当薬剤科では、臨床薬学教育にも積極的に取り組んでおり、現在行われている2か月半の病院実務実習が開始される前から薬学部の学生さんの教育実習を受け入れています。
現行のカリキュラムが開始されてからは、毎年3~4名程度の5年生(2006年度入学の学生より6年制となっています)の学生さんの実習を実施しています。
今回も、2か月半の実習を終えた二人の実習生さんに当院佐々山薬剤師がインタビューさせていただいたのでご紹介させて頂きます。
佐々山薬剤師)
実習生Aさん、Bさん、長期間の実習お疲れさまでした。
今から少しだけお付き合いください。
実習前は、病院薬剤師という仕事にはどんなイメージを持っていましたか?
実習生A);薬学部5年生、男性
入院患者さんの薬を調剤して、それを配薬し服薬指導を行うというイメージを持っていました。
中でも薬は注射剤を取り扱うことが特徴的だと思っていました。
実習生B);薬学部5年生、男性
処方箋に基づいた調剤はもちろん、特に入院患者さんへの服薬指導や薬の効き目の確認などといったコミュニケーションをとることの多い職業のイメージが強かったです。
佐々山薬剤師)
「服薬指導」「注射剤」「患者さんとのコミュニケーション」のイメージだったのですね。
では、今回の実習でどんな事を学びたいと思っていましたか?
実習生A)
病院では医師の記載したカルテや検査値を直接見ることが出来るので、病態と処方意図を繋げて理解できるようになれたらと思っていました。
また、チーム医療についての工夫を見て学ぶことや、調剤薬局と業務内容を比較して進路決定に活かそうとも思っていました。
実習生B)
私はコミュニケーション能力が最重要となってくると考えていました。
なので、服薬指導や初回面談などの患者さんとのコミュニケ―ションはどのように行われているのか、学校の実習で学んだものとはどのような違いがあるのかについて学びたいと思っていました。
佐々山薬剤師)
Aさん、そうですね、調剤薬局と病院との違いはカルテを閲覧出来るか出来ないかが大きいですね。
Bさん、コミュニケーション能力はとても大切ですね。
いくら知識が豊富でもコミュニケーション能力が無ければ伝えたい事もうまく相手に伝わりませんね。
では、今回の実習ではどんな事を学べましたか?
実習生A)
実習の目標であった病態と処方意図の繋がりを学べました。
例を挙げると、糖尿病患者さんの血糖値推移から、インスリン注射剤を使用するかどうか、使うならどの種類を使うのかといったことを決める一連の流れを見ることが出来ました。
なぜこの患者さんにこの薬なのかということを深く学ぶことが出来ました。
また、分かりやすく相手に伝える難しさも学びました。
患者さんにはもちろん、他の医療従事者の方に物事を伝えることが大変でした。
各職種で当たり前だと思っていることやルールの捉え方が違うので、それを理解した上で相手に分かりやすく伝えることが難しかったです。
さらに、調剤薬局との比較という点では、病院薬剤師の方が一人の患者さんの状態について考える時間が多く取れるように感じました。
病院にもよると思いますが、比較的調剤に急かされず、じっくり考える時間があることは魅力的だと思いました。
実習生B)
服薬指導ではその患者さんについての情報をカルテから予め確認しておく必要があり、医師や看護師など、院内のスタッフ間での情報共有がとても重要であることを学びました。
コミュニケーションについても収集できた情報によってまるで変わってくるため、情報をしっかり収集した上で臨機応変にコミュニケーションをとっていく必要があることを学びました。
処方に出る薬についても初めて見るようなものについては1つ1つ確認し、用法用量や注意点などを詳しく教えて頂きました。
実習を通して患者さんと向き合う病院薬剤師の姿勢というものを感じることができたように思います。
佐々山薬剤師)
Aさん、Bさん共に最初に目標としていた事は達成できたみたいですね。
それでは、今回の実習では、何が一番印象に残りましたか?
実習生A)
DI業務が印象に残っています。
実習期間に何度も製薬会社に問い合わせをするとは思っていませんでした。
添付文書やインタビューフォームなどを見ても分からなかった配合変化の情報などを電話で聞き出すことはとても難しかったです。
しかし、実習終了の1日前に問い合わせたときは質問すべき内容をきちんと整理できたので、上手く情報を聞き出すことが出来ました。
それはとても嬉しかったです。
実習生B)
患者さんへの配薬です。
はじめはどんな流れで会話するか、確認事項は何かなどで頭の中がいっぱいになってしまい、いざ患者さんと向き合うと業務的に質問をするだけになってしまったりしました。
カルテについても全くうまく扱えていませんでした。
しかし、回数をこなすにつれて指導薬剤師の先生が丁寧に教えて下さることもあって、検査値からの症状の経過や患者さんの状態をカルテから確認でき、会話についても余裕ができました。
患者さんに感謝の言葉を頂いたときはとても嬉しく、印象に残っています。
佐々山薬剤師)
当院の実習中に大変だった事はありますか?
実習生A)
実習中に体調を崩してしまったことです。
私は、実習中に風邪をひいてしまったのですが、体調を崩してしまうと自分自身が風邪の感染源になってしまうことや、反対に患者さんからもらってしまうことも考えられるので、病棟業務が行いにくくなってしまいました。
さらに、体調を崩しているときは注射薬のピッキングなどでミスが増えてしまいました。
病院で働くにはまず自分が健康体である必要と、体調を崩すとミスに繋がってしまうことを強く感じました。
忙しい中でも日頃から体調管理をしっかりすることは、病院で働く上でとても大切なことだと思いました。
実習生B)
処方箋などの内容について確認する際に相手の考えと自身の考えに食い違いがあり、自分の思っていた返答と全く異なった返答が来た時に思考が停止してしまいました。
自分の説明も不十分だったので、患者さんとのコミュニケーションとはまた異なった難しさがあり、うまく説明することが大変でした。
佐々山薬剤師)
Aさん、実習中に体調を崩した時は大変でしたね。
どんな仕事をしていても健康が第一です。
普段から極力規則正しい生活をして体調を整えておく事はとても大切です。
その事を体験出来た事は良かったのではないでしょうか。
Bさん、他人に説明をする時は、説明する内容以上の事を理解しておかなくてはなりません。
そのためにはカルテ等を見てしっかり予習しておく事がとても大切です。
では、実際2か月半の長い実習を終えて、病院薬剤師のイメージは変わりましたか?
実習生A)
変わりました。
服薬指導では思っていたよりも患者さんとの距離が近いと思いました。
病院薬剤師と患者は入院期間だけの付き合いになることが多く患者さんとの距離が遠いものだと思っていました。
しかし、患者さんから病気を治すために日々頑張っていることや、症状が良くなってきたことを薬剤師の先生方に嬉しそうに伝える場面を何度か見ることがありました。
患者さんが心を開いていく変化を見ることはなかなかできませんでしたが、配薬時や服薬指導の間に関係を築いていったのだと思います。
病院薬剤師もやり方次第で患者さんとの距離が近くなれることが分かりました。
実習生B)
変わりました。
コミュニケーションが重要という点は想像以上であることを除くと同じでしたが、病院薬剤師は薬の面でチーム医療の一端を担っていると考えていました。
しかし、実際は医師や看護師と電話などで薬だけでなく患者さんについてこまめに相談を受けていたこと、服薬指導などで患者さんと関わることが多いことから病院薬剤師は薬の面だけでなく患者さんの情報提供という面でも重要な役割を担っていることがわかりました。
佐々山薬剤師)
患者さんは、色々な事を医療従事者に伝えたいと考えています。
本当は医師に伝えたいところですが、医師には遠慮して言えなかったりする事もあります。
看護師も普段から忙しく仕事をしているため、遠慮して言えない事が多いみたいです。
薬剤師は決して暇な訳ではありませんが、何故か色々な事を患者さんは我々薬剤師に話をしてくれます。
薬剤師も基本的に真面目な人種なので、時間を割いてでも真剣に患者さんの話を聞こうとします。
そうすると次に会った時にも色々な貴重な情報を話してくれます。
その情報を整理して必要としている人に提供するという事も我々薬剤師の大切な業務のうちの一つです。
では、今後実習をするであろう薬学生の後輩に対して一言あれば、お願いしいます。
実習生A)
最初は分からないことが多くて大変ですが、少しずつ知識が増えてくると業務や処方の意図が見えてきて楽しくなります。
楽しむためにも復習を時々行うことをオススメします。
体調管理に気をつけて、楽しんで実習してください。
実習生B)
みどり病院さんのスタッフの方々はとても親切で何事に関しても丁寧に教えて下さります。
手術や他科の見学など様々な経験をさせて頂けますので毎日が刺激的で2か月半があっという間に感じると思います。
ですので、2か月半の間で吸収できることはすべて吸収できるように1日1日を大切に、実習を頑張ってください。
佐々山薬剤師)
最後に、当院での実習に関して何か感想などがあれば教えて下さい。
実習生A)
2か月半の間本当にお世話になりました。
薬の知識を教えて頂いただけでなく、申し送りやDI業務、医師による勉強会、他の部署の見学といった様々な体験をさせていただき、大学では学べないことをたくさん経験できました。
新しい発見の連続で毎日がとても充実していました。
薬剤師の先生方をはじめ、他の部署の方々のおかげで充実した実習が出来ました。
みどり病院全ての方々に感謝いたします。
本当にありがとうございました。
実習生B)
今回、初めての実習ということで不安や緊張がありましたが、皆さんの丁寧なご指導を受け、充実した実習生活を送ることができました。
また薬剤師の方々だけでなく、みどり病院スタッフの方皆さんにもお忙しい中多くのことを教えて頂きました。
この実習で学んだことを次の薬局実習や今後の進路に活かしていきたいと思います。
2か月半、長いようで短い間でしたがお世話になりました。
本当にありがとうございました。
佐々山薬剤師)
お二人とも、お疲れ様でした。
病院薬剤師の仕事を体験して、どうでしたか?
長期間の実習で大変だったでしょうが、この経験は将来病院薬剤師として働く際には必ず役立つと思います。
もし病院薬剤師の道を選ばなかったとしても、必ず何処かで役に立つ時が来ると思います。
Aさんは、第1期で調剤薬局の実習を済ませているのでこれで実習は終了ですね。
Bさんは、これから調剤薬局の実習なので、もうひと頑張りですね。
お二人共、将来の進路はまだ決まっていないみたいですが、もしどこかで何か一緒に仕事をする事になった時にはよろしくお願いします。
その時には立派な薬剤師になった姿を見せて下さい。
その時を楽しみにしています。