関節リウマチの治療は、この10年余りでめざましく変化してきました。
私が、薬剤師になりたての頃は治らない病気の1つであり、寝たきりになりうる疾患のうちの1つでもありました。
出産・子育てをしている間に、治療法も大きく変わり、みどり病院でお世話になることになったとき、生物学的製剤が積極的に使用されていることに衝撃を受けました。
前々回の記事でも関節リウマチ治療薬について触れておりましたが、当院では、いくつかの生物学的製剤を採用しています。
中でも、現在最も多く使用されているのが、アクテムラです。
100人ほどの患者さんが、このアクテムラの治療を受けておられます。
今回は、アクテムラによる治療を取り上げてみます。
関節リウマチのメカニズムと新しい治療薬 ~IL-6とアクテムラのお話~
IL-6とは、様々な細胞から出される細胞間の情報伝達を行うたんぱく質(サイトカイン)の1つであり、関節の炎症、腫れ・痛み、骨や関節の破壊などを引き起こす原因物質です。
関節リウマチでは、関節液中や血液中にIL-6が通常より多く存在し、それが受容体に結合することにより、各症状を引き起こすと考えられています。
アクテムラは、最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された生物学的製剤で、IL-6の代わりに受容体に結合し、IL-6のはたらきを抑え、関節リウマチの進行を遅らせます。
アクテムラによる治療 ~月1回の点滴注射もしくは2週間に1回の皮下注射で済みます~
関節リウマチの治療目標は、長期間にわたるQOL(quality of life)の向上です。
関節の破壊は、発症早期より始まっており、治療目標を達成するために、関節リウマチと診断がついたら、早い段階からの積極的治療が推奨されています。
現在、生物学的製剤は他の抗リウマチ薬で効果がみられない、あるいは効果不十分の患者さんへの使用しか認められておらず、最初からアクテムラ治療を選択することはできません。
しかしながら、他の薬の効果が十分でない場合はなるべく早期に生物学的製剤へ切り替えることにより、患者さんのQOL向上が得られます。
アクテムラの点滴は、外来や日帰り入院で、4週間に1回体重あたり8㎎の量を約1時間かけて投与します。
アクテムラ皮下注は、162㎎1規格で、2週間に1回の投与間隔で投与し、自己注射も可能です。
気になるのは副作用 ~免疫系の抑制による感染症には要注意!~
感染症には要注意です。
アクテムラはIL-6の経路を阻害するため、炎症反応が抑制され、検査値がマスクされることがあります。
肺炎などの重篤な感染症を併発していても、炎症反応や発熱や全身倦怠感、場合によっては呼吸困難もマスクされる場合があります。
軽度の症状や炎症反応であっても、しっかりアセスメントすることが重要です。
検査値から、副作用を読み取ることも重要ですが、患者さんの様子を観察することも大切です。
風邪症状がないか、息切れなどの症状はないか、空咳が出ていないかなど、何気ない会話の中から読み取れるように心がけています。
リウマチ治療の評価方法 ~DAS28(Disease Activity Score 28)~
リウマチの治療がうまくいっているかどうかを確かめる方法として、「DAS28」があります。
当院でもこの評価法を採用していますが、これは、圧痛関節痛や腫脹関節痛を28関節で評価するものです。
当院でアクテムラ治療を行った患者さんの中には、DAS28の評価上では寛解の数値にまでになっている方も多数おられます。
ちなみに、当院ではこのDAS28の評価を薬剤師も行っています。
配薬時やDAS28評価の時に患者さんのお話をお聞きしていると、「治療をはじめて、痛みや腫れがよくなった」「動けるようになって楽しくなった」というお声をよく耳にします。
アクテムラ治療により患者さんのQOLが上がっていることを本当に実感させられます。
最後に ~関節リウマチ治療で気になる事があればいつでもご相談ください~
当院では、アクテムラの点滴を受けておられる患者さんが、100人ほどおられます。
私は、特に日帰り入院の患者さんと接することが多いのですが、不思議な事に4週間に1回の点滴に不満をおっしゃる方がおられないのです。
私が考えるに、それは患者さんも治療方針をよく理解されているからではないでしょうか。
そんな患者さんに信頼していただけるように、チームとしてのパワーアップと共に、自分自身も「聴く力」も磨きつつ、薬剤師としての知識をたくさん習得できるように努力していきたいと思っています。