人工透析室と薬剤科の関わり

人工透析を受けている方は年々増えています。
日本透析医学会の統計調査によると、2014年の時点での国内の透析人口は32万448人で、前年の2013年より約6千人増加、10年前の2004年と比べると、約7万人増加しています。
7万人増えた!とわれてもよくわからないので身近な例を挙げてみましょう。
『神戸市のご近所の三木市の人口が約7万人!』いまいちピンときませんね。
では『東京ドームと日本武道館が同時に満員になる位の人数(東京ドームの収容人数が5万5千人、日本武道館の収容人数が1万4千人)』これはどうでしょう?
余計にわからなくなりましたね・・・。

それはそうと、当院の人工透析は、2001年に1台の透析機から始まりました。
その後の日本の人工透析患者増加に伴い当院の患者さんも増え、今では18台の透析機を保有する人工透析室にまでなりました。
今回は、そんな人工透析室との関わりについてレポートしたいと思います。
当科には人工透析について詳しく勉強している薬剤師さんがいますので、早速聞いてみましょう。

人工透析という言葉はだいぶ一般的にはなってきましたが、そもそも人工透析って何なのかわかりやすく説明してもらって良いですか?

腎臓の機能を人工的に代替することを人工透析といいます。
腎臓の重要な働きをあげると、「老廃物の除去」、「電解質の維持」、「水分量の維持」などがありますが、その働きが低下した人に対して透析療法が選択されることがあります。
透析には色々な種類がありますが、最も一般的な方法としては、当院でも行われている血液透析があり、血液と透析液を機械に循環させて毒素や過剰な水を除去して電解質を調整します。

人工透析をすると、飲んだお薬も除去されるのですか?

全てのお薬が透析によって除去されるわけではありません。
透析によってお薬が除去されることを透析性といいますが、それは様々な因子により影響を受けます。
お薬の要因を考えると分子量の大きいお薬は透析性が低いし、患者側の要因を考えると体格の小さい人ほど除去率が高くなるし、透析条件の要因を考えると透析時間が長ければ除去率は高くなります。
その他にも様々な要因があるため、透析性は個々に判定しなければなりません。

人工透析患者さんに処方されるお薬の量はどのようにして決めているのですか?

お薬には腎臓で代謝されるものも多く、腎機能に応じた投与量が決められています。
その用量と個々の状態により決められています。

人工透析患者さんに対して使用したらいけないお薬はあるのですか?

あります。
例えば、糖尿病のお薬には透析性の低いものが多く、低血糖などの副作用が起こりやすくなるため使用出来ないものがあります。
また、当然ことながら無尿(尿が全く出ない)の透析患者さんに利尿剤(尿を出させるお薬)の使用は出来ません。
このように、患者さんの状態によっても使用できるお薬と出来ないお薬があります。

人工透析患者さんにお薬を使用する際、何か気を付けないといけない事はありますか?

透析によって除去されてしまうお薬の場合は、透析の後に服用しなければいけません。
透析性の低いお薬が処方されている場合、用量が適正かどうか、使用可能なお薬かどうかをチェックする必要がありますし、副作用についても気を付けなければいけません。

人工透析室と薬剤師は普段どのように関わっているのですか?

現在は直接的に関わる事は少ないですが、薬剤の適正使用のアドバイスなどができるよう、今後は透析患者さんの状態などを聞いたりしてコミュニケーションを取っていきたいと考えています。

ありがとうございました。
今はチーム医療の時代です。
今後もしっかりと勉強をして、薬剤師としての専門知識を患者さんのために活かしていって下さい。