全身性エリテマトーデスに対する新規治療薬『ベンリスタ』のお話

全身性エリテマトーデスとは

全身性エリテマトーデスは英語でSystemic Lupus Erythematosusといい、その頭文字をとってSLEと呼ばれています。
個人差が大きいですが、発熱や倦怠感のほか、皮膚炎や関節炎など全身にさまざまな症状が現れます。
前回の記事でも取り上げられた「関節リウマチ」と同様、「膠原病」の代表的な病気のひとつです。
膠原病は、全身の血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症がみられる病気の総称です。
その原因は今のところ分かっていませんが、自己免疫の異常が関係していることが分かっています。

SLEの治療薬 ~新しい作用機序のSLE治療薬『ベンリスタ』~

疾患活動性がある場合、主に薬物療法を行います。
主な治療薬は、副腎皮質ステロイド、免疫抑制剤、そして生物学的製剤です。
その中で今回は、『ベンリスタ(ベリムマブ)』という新規の生物学的製剤についてご紹介します。

『ベンリスタ』の働き ~Bリンパ球刺激因子(BLyS:ブリス)に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体~

SLEでは血液中にBLySという蛋白質が過剰に存在することが知られています。
B細胞にこのBLySが働くことにより、B細胞の活性化・増殖、自己抗体を産生する形質細胞への分化が促進されます。
ベンリスタは、BLySに結合するモノクローナル抗体で、自己抗体の産生を抑えてくれます。

ベンリスタの投与方法 ~点滴静注と週1回の皮下注射で治療OK~

ステロイド、免疫抑制剤等で治療を行っても効果が十分に得られない場合に、それらの薬剤に上乗せして投与します。
投与方法は2種類、アクテムラと同様に点滴静注と皮下注射です。
点滴静注は、1~3回目までは2週間毎、それ以降は4週間毎に行います。
皮下注射は、1週間毎に行います。
医師の許可があれば、自己注射も可能です。
また、点滴静注⇔皮下注射の切り替えも可能です。

副作用 ~副作用は少ないと言われています~

副作用は比較的少ないと言われていますが、生物学的製剤であるためインフュージョンリアクション、アナフィラキシー反応には注意が必要です。
投与直後から少し遅れて症状が出ることもあるため、経過観察をしっかり行う必要があります。
他には、感染症(特に上気道感染、帯状疱疹)があります。
通常、細菌やウイルスなどの異物を攻撃する免疫細胞も抑えてしまうため、感染予防が大切です。

最後に

この『ベンリスタ』というお薬は、新しい作用機序の生物学的製剤なので、私もとても興味津々です。
この間の勉強会で言っていたのですが、リツキサン(リツキシマブ)などでB細胞を抑えられたとしても、BLySが活性化することで症状が再燃することがあるそうです。
そのため、リツキサンとベンリスタの併用療法の検討もされているそうですよ。
有効な治療法が少ないSLEではありますが、こういった新規薬剤により治療の幅がさらに広がっていくといいですね。