日本での関節リウマチ罹患者は60~70万人いるといわれており、当院でもたくさんの患者さんの治療にあたっています。
今回は、先日当院でも採用薬品に加わった、2018年2月に発売された関節リウマチ治療薬のケブザラについてお話します。
生物学的製剤にはどんなものがある? ~TNF阻害剤とIL-6阻害剤~
生物学的製剤とは化学的に合成したものではなく、生体が作る物質から最先端のバイオテクノロジー技術によって作り出された薬剤です。
現在日本で関節リウマチに使用できる生物学的製剤は8剤あります。
当院ではそのうちの6剤が採用されています。
その中で、TNF(腫瘍破壊因子)と結合してその作用を抑制するものが、商品名で紹介するとレミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニーです。
TNFとは、IL-6同様、関節リウマチ発症の原因とされるサイトカインの1つです。
IL-6阻害薬としては、アクテムラ、ケブザラがあります。
第2のIL-6阻害薬 ~ケブザラの発売~
以前にもお話しているように、IL-6と呼ばれる物質の作用が、関節の炎症、腫れや痛み、関節の破壊や変形を引き起こす大きな原因と考えられています。
ケブザラ(サリルマブ)は、アクテムラ(トシリズマブ)に次ぐIL-6阻害薬で、いずれも炎症を引き起こすIL-6の活性を抑制することで関節の炎症を改善し、全身症状(関節の破壊や変形から生じる機能障害、疲労、骨粗鬆症など)を緩和することが期待されます。
IL-6阻害薬 どう違う? ~アクテムラは約90%、ケブザラは100%~
アクテムラはヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体であるのに対し、ケブザラは完全ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体で、ケブザラの方がヒト抗体の割合が多いという点が違いとしてあげられます。
ヒト化抗体の割合としては、アクテムラは約90%、ケブザラは100%です。
一般的に、完全ヒト型抗体の方がヒト抗体に近いため副作用が低いと言われています。
ケブザラは既存治療で効果不十分な関節リウマチのみの適応で、製剤としては150㎎シリンジと200㎎シリンジがあります。
投与方法・用量は、1回200㎎を2週間隔で皮下投与、患者の状態により150㎎に減量となっています。
アクテムラ点滴静注は既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎、キャッスルマン病に伴う諸症状及び検査所見の改善の適応があります。
製剤としては、80㎎、200㎎、400㎎があります。
投与方法は、4週に1回、投与量は体重により決まります。
アクテムラ162㎎皮下注は既存治療で効果不十分な 関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎 の適応があります。
投与法・用量は、1回162㎎を2週に1回、効果不十分な場合には1週間隔まで投与期間を短縮することができます。
一般的にIL-6受容体阻害は用量依存性と言われています。
アクテムラ静注が体重によって用量が違ったり、アクテムラ皮下注が投与期間短縮可能なのに対し、ケブザラは200㎎2週間隔と用量が固定されているのは、ケブザラの方が受容体への親和性がアクテムラの20倍だからだと考えられています。
ただし、100㎏を超える体重の方では200㎎で効果があるかどうかは不明だそうです。
アクテムラ皮下注は、自己注射が可能になっており、自己注射用のオートシリンジも発売されています。
一方ケブザラは、今のところ病院に来てもらって皮下注してもらわなくてはなりませんが、発売後、1年を待って、自己注射が可能なキットが発売される予定だそうです。
やはり気になる副作用 ~感染症、鼻咽頭炎、口内炎等~
ケブザラは完全ヒト型抗体で、副作用が少ないことが期待されますが、IL-6を阻害することで関節リウマチへの効果を期待しているため、感染症には注意が必要です。
それ以外に主な副作用としては、鼻咽頭炎、口内炎、白血球減少、血小板減少、肝機能障害、脂質検査値の異常等があります。
治療中は、定期的な血液検査を行っていきます。
最後に
近年、関節リウマチ治療でも、薬剤の選択の幅が広がってきました。
生物学的製剤になると医療費も高くなってきますし、投与法によっては月に何度も診察に通う必要があります。
とはいえ、関節リウマチでは、発症後1~2年での関節破壊が急速に進行するため、早期治療が必要と考えられています。
関節に腫れや痛みなどの異常を感じたらまず診察をお勧めします。
医療費に関しては、さまざまな支援制度が利用できる場合があります。
患者さんのライフスタイルにあった治療ができるよう、医師だけでなく私たち薬剤師も患者さんの声に耳を傾け、薬剤毎の投与法や医療費についても考えて薬剤の選択ができる治療につなげていきたいと思っています。