コロナ禍での病院実務実習!今話題の薬薬連携、ポリファーマシーの介入も体験出来ます!〜薬学部実習生と当院指導薬剤師の対談〜(2020年度 第2期薬剤師実務実習)

当薬剤科では、臨床薬学教育にも積極的に取り組んでおり、薬学部が4年制の頃から薬学部学生の教育実習を受け入れています。現行のカリキュラムが開始されてからは、毎年3~4名程度の5年生(2006年度入学の学生より6年制となっています)の実習を実施しています。今回も、実習を終えた実習生と当院佐々山薬剤師とでゆっくりとお話をさせていただいたのでご紹介します。

佐々山薬剤科主任)
実習生さん、今回の実習はコロナ禍の大変な時期でしたね。色々と制限はありましたが無事2か月半の実習を終えることが出来て良かったですね。そんな実習でしたが、振り返って少しだけお話を聞かせて下さい。

実習前は、病院薬剤師という仕事にはどんなイメージを持っていましたか?

実習生A) 薬学部5年生、女性
調剤した薬を病棟へ持っていき、患者さんに服薬指導を行い配薬するという漠然としたイメージでした。また、チーム医療に薬剤師が関わっているイメージがあまり浮かびませんでした。

実習生B) 薬学部5年生、女性
主には入院患者さんの薬を調剤したり、服薬指導したりするイメージを持っていました。また、薬局と違い、輸液の調製をしたり、病院内でチーム医療の一員として患者さんの治療をしているという漠然としたイメージでした。

佐々山薬剤科主任)
そうですか。
「薬の調剤」と「服薬指導」というイメージだったのですね。「チーム医療」に関しては学校では習うのでしょうが、机上でイメージするのは難しいでしょうね。学校の授業では十分理解出来ないことを理解できるのが臨床実習の良い所ではないでしょうか。

では、今回の実習でどんなことを学びたいと思っていましたか?

実習生A)
「チーム医療」は学校や薬局では充分に学ぶことができないので、他の職種の方々とどのように連携して働いているのかを学びたいと思っていました。
また服薬指導などコミュニケーションに苦手意識があったため、うまく患者さんとコミュニケーションを取る方法を学びたいと思っていました。

実習生B)
患者さんの検査値や処方に対する薬剤師としての考え方や、患者さんとのコミュニケーションの取り方、また、チーム内における薬剤師の役割も学びたいと思っていました。

佐々山薬剤科主任)
「チーム医療」と「コミュニケーション」ですか。
病院には様々な職種の人達がいます。ですからチーム医療以前に普段の業務を行う上でもコミュニケーション能力は重要です。

では、今回の実習ではどんなことを学べましたか?

実習生A)
病棟業務や症例カンファレンスへの参加を通して、患者さんにとって最善の治療を進めていくためには患者さんの情報を他職種間で共有することが必要であるということが学べました。
病院では薬局と違い電子カルテを見ることができるので、患者さんの処方内容、検査値、他の医療従事者からの情報も確認し把握することの大切さを知ることができました。
また、患者さんの理解力に応じて服薬指導を行うことの大切さも学べました。

実習生B)
調剤時の配合変化や、各輸液の成分なども考えて調剤を行なうことの重要性や、TDMや抗癌剤治療などを通して検査値についても理解を深めることができました。病棟では、患者さんの理解力に合わせた服薬指導の必要性、患者さんに関わる情報を職種間で共有し、個々の患者さんに合った処方を提案していくことも薬剤師の大切な仕事で、そのためにも患者さんのことを把握しておく必要があるということを学びました。また、ポリファーマシー回避のための処方の見直しや、施設間薬剤情報提供書の作成など様々な面で患者さんを支えているということも学べました。

佐々山薬剤科主任)
我々薬剤師は、薬の専門家です。今まで勉強してきた薬の知識をフルに使って患者さんのために日々働いています。ひと昔前の薬剤師は、調剤室で一日中調剤を行うことが多かったのですが、最近の薬剤師は臨床(患者さんの側)で働く時間が増えてきました。ですから患者さんにとってより良い治療は何か考える機会も増えましたし、他の医療従事者と協働する機会も増えていると思います。

それでは、今回の実習では、何が一番印象に残りましたか?

実習生A)
毎日病棟で患者さんとコミュニケーションを取っていくうちに、今日の患者さんの調子が良いか悪いかなど日々の体調の変化が顔を見るだけで分かるようになり、患者さんも自分のことを覚えていてくれたときはうれしく感じ印象に残りました。

実習生B)
患者さんの元に服薬指導や、配薬に行ったことが1番印象に残っています。最初はカルテから患者さんの問題点を見つけられず、また、うまくコミュニケーションを取れなかったのですが、回数を重ねるごとに患者さんとの会話が少しずつできるようになってきました。後半では「よく分かりました。ありがとう」と言って下さった患者さんもいらっしゃり、少しずつ成長できたことが感じられました。

佐々山薬剤科主任)
患者さんとのコミュニケーションですか。
患者さんと良いコミュニケーションを取るのはなかなか難しいものです。過去にもコミュニケーションがうまく取れず悩んでいた実習生さんはたくさんいましたよ。
そのコミュニケーションがうまく取れたのは良かったですね。

当院の実習中に大変だったことはありますか?

実習生A)
限られた時間の中でカルテから患者さんの必要な情報を収集し、それぞれの患者さんの理解力に応じて服薬指導を行うのが大変でした。また、他の医療従事者とコミュニケーションをとる際とても緊張してしまいなかなか慣れることができず大変でした。

実習生B)
患者さんに服薬指導したことです。他人に説明する時は自分がきちんと理解してないといけないので、知識が足りず調べなければいけないことが多くて大変でした。また、自分では理解しているつもりでも、それを患者さんに伝えるとなると、わかりやすい言葉や表現で説明する必要があり、最初はなかなか伝えたいことがうまく伝わらなかったり、また高齢の方も多く、相手が聞き取れるように話すのにも苦労しました。

佐々山薬剤科主任)
しっかりとその患者さんのバックグラウンドを理解した上で服薬指導を行うためには、事前の情報収集はとても重要です。膨大なカルテの情報の中から短時間で必要な情報を探し出すのは我々薬剤師でも大変な作業です。
また、服薬指導は、薬の素人である患者さんに薬に関しての難しい内容をわかりやすく説明しないといけないので、説明する内容に関しては100%理解しておく必要があります。人にうまく説明ができないということは自分自身が100%理解していないということです。

では、実際2か月半の長い実習を終えて、病院薬剤師のイメージは変わりましたか?

実習生A)
イメージしていたよりも患者さんと関わる時間も多く、他の医療従事者の方とも常に関わりながら情報を共有しており、医師に薬について相談されることも多いなど、チームの薬の専門家としてとても必要とされているんだなと感じました。

実習生B)
変わりました。思っていたよりも病棟で看護師や医師と関わる機会が多く、処方についてや、副作用についてなどの質問を受けている場面を何度も見させていただき、とても責任のある役割を担ってるのだと感じました。また、患者さんのもとへ薬の説明に行ったり、様子を見に行ったりなど、薬剤師が患者と関わる機会は多いのだとわかりました。

佐々山薬剤科主任)
そうですよ。
先程も話しましたが、今の病院薬剤師は、昔と違ってより臨床に近い色々な仕事をしています。

では、今後実習をするであろう薬学生の後輩に対して一言あれば、お願いします。

実習生A)
他部署見学や手術見学など貴重な経験をたくさんさせていただける場所なので毎日充実した時間を過ごせると思います。わからない事はすぐに調べて知識を増やしていくことで、楽しく実習を進めることができると思うので頑張ってください。

実習生B)
最初は知らないことが多く、調べなければいけないため大変だと思いますが、医療関係者や患者さんと関わっていく中で徐々に理解できる部分が増えていき、やりがいが感じられると思います。たくさんの知識を得られる場だと思うので、積極的にわからないことを見つけて、取り組んでみてください。

佐々山薬剤科主任)
最後に、当院での実習に関して何か感想などがあれば教えて下さい。
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実習生A)
初めは不安でいっぱいでしたが、薬剤科の皆さんや他の部署の方々が温かく見守って下さり、多くの経験もさせて頂けたので、とても楽しく充実した実習期間を送ることができました。2ヶ月半の長い間大変お世話になりました。ありがとうございました。

実習生B)
最初は不安もあったのですが、気づけばあっという間の2ヶ月半でした。手術やカテーテルの見学や回診などとても貴重な経験をさせていただき、また、薬剤科の皆さんに良くしていただき、楽しく充実した実習を行うことができました。みどり病院の皆様大変お世話になりました。ここで学んだことを活かして、これから頑張りたいと思います。
本当にありがとうございました。

佐々山薬剤科主任)
お二人とも、実習お疲れ様でした。
今回の実習では色々と自分自身で調べる機会が多かったと思います。わからないことをすぐに教えてあげることはとても簡単です。しかし、簡単に教えてもらったことはすぐに忘れてしまうものです。反面、自分で苦労して調べたことはなかなか忘れません。学校での勉強は一方的に教えてもらうことがほとんどですが、薬剤師になってからの勉強は〝自分自身で調べること〟なのです。ですから、今のうちからわからないことはまず自分自身で調べる習慣を身に付けてもらいたいので、実習生さんにはあえてすぐに答えを教えないようにしています。今回は大変でしたが、将来実習生さんが薬剤師になった時にこの習慣はきっと役に立つと思いますよ。
近い将来、立派な薬剤師になった実習生さんと、どこかで一緒に仕事ができれば良いですね。
そのためには国家試験に合格しないといけませんが・・・。
まずは卒業試験をパスするための勉強ですね。頑張ってください。