをもち介入することが必要と考えます。

准看護師、学生、母親の役割を担いながら、余った時間で何かをしようとしても、時間が足りず余裕がなくなる時もありました。
しかし、工夫次第で学ぶことができ、時間は自分で作るものだと感じました。
一番の心配は、子どものことでしたが、子どもを育てているようで、実は親の方が子どもに励まされ育てられているということにも気づかせてもらった3年間でした。
無事に国家試験にも合格し、人はどんな環境であってもチャレンジをする気持ちがあり、その気持ちと向き合えば、目標は達成できるのだと感じます。
私を成長させて下さった、講師の方々、臨地実習先の指導者さま、同意を得て下さった患者さま、職場のスタッフ、そして家族へ感謝し、今後も、看護の質の向上のために自己研鑽し続けていきたいと思います。