当院では、私達管理栄養士は、栄養の専門家として外来患者さんに対しても栄養指導を行っています。
本日は、私が最近担当させて頂いた患者様とのお話です。
その方は糖尿病治療中の方で薬物療法と食事療法で血糖コントロールをされている方です。
知り合いから「食事はロカボにしなさい!」って言われたけど、「ロカボってナンダ?」と相談されました。
皆さんは、「ロカボ」という言葉を聞いたことはありますか?
馴染みのない言葉ですが、何だと思いますか?
「メタボ?」「ロコモ?」「ハリボ?」響きの似た言葉はたくさんありますが、全然違います。
ロカボは“緩やかな糖質制限„の事で、Low(ロウ:低い)Carbohydrate(カーボハイドレート:糖質)で「ロカボ」と呼ばれています。
これは食・楽・健康協会が提唱している「糖質」を適正に摂取し、血糖値の上昇を抑えるように「おいしく楽しく適正糖質」を目標にした考えのことで、極端に糖質を食べないダイエット・食生活とは違います。
最近では企業の健康志向の努力もあって飲食店でのロカボのメニューは増えてきています。
大手コンビニや外食チェーンの店では、こんにゃく麺・シャリの部分が白米でない寿司・野菜で挟んだハンバーガーなど、見た目にも美味しそうな物がたくさん発売されています。
一般的な日本食では、1日に250~300gくらいの糖質をとっています。
一方、ロカボは1食で糖質量を20~40gにし、1日70~130gに糖質を抑えて、摂取カロリー・脂質・タンパク質は制限をしていません。
厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準では必要エネルギーのうち、50~65%は糖質で摂取するように推奨していますが、ロカボの考え方では糖質量を30%くらいに抑えることで、体重の改善・血糖値の改善等に効果が期待できるとしています。
ではなぜ、糖質量を減らすことは体重や血糖値の改善に期待ができるのか?
まず、ここで糖質の代謝について説明します。
たくさんある栄養素の中で、血糖値のコントロールは、「糖質」が大きな影響を与えています。
糖質といってもジュースやお菓子、果物等の甘いものや砂糖だけのことではありません。
ごはんやパンや麺等の日本人がよく食べる主食にもデンプンという形で糖質はたくさん含まれています。
食事をとって食べた糖質は消化管で消化されブドウ糖になり、これが「血糖値」と呼ばれているものになります。
食べ物を食べ、血糖値が上昇すると、体の中では血糖値を一定に保とうと、膵臓という臓器からインスリンというホルモンが出ます。
インスリンは肝臓、筋肉にブドウ糖の取り込みを行い、エネルギーとして使います。
使われずに余ったブドウ糖は貯蔵型エネルギーや脂肪として体に蓄えられます。
そのため必要以上に食べた糖質は脂肪の蓄積に繋がります。
肥満はインスリンの働きを弱くするので、インスリンが分泌されていても血糖値が下がりにくい状態になります。
一方、糖質の量を抑えることで摂取エネルギーが減り、肥満予防になるだけでなく、肥満を改善するとインスリンの働きも良くなり血糖値も上がりにくくなります。
また、糖質の多い食事は、たんぱく質の多い食事や脂質の多い食事と比べて血糖値が上がりやすくなります。
食べ物によって血糖値の上がり方は違いますが、急に上昇した血糖値を一定にするためインスリンもたくさん分泌されるので肥満になりやすくなります。
つまり普段食べている食事の糖質量を下げたり、適正にすると血糖値の改善・体重の改善に繋がるということになります。
どうでしたか?
ロカボがどんなものか少しはお伝えできたかと思います。
糖質制限が必要と思っていても、毎日のことなので我慢していたり、美味しくなければ長続きはしません。
自分がよく糖質を食べているなと思う方・減量をしたい方・血糖値を気にされている方は、「ロカボ」という考えもあるんだなと頭の片隅に置いて、役立ててもらえればと思います。