いよいよ紙の添付文書が無くなります!〜お薬業界もペーパーレスの時代〜

薬剤科

我々薬剤師は、日々の業務中に医師や看護師、患者さんからの問い合わせを受けた時、まず添付文書に目を通します。そう、薬剤師にとって添付文書は大切なパートナーなのです。そんな添付文書がこの度大きく変わろうとしています。タイトルにもあるように、紙の添付文書が無くなろうとしています。そこで今回は、添付文書の電子化についてのお話をしていきたいと思いますので、しばらくの間お付き合い下さい。

添付文書とは 〜医薬品適正使用のために不可欠なアイテム〜

そもそも添付文書とはどんなものなのでしょうか?
添付文書とは、医薬品の適正な使用方法や安全性に関する様々な情報が書かれたもので、医薬品の箱の中に薬と一緒に入っています。患者さんの安全を確保し、医薬品の適正使用を行う上で最も身近で最も基本的な重要な薬の公的文書で、医薬品の製造販売業者が作成し、その医薬品に関する最新の論文等によって得られた知見に基づいた情報が掲載されています。具体的には、以下の26項目(大項目)が書かれています。(2019年4月1日からの新記載内容)

1. 警告 2. 禁忌(次の患者には投与しないこと) 3. 組成・性状 3.1 組成 3.2 製剤の性状
4. 効能又は効果 5. 効能又は効果に関連する注意 6. 用法及び用量 7. 用法及び用量に関連する注意
8. 重要な基本的注意 9. 特定の背景を有する患者に関する注意 9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.2 腎機能障害患者 9.3 肝機能障害患者 9.4 生殖能を有する者 9.5 妊婦 9.6 授乳婦 9.7 小児等
9.8 高齢者 10. 相互作用 10.1 併用禁忌(併用しないこと) 10.2 併用注意(併用に注意すること)
11. 副作用 11.1 重大な副作用 11.2 その他の副作用 12. 臨床検査結果に及ぼす影響 13. 過量投与
14. 適用上の注意 15. その他の注意 15.1 臨床使用に基づく情報 15.2 非臨床試験に基づく情報
16. 薬物動態 16.1 血中濃度 16.2 吸収 16.3 分布 16.4 代謝 16.5 排泄 16.6 特定の背景を有する患者
16.7 薬物相互作用 16.8 その他 17. 臨床成績 17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.2 製造販売後調査等 17.3 その他 18. 薬効薬理 18.1 作用機序 19. 有効成分に関する理化学的知見
20. 取扱い上の注意 21. 承認条件 22. 包装 23. 主要文献 24. 文献請求先及び問い合わせ先
25. 保険給付上の注意 26. 製造販売業者等

医薬品の発売開始前に、その医薬品の製造販売業者は添付文書の案を作成します。そして独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)(注1)がその内容をチェックして問題無ければ、我々がいつも見ている『添付文書』として世の中にお目見えします。

注1)平成13年に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画を受けて、国立医薬品食品衛生研究所医薬品医療機器審査センター、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構及び財団法人医療機器センターの一部の業務を統合し、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づいて平成16年4月1日に設立され、業務を開始しました。
PMDAは、医薬品の副作用や生物由来製品を介した感染等による健康被害に対して、迅速な救済を図り(健康被害救済)、医薬品や医療機器などの品質、有効性および安全性について、治験前から承認までを一貫した体制で指導・審査し(承認審査)、市販後における安全性に関する情報の収集、分析、提供を行う(安全対策)ことを通じて、国民保健の向上に貢献することを目的としています。

PMDAホームページ(https://www.pmda.go.jp)より

添付文書の改訂 〜最新情報の提供〜

そんな添付文書ですが、「発売した後もずっと同じ内容のままで良いのか?」と言ったらそうではありません。
薬の情報は日々集積され、新たな情報(副作用情報等)が出てきた時は、その情報を医療従事者に提供しないといけません。そんな時に、添付文書が改訂されます。

紙ベースの添付文書を改訂する場合の問題点 〜いつまでも古い添付文書のまま放置させないために〜

冒頭で、添付文書は医薬品の箱の中に薬と一緒に入っていると書きましたが、薬の箱の中に添付文書が入っていると、我々薬剤師からすれば、添付文書を見たい時に、棚にある箱を取ってすぐに取り出して見ることができるので便利なのですが、逆に仇になる場合もあります。

添付文書改訂時に古い分との差し替えをしたい製薬会社にとっては、すでに出荷されて薬局の薬棚に収まっている箱の中の添付文書を全て差し替えるというのは、とても大変な作業です。ですから新たなロットを製造した際に、新しい添付文書を箱に詰めて出荷しています。どうしても早急に情報提供をしないといけない場合は、製薬会社のMR(Medical Representative;医薬情報担当者)さんが、各医療機関に出向いて情報提供を行い、添付文書の差し替えのお願いに回っています。

現在の情報提供の方法 〜PMDAのホームページ 私も見てます!〜

ここ最近は、医療業界でもIT化が進み、PMDAのホームページ上で最新情報が公開されるようになりましたが、残念ながらそのページを見ない人のところへは最新情報は届きません。

添付文書の電子化 〜時代に合った情報提供の方法〜

そんな紙ベースの添付文書の情報提供に関する問題を解決するために、2019年の『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)の改正』により添付文書の電子化が始まりました。(2021年8月1日より運用開始)
それにより、いずれは薬の箱の中に入っていた添付文書は全て無くなるそうです。
ただし、インターネット環境が十分でない等の理由で紙媒体の添付文書が引き続き必要な医療従事者には、製薬会社から必要な情報が提供されます。
ちなみに、街の薬局で買える一般用医薬品に関しては、箱の中の添付文書は残ります。

電子化された添付文書はどうやって見るの? 〜『添文ナビ』という傑作アプリ〜

それでは、電子化された添付文書のデータはどのようにして確認すれば良いのでしょうか?
「PMDAのホームページにアクセスして、専用ページ(※)から検索する!」

※:https://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/menu_tenpu_base.html

「スマホの添付文書検索アプリで検索する!」(私は、『ヤクチエ添付文書』というアプリを愛用しています。)
そうですね、それでもOKですが、もっと便利な方法があります。この方法を使うには、薬の箱が必要ですけどね。
その方法は、『添文ナビ』というアプリを使います。
このアプリはスマホ用のアプリで、無償でダウンロード可能です。
ダウンロードは、iPhoneならApp Store、AndroidならGoogle Play で “添文ナビ” で検索したらすぐ見つかります。ちなみに、パソコン向けのアプリもあるみたいですよ。

無事ダウンロードができたら、まずこのアイコンをクリックしてアプリを立ち上げてください。

するとバーコードリーダー画面が現れるので、薬の箱についているバーコードを読み取ります。

すると画面が切り替わり、添付文書 と 関連文書 を選択できる画面になります。

その画面で、添付文書を選ぶと、最新の添付文書を見ることができます。

ちなみに、このアプリはPMDAのホームページに直接アクセスしてデータを表示しているので、間違いなく最新のものです。
また、関連文書を選ぶと、製薬会社がPMDAに提出した各種報告書、患者向医薬品ガイドやインタビューフォームなども見ることができます。

このアプリで読み取っているコード 〜GS1コード〜

このアプリで読み取っているバーコードは、GS1コードと呼ばれている14桁の数字のみのコードで、GS1(注2)が標準化した商品識別コードの一つで、GTIN-14(注3)とも呼ばれています。
注2)流通コードの管理及び流通標準に関する国際機関のこと、GS1 Japanという名称で活動
注3)GTIN(ジーティン;Global Trade Item Number)

個々の数字にはちゃんと意味があって、1桁目が包装の種別などを識別するインジケーター、2~8桁目または2~10桁目がGS1事業者コード、9~13桁目または11~13桁目が商品アイテムコード、14桁目がチェックデジットと言って、コンピュータの入力ミスを検出するための暗号文字になっています。このコードをアプリで読み取って瞬時に個々の製品の種類を判別しているのです。すごいですね。

そのほかのコード 〜YJコードにJANコード 他にも色々あります〜

私が普段の業務の中で、よく目にするコードが、個別医薬品コード(YJコード)です。電子カルテの管理をしている薬剤師さんはよく知っていると思います。このYJコードは、アルファベットと数字が組み合わさった12桁のコードで最初の1〜4桁の数字で薬効分類、次の3桁の数字で投与経路と成分、次の1桁のアルファベットで剤形、次の1桁の数字で同一成分規格単位番号、次の2桁の数字で同一規格内銘柄番号を表しています。最後の1桁の数字はチェックデジットになります。ちなみにYJは『薬価情報(Yakka Joho)』の略だそうです。

その他にも、先ほど説明したGS1コードとよく似ている13桁の数字のみのコードでJANコード(Japanese Article Number)というコードもあります。JANコードは、GS1事業者コード(9桁、10桁または7桁)、商品アイテムコード(3桁、2桁または5桁)、チェックデジット(1桁)で構成されており、『どの事業者の、どの商品か』を表しています。

添付文書の電子化により 〜最新情報をいち早く現場に届ける〜

近い将来、紙ベースの添付文書がこの世から無くなってしまう時代がくるかもしれません。少し寂しい気がしませんか?同じ情報を読むにしても、紙ベースの情報は読みやすく、スッと頭に入ってくるように思うのは私だけでしょうか?そう思ってしまう私は古い人間なのでしょうか?昨今は、漫画や雑誌、普通の本までもが電子化されて、スマホやタブレットで読めるようになりました。時代の流れと諦めて受け入れないといけませんね。しかし、添付文書の電子化が進めば、今以上に最新情報がいち早く医療現場に届けられるようになることでしょう。これはすごく喜ばしいことです。

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