今すぐ治したいこむら返り~素早く効果を発揮する芍薬甘草湯~

季節の変わり目、深夜に寝ていると脚に突然痛みが走り目を覚ます…という経験はあるでしょうか。そう、俗に言うこむら返りです。
経験したことのある方は分かると思いますが、猛烈な痛みに襲われ目が覚めるというのは当然のことながら気持ちの良い目覚めではありません。片方の脚の痛みを治そうと頑張っていたら、反対の脚も攣り出した…なんて、たまったものではないですね。
今回は、こむら返りについて取り上げ、有効な薬剤もご紹介したいと思います。

こむら返りとは?

「こむら」は漢字では「腓」と書き、ふくらはぎの古い呼び名です。こむら返りとは、ふくらはぎの腓腹筋が異常に収縮することで、正式には腓腹筋痙攣と言います。多くの場合はふくらはぎが攣りますが、足の指や足の裏が攣る人もいます。筋肉の痙攣により、激しい痛みが数秒間、長ければ数分間続きます。

こむら返りの原因は?

○水分・ミネラル不足
○激しい運動による筋肉疲労
○長時間の立ち仕事による血行不良
○冷え
などが挙げられます。
さらに、糖尿病の方は神経障害を来すことから、こむら返りが起こりやすいと言われています。
また、妊娠中の方は、胎児への栄養供給によりミネラルバランスが崩れることや体重増加に伴い脚に負荷がかかることから、こむら返りが起こりやすいようです。

こむら返りにどう対処する?

腓腹筋の異常な収縮が原因ですから、患部を伸ばすようにします。つま先をすねのほうへ引き上げるようにストレッチし、ふくらはぎとアキレス腱を伸ばすことを意識します。
普段から、ふくらはぎの筋肉を伸ばすマッサージやストレッチを行っておくと予防になります。運動の前後にはウォーミングアップとクールダウンをしっかり行いましょう。
また、ミネラル不足に陥らないようバランスの取れた食事を摂ることも重要です。
入浴や足湯などで脚を温め、水分摂取も心がけましょう。

こむら返りに効く薬剤は?

筋緊張緩和剤のエペリゾン(ミオナール®)、チザニジン(テルネリン®)などが処方されることもありますが、やはり代表的なのは芍薬甘草湯でしょう。
芍薬甘草湯を構成する「芍薬」と「甘草」には、筋肉の緊張を緩めて、痙攣そのものや痙攣で起こる痛みを抑える作用があります。
運動神経から筋肉に収縮する指令が伝わると、筋肉組織の細胞の中にカルシウムイオン(Ca2+)が入り、カリウムイオン(K+)が流出します。この時、中枢神経に過剰な筋肉の収縮の指令が伝えられると足が攣る、つまり、こむら返りを引き起こします。
芍薬に含まれるペオニフロリンという成分は、筋肉が収縮するために必要なCa2+の細胞内流入を抑制し、結果として筋肉の収縮を抑えると考えられています。さらに、甘草に含まれるグリチルリチン酸は、K+の細胞外流出を促進することで神経筋シナプスのアセチルコリン受容体を抑制し、結果として筋弛緩作用を発現すると考えられています。

漢方だから副作用は無い?

身体に優しそうだし漢方には副作用が無いと思っている方もいますが、そうではありません。芍薬甘草湯の添付文書には「本剤の使用にあたっては、治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること。」と記載されるほどです。
漢方の中でも甘草を含有する製剤は、偽アルドステロン症に注意が必要です。偽アルドステロン症とは、血中のアルドステロンが増えていないのにアルドステロン症の症状(高血圧、低カリウム血症、代謝性アルカローシス、低カリウム血性ミオパチーなど)を示す病態です。
甘草あるいはその有効成分であるグリチルリチン酸を含有する医薬品などを服用したことにより生じます。
自覚症状としては、四肢の脱力・筋肉痛・痙攣(こむら返り)、頭重感、全身倦怠感、浮腫、口渇、動悸、悪心・嘔吐などがあります。このような症状が出現した場合、服用を中止し、医療機関への受診・相談をなさってください。

漢方だから効き始めが遅い?

こむら返りに頓服で使われる芍薬甘草湯は、効果発現時間も数分と即効性があります。ある患者さんは、ゴルフのラウンドではいつもポケットに忍ばせていて、攣った時はお世話になっていると話していました。すぐに効果を実感できる薬剤ですが、甘草・グリチルリチン酸には注意が必要です。現在服用中の薬剤との相互作用について、ご不明点があれば、お気軽に薬剤師にご相談ください。