バナナを食べると血圧が下がる!?そんなバナナ?~機能性表示食品としてのバナナの効果を管理栄養士が調べてみました~

スーパーの玄関を入り、進んでいくと山盛りになったバナナをよく見かけます。年中売っており、手軽に食べられる果物の1つだと思います。

最近、バナナのパッケージに「血圧が高めの方へ」と書いてあるのを見かけます。

「え!? そうなの?」食べてみようかなと心惹かれました。

でも、どれくらい食べたらいいんだろう?バナナのカロリーで太らないかな?なんでそんな表示が出来るんだろう?と疑問だらけでした。

そこで、バナナのパッケージに「血圧が高めの方へ」と表記をする基準や、有効成分について調べてみました。

では、説明していきます。

血圧が高めの方へと書くにはどんな基準があるの?

食品は「一般食品」と「保健機能食品」に分けられます。

そのうち、「保健機能食品」は国が定めた基準に従って食品の機能が表示されており、さらに、「特定保健用食品(トクホ)」、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」の3つに分かれています。

では、この3種類はどのような違いがあるのでしょうか?

■特定保健用食品(トクホ)

トクホというと、トクホマークがついており、お茶や乳製品などが思い浮かびます。製品ごとに表示許可手続きを行い、表示されている機能の効果や安全性について、国が審査を行い、消費者庁長官が許可した食品です。

要するに、トクホにするには、消費者庁長官に商品ごとに許可を貰わないといけないです。

具体的には、下記のような機能が対象になります。

  • コレステロールが高めの方に
  • 血圧が高めの方に
  • 骨の健康が気になる方に
  • 血糖値が気になる方に
  • 食後の血中の中性脂肪を抑える
■栄養機能食品

1日に必要な栄養素(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合、その補給のために利用できる食品です。すでに科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば届出をしなくても、国が定めた表現によって機能表示ができる食品になります。

例えば

  • カルシウム:栄養機能表示としてカルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です。
  • 鉄:栄養機能表示として鉄は赤血球を作るのに必要な栄養素です。

具体的には、牛乳のカルシウムの量が調整してあったり、クッキーに鉄が付加してあったりするものを見かけます。

■機能性表示食品

機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。

疑問に思い、調べるきっかけとなった、バナナのパッケージに「血圧が高めの方へ」と表示している基準はこの機能性表示食品に則っていることがわかりました。バナナのパッケージが機能性表示食品とわかったところで、機能性表示食品について詳しく説明していきたいと思います。

難しく書きますと

従来、機能性を表示できるのは上記に説明した2種類(特定保健用食品、栄養機能食品)だけでした。そこで、消費者が正しい情報を得る為に、新たに制度化されたのが「機能性表示食品」です。事業所の責任において、疾病に罹患していない者に対し、機能性関与成分によって健康の維持増進が期待できる旨を科学的根拠に基づいて表示することができます。「おなかの調子をととのえます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の目的が期待できるという食品の機能性を表示できます。

特定保健用食品とよく似ていますが、特定保健用食品は国の審査を受けるため、臨床試験が必要となります。この試験には多額の費用がかかり、商品化するのは、難しいこともありました。しかし、機能性表示食品は安全性及び機能性の根拠に関する情報を示した文献があれば機能性を表示できます。そのため、近年、保健用食品全体の件数が増えました。そして、加工食品に多いと思いがちですが、意外と果物や魚などの生鮮食品も対象の食品が多くあります。

要するに、機能性表示食品は、消費者が食品を買うときに、それぞれの食品の機能(持っている力)をわかりやすく表示しましょう!!でも、トクホのように商品ごとに許可を得なくても、基準を満たせば、機能性表示食品の届出ができるよ!ということです。

では、どんな食品が対象になっているのでしょうか?

消費者庁ウェブサイトで、機能性表示食品の届出情報検索のページがあります。

このページで検索すると機能性表示食品の届け出番号ごとに安全性や機能性の根拠に関する情報を確認することができます。届け出番号は食品のパッケージに記載されています。

そこで、今回、気になったキーワード「血圧」=高め、「生鮮食品」=バナナを試しに検索しました。

「表示しようとする機能性①」という枠に「血圧」を入れると対象の商品(販売中)が、324件出てきました。さらに絞込みをかけて「食品の区分」を「生鮮食品」(販売中)とすると36件出てきました。

血圧をいうキーワードでは、対象の食品はほぼ、バナナでしたが、それ以外には、みかん、なす、えのきたけ、トマトなどが対象になっていました。それぞれ、どの成分が対象になっているのかは機能性関与成分名を参照するとでてきます。

バナナは血圧を下げるの?

さて、ここまでは、血圧の高めの方へという表示のルールをお話ししてきました。

次に題名にある、バナナは血圧を下げる?の答えはどうなったのかを考えていきます。

「バナナには血圧を下げる成分が含まれています。」それは、「GABA」と言われる成分です。バナナに含まれる血圧を下げる成分として私が一番はじめに頭に浮かんだのは、「カリウム」でした。カリウムは体内の余分な塩分を排泄することで、血圧を下げると言われています。しかし、意外にもカリウムではなく「GABA」でした。では、GABAとはどんな成分なんでしょうか?

GABAとは、ガンマ-アミノ酸(Gamma Amino Butyric Acid)の略語です。
私たちの体内に普段から存在しているアミノ酸のひとつで、様々な動物や植物にも含まれています。末梢器官において交感神経の伝達を抑制し、血管収縮を引き起こすノルアドレナリンの分泌を抑えることで血管が緩み、血圧が高くなるのを抑制することが報告されています。

バナナを販売している会社のホームページをみてみると、GABAを1日当たり12.3mg摂取すると、血圧が高めの方の血圧を下げる機能があることが報告されています。バナナ(120g可食部/1~3本程度)には、1日に必要とされているGABAの半分量が含まれていると報告されています。と書いてありました。

つまり、バナナ120g程度を食べると、1日に必要なGABAの半分を摂取できることがわかります。

消費者庁ウェブサイトで機能性表示食品の届出の際の科学的根拠の詳細が添付されていました。
https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc06/youshiki5?yousiki5216File=F372%255CF372_youshiki5.pdf

「食事バランスガイド」(厚生労働省と農林水産省)では、1日の果物の摂取目標量は、おおよそ200g(可食部)となっています。それを考えると、果物の摂取目標量の一部をバナナにするのもよいかもしれませんね。バナナで血圧を下げることにこだわりすぎて、食べすぎには注意してください。

但し、機能性表示食品の対象は、疾病に罹患していない者に対し、機能性関与成分によって健康の維持増進が期待できる旨を科学的根拠に基づいて表示しています。疾患をお持ちの方は、注意する点が変わってきますので、ご注意ください。

これからも食品の持つ機能がわかりやすく表示されているのを見かけることが増えると思います。詳しく知りたいときには消費者庁のホームページを参照したりして、自分に必要な情報を上手く取り入れ、食品の持つ力を有効に活用していけるといいですね。

※この内容は、掲載日現在の内容となります。掲載時のものから情報が異なることがありますので、ご了承ください。

参考文献:
「機能性表示食品って何?」(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/150810_1.pdf

機能性表示食品について(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/

栄養機能食品について(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_nutrient_function_claims/

Doleホームページ
https://www.dole.co.jp/brand/kinosei/

機能性表示食品の届出等に関するガイドライン
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/assets/foods_with_function_claims_220401_0002.pdf

食事ガイドライン(厚生労働省、農林水産省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html